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人体の操縦
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ロッシュと近しいものがあったロロネーは、彼よりも更に残酷であり、拷問や解体で人の身体に詳しくなると、その知識である実験を行おうとした。それがロッシュの就いているクラスであるパイロットの可能性だ。
一般的にパイロットと言えば、操縦士や航空機の操縦をする人のことを指すのだろう。WoFでは乗り物全般を操縦出来るようになるのが、パイロットのスキル。
しかしロロネーが疑問に思ったのは、乗り物とはどういう物のことを言うのかという線引きについて。人の意思によってそのままでは動かぬ物に、電気などの動力を与え、操縦官の指示を物体に送り、動かしているのか。
ならば人間も似たようなものではないのか。脳の細胞から指令を伝達し、身体を動かしている。その伝達の役割を果たしているのが神経細胞であり、ニューロンと呼ぶことをロロネーは知った。謂わば電源と本体を繋ぐケーブルの役割とでもいうのだろうか。
それを人体から抜き取り、他の人物や物をロッシュのスキルで動かせるのではないかという実験を試みた。しかし、ニューロンを取り出し人や物に接続させるだけでは、そのモノを動かすことはおろか、何も起きることはなかった。
試みはあっさり失敗に終わってしまうが、そこで諦めるロロネーではなかった。ロッシュ自身も、ロロネーに何か企てがあったところで、自分に害や面倒ごとが降りかかろうものなら直ぐに手を引くつもりでいた。
尚且つ、ロロネーの実験が成功しようが失敗しようが、別段ロッシュ自身にデメリットとなることはないと考え、何処へ向かうかも分からぬ実験に協力する事にした。実際のところ、ロロネーのこの実験に興味のあったロッシュは、実験に必要な人間や死体などを見返りも求めず提供してくれる事を利用し、自身の可能性の底上げに期待した。
ニューロンの数や量を増やしてみたり、生きた人間からニューロンを取り出しそのままそれを生きた人間に埋め込んでみたりと、様々な非人道的な実験を繰り返していた。しかしロロネーの求める結果にはなかなか行き着くことがなく、それに比例し彼らが使う被験体の数は増えていった。
血生臭い実験が続く中で、ロッシュがニューロンのとある違いに気がついた。多くの生きた人間や死体から取り出したニューロンの中には、時折反応の違うものがあったのだ。
それは自己の身体と他者の身体で区別をしない神経細胞で、ミラーニューロンと呼ばれるモノだった。他の人間が行動するのを見て、まるで自分が同じ行動をしているかのような反応を示すことからその名がつき、他人のしていることを自身のことのように感じる共感能力を持っていた。
ロロネーはそのミラーニューロンを、ロッシュと別の物に埋め込むことで初めて、ロッシュの意思を物に反映させる事に成功した。
遂に実験の日々が身を結び、別のものを動かせるようになったロッシュは、ロロネーの提供する人間を使い、今度はロッシュの意思で別の人間を動かす事ができるのかといった実験を始める。
それまでの、物を自分の意思で”操縦する“実験の時とは異なり、新たなる実験であるミラーニューロンの共感能力を使い、生きた人間を操縦出来るのかを確かめる実験は、直ぐに結果が見え始めた。
ロッシュの意思で他人の身体を操縦出来るのは、ほんの僅かな時間でしかなかった。それはニューロンの数や量に関係なく、些細な増減こそあるものの操縦時間が延びることはなかった。彼のパイロットとしての熟練度にも影響するのかも知れなかったが、ロロネーには僅かな時間でも他人を動かせるのならそれでよかった。
実験の結果、ロッシュの成長に貢献したロロネーは、彼の危惧していた見返りを求めて来た。その時の彼は、条件次第ではロロネーを殺すことも考えていた。しかしロロネーの要求は、近々グラン・ヴァーグで行われるレース内で、チン・シーを襲撃する際の援軍に来て欲しいという要求だった。
それに加えて、戦利品についても貢献度によって珍しいアイテムや財宝を譲り渡すという条件付きだ。契約を守るような信頼に足る人物では無いと分かっていたが、チン・シーという大物海賊をロッシュだけで相手にするのは不可能。共同戦闘であればアイテムや財宝だけでも盗める可能性がある。ロロネーの自信から、あわよくば勝利することだってあるかも知れない。
何はともあれ、これを利用しない手はないとロロネーの申し入れを受け入れたロッシュは、彼から頃合いになったら合図を出すと言って、”移動ポータル“のアイテムを渡された。
