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名誉挽回
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自身の腕に感じる違和感を抱えながらも、原因が分からないシルヴィには、それでも攻めの姿勢を保つ他に選択肢はない。だが、彼女のここぞと言う一撃は悉くロッシュに当たることはなく、空を切るだけ。
「クソッ・・・!クソッ!クソッ!!何で!?俺ぁコイツを狙って・・・!」
「どうした?これでは俺を殺すどころではないぁ・・・ククク」
ロッシュのこの余裕から、シルヴィの不調は明らかに彼女のミスではないことが分かる。しかし、一体彼女の身に何が起きているのか。
床に横たわるシンが二人の戦いの様子を落ちそうになる意識の中、辛うじて持ち堪える瞼を必死にこじ開けて伺う。それでもロッシュとシルヴィの間には、別段変わった様子がない。これはただの武芸による戦闘。
故にロッシュと直に戦ったシンには、シルヴィには感じない違和感を覚えた。
それはシンとの戦いで散々見せつけて来た、厄介で恐ろしいもの、“光”を使っていないこと。グレイスのバフでステータスの上がっているシルヴィを生身で相手にするなど、通常であれば到底出来ることではない。
それをロッシュは、擦りこそするものの一度もまともに喰らってはいない。ロッシュが避けきれない場面で、シルヴィが攻撃を外すからだ。
シンは、シルヴィの不調はロッシュのサポートをする光にが原因ではないのかと考えたが、何処を探そうとあの時の光は何処にも見当たらない。
答えの見えぬ中でシンが頼ったのは、彼の目に宿る現実世界から持ち込んだアイテム、テュルプ・オーブだった。片目をゆっくり閉じ、再び開く。するとシンの片目はまるで機械の瞳のように変わり、ギョロギョロと忙しなく周囲を見渡す。
白獅との通信を介さず起動すると、解析されていない情報は解らないものの、ある程度の魔力探知や生命反応を調べることが出来る。
シンは再びオーブを使い、二人の戦いを調べる。するとそこには、それまで見えなかった景色が広がっており、シルヴィの不調のカラクリが見え始めて来た。肉眼では確認出来なかったが、シルヴィの身体に微量の魔力反応と、信じられないことだが僅かな生命反応が伺えた。
「・・・?生命反応・・・どうして・・・」
そして驚くべきことは、更に二人の戦いの中で起こる。ロッシュの体勢を崩したシルヴィが急所を捉えた一撃を放つと、やはり彼女の攻撃はロッシュから外れてしまう。しかし、同時にシルヴィの身体から魔力反応と生命反応が僅かに消えたのだ。
「まさか・・・これは・・・!」
彼の中で確信に近いある仮説が立った。あの時見た光る細胞のようなものは床や壁、天井といった物だけでなく、人の上にも這わせることが出来るのではないだろうか。そしてその光こそがシルヴィの身体に異変を来す元凶であると、シンは考えていた。
しかし、仮にそれが事実だったとして、彼女の身体からどうやってその光を排除するのか分からなかった。この仮説をシルヴィに伝えて、変に動揺を起こさせる訳にはいかない。
不甲斐ない自身の代わりに、前線で身を削ってくれている彼女をサポートするのが、今のシンに出来る最大限の名誉挽回。彼は一か八か、ある試みを実行してみることにした。
シルヴィが再びチャンスを作り出すまで、何もせず何もいわず、ロッシュに感づかれぬよう、ただ傍観した。そしてその時は直ぐに訪れる。流石は、グレイスのバフにより能力の向上を得た近接特化のシルヴィ。見事にロッシュの攻撃を弾き、愚直にも再び男へ向けて手斧を振るう。
シルヴィが攻撃を振るおうとした時、シンの目に宿るオーブがロッシュの光と思しき反応を見逃さなかった。彼女の攻撃に合わせ、その反応は腕に向かって移動する。シンはそれを、シルヴィの影を利用し包み込むようにして覆った。
すると、彼女の腕にあったロッシュの光と思しき反応は、シンの身体へと移動して来ていた。彼はスキル【潜影】により、光を自分の身体へ移して身代わりとなったのだ。
シンの献身的な行動が功を奏し、遂に戦況が動き出す。ロッシュは依然、シルヴィの攻撃が自身に当たらないと知っているかのような行動を取る。しかし、今回はロッシュの思い通りに事は運ばない。
シルヴィの振るった一撃は、標的を逸れる事なく向かって行き、ロッシュを捉える。
「ッ・・・!?」
攻撃が逸れることなく自身に向かってくるという異変にいち早く気づいたロッシュは、急ぎそれを避ける為に彼女から距離を取ろうとした。だが、シルヴィの攻撃を完全に避けるまでには至らず、彼女の攻撃は遂にロッシュへと命中する。
「当たった・・・!?どういう訳か知らねぇが、これが好機って事だけは分かるぜぇッ!!」
「何ぃぃぃッ!?何故だッ!?」
取り乱したロッシュを休めせる暇もなく責め立てるシルヴィ。致命傷こそ与えられないものの、彼女の攻撃は次々にロッシュへ命中し、負傷を負わせていく。
形勢が逆転し、一気に勝利が見え始める。ロッシュの短剣を力一杯弾き飛ばし、無防備になったところへ、床に敷かれた木材をへし折る程、力強く踏み込んだシルヴィの一撃がロッシュを刈り取る。
と、誰もが思っていたが、突然動きがゆっくりになり、遂には止まってしまうシルヴィ。一体どうしたのかと彼女に視線を移すと、その身体には数本の短剣が突き刺さっていた。
「クソッ・・・!クソッ!クソッ!!何で!?俺ぁコイツを狙って・・・!」
「どうした?これでは俺を殺すどころではないぁ・・・ククク」
ロッシュのこの余裕から、シルヴィの不調は明らかに彼女のミスではないことが分かる。しかし、一体彼女の身に何が起きているのか。
床に横たわるシンが二人の戦いの様子を落ちそうになる意識の中、辛うじて持ち堪える瞼を必死にこじ開けて伺う。それでもロッシュとシルヴィの間には、別段変わった様子がない。これはただの武芸による戦闘。
故にロッシュと直に戦ったシンには、シルヴィには感じない違和感を覚えた。
それはシンとの戦いで散々見せつけて来た、厄介で恐ろしいもの、“光”を使っていないこと。グレイスのバフでステータスの上がっているシルヴィを生身で相手にするなど、通常であれば到底出来ることではない。
それをロッシュは、擦りこそするものの一度もまともに喰らってはいない。ロッシュが避けきれない場面で、シルヴィが攻撃を外すからだ。
シンは、シルヴィの不調はロッシュのサポートをする光にが原因ではないのかと考えたが、何処を探そうとあの時の光は何処にも見当たらない。
答えの見えぬ中でシンが頼ったのは、彼の目に宿る現実世界から持ち込んだアイテム、テュルプ・オーブだった。片目をゆっくり閉じ、再び開く。するとシンの片目はまるで機械の瞳のように変わり、ギョロギョロと忙しなく周囲を見渡す。
白獅との通信を介さず起動すると、解析されていない情報は解らないものの、ある程度の魔力探知や生命反応を調べることが出来る。
シンは再びオーブを使い、二人の戦いを調べる。するとそこには、それまで見えなかった景色が広がっており、シルヴィの不調のカラクリが見え始めて来た。肉眼では確認出来なかったが、シルヴィの身体に微量の魔力反応と、信じられないことだが僅かな生命反応が伺えた。
「・・・?生命反応・・・どうして・・・」
そして驚くべきことは、更に二人の戦いの中で起こる。ロッシュの体勢を崩したシルヴィが急所を捉えた一撃を放つと、やはり彼女の攻撃はロッシュから外れてしまう。しかし、同時にシルヴィの身体から魔力反応と生命反応が僅かに消えたのだ。
「まさか・・・これは・・・!」
彼の中で確信に近いある仮説が立った。あの時見た光る細胞のようなものは床や壁、天井といった物だけでなく、人の上にも這わせることが出来るのではないだろうか。そしてその光こそがシルヴィの身体に異変を来す元凶であると、シンは考えていた。
しかし、仮にそれが事実だったとして、彼女の身体からどうやってその光を排除するのか分からなかった。この仮説をシルヴィに伝えて、変に動揺を起こさせる訳にはいかない。
不甲斐ない自身の代わりに、前線で身を削ってくれている彼女をサポートするのが、今のシンに出来る最大限の名誉挽回。彼は一か八か、ある試みを実行してみることにした。
シルヴィが再びチャンスを作り出すまで、何もせず何もいわず、ロッシュに感づかれぬよう、ただ傍観した。そしてその時は直ぐに訪れる。流石は、グレイスのバフにより能力の向上を得た近接特化のシルヴィ。見事にロッシュの攻撃を弾き、愚直にも再び男へ向けて手斧を振るう。
シルヴィが攻撃を振るおうとした時、シンの目に宿るオーブがロッシュの光と思しき反応を見逃さなかった。彼女の攻撃に合わせ、その反応は腕に向かって移動する。シンはそれを、シルヴィの影を利用し包み込むようにして覆った。
すると、彼女の腕にあったロッシュの光と思しき反応は、シンの身体へと移動して来ていた。彼はスキル【潜影】により、光を自分の身体へ移して身代わりとなったのだ。
シンの献身的な行動が功を奏し、遂に戦況が動き出す。ロッシュは依然、シルヴィの攻撃が自身に当たらないと知っているかのような行動を取る。しかし、今回はロッシュの思い通りに事は運ばない。
シルヴィの振るった一撃は、標的を逸れる事なく向かって行き、ロッシュを捉える。
「ッ・・・!?」
攻撃が逸れることなく自身に向かってくるという異変にいち早く気づいたロッシュは、急ぎそれを避ける為に彼女から距離を取ろうとした。だが、シルヴィの攻撃を完全に避けるまでには至らず、彼女の攻撃は遂にロッシュへと命中する。
「当たった・・・!?どういう訳か知らねぇが、これが好機って事だけは分かるぜぇッ!!」
「何ぃぃぃッ!?何故だッ!?」
取り乱したロッシュを休めせる暇もなく責め立てるシルヴィ。致命傷こそ与えられないものの、彼女の攻撃は次々にロッシュへ命中し、負傷を負わせていく。
形勢が逆転し、一気に勝利が見え始める。ロッシュの