レース開始前、ロロネーが彼に言っていた”準備”とは、ロロネーが偽造工作で序盤の島に集めた海賊達と、洗礼に紛れて連れ去った人間達の、ミラーニューロンを抜き取り補充する為の準備だったのだ。
一般的にパイロットと言えば、操縦士や航空機の操縦をする人のことを指すのだろう。WoFでは乗り物全般を操縦出来るようになるのが、パイロットのスキル。
しかしロロネーが疑問に思ったのは、乗り物とはどういう物のことを言うのかという線引きについて。人の意思によってそのままでは動かぬ物に、電気などの動力を与え、操縦官の指示を物体に送り、動かしているのか。
ならば人間も似たようなものではないのか。脳の細胞から指令を伝達し、身体を動かしている。その伝達の役割を果たしているのが神経細胞であり、ニューロンと呼ぶことをロロネーは知った。謂わば電源と本体を繋ぐケーブルの役割とでもいうのだろうか。
それを人体から抜き取り、他の人物や物をロッシュのスキルで動かせるのではないかという実験を試みた。しかし、ニューロンを取り出し人や物に接続させるだけでは、そのモノを動かすことはおろか、何も起きることはなかった。
試みはあっさり失敗に終わってしまうが、そこで諦めるロロネーではなかった。ロッシュ自身も、ロロネーに何か企てがあったところで、自分に害や面倒ごとが降りかかろうものなら直ぐに手を引くつもりでいた。
尚且つ、ロロネーの実験が成功しようが失敗しようが、別段ロッシュ自身にデメリットとなることはないと考え、何処へ向かうかも分からぬ実験に協力する事にした。実際のところ、ロロネーのこの実験に興味のあったロッシュは、実験に必要な人間や死体などを見返りも求めず提供してくれる事を利用し、自身の可能性の底上げに期待した。
ニューロンの数や量を増やしてみたり、生きた人間からニューロンを取り出しそのままそれを生きた人間に埋め込んでみたりと、様々な非人道的な実験を繰り返していた。しかしロロネーの求める結果にはなかなか行き着くことがなく、それに比例し彼らが使う被験体の数は増えていった。
血生臭い実験が続く中で、ロッシュがニューロンのとある違いに気がついた。多くの生きた人間や死体から取り出したニューロンの中には、時折反応の違うものがあったのだ。
それは自己の身体と他者の身体で区別をしない神経細胞で、ミラーニューロンと呼ばれるモノだった。他の人間が行動するのを見て、まるで自分が同じ行動をしているかのような反応を示すことからその名がつき、他人のしていることを自身のことのように感じる共感能力を持っていた。
ロロネーはそのミラーニューロンを、ロッシュと別の物に埋め込むことで初めて、ロッシュの意思を物に反映させる事に成功した。
遂に実験の日々が身を結び、別のものを動かせるようになったロッシュは、ロロネーの提供する人間を使い、今度はロッシュの意思で別の人間を動かす事ができるのかといった実験を始める。
それまでの、物を自分の意思で”操縦する“実験の時とは異なり、新たなる実験であるミラーニューロンの共感能力を使い、生きた人間を操縦出来るのかを確かめる実験は、直ぐに結果が見え始めた。
ロッシュの意思で他人の身体を操縦出来るのは、ほんの僅かな時間でしかなかった。それはニューロンの数や量に関係なく、些細な増減こそあるものの操縦時間が延びることはなかった。彼のパイロットとしての熟練度にも影響するのかも知れなかったが、ロロネーには僅かな時間でも他人を動かせるのならそれでよかった。
実験の結果、ロッシュの成長に貢献したロロネーは、彼の危惧していた見返りを求めて来た。その時の彼は、条件次第ではロロネーを殺すことも考えていた。しかしロロネーの要求は、近々グラン・ヴァーグで行われるレース内で、チン・シーを襲撃する際の援軍に来て欲しいという要求だった。
それに加えて、戦利品についても貢献度によって珍しいアイテムや財宝を譲り渡すという条件付きだ。契約を守るような信頼に足る人物では無いと分かっていたが、チン・シーという大物海賊をロッシュだけで相手にするのは不可能。共同戦闘であればアイテムや財宝だけでも盗める可能性がある。ロロネーの自信から、あわよくば勝利することだってあるかも知れない。
何はともあれ、これを利用しない手はないとロロネーの申し入れを受け入れたロッシュは、彼から頃合いになったら合図を出すと言って、”移動ポータル“のアイテムを渡された。
レース開始前、ロロネーが彼に言っていた”準備”とは、ロロネーが偽造工作で序盤の島に集めた海賊達と、洗礼に紛れて連れ去った人間達の、ミラーニューロンを抜き取り補充する為の準備だったのだ。
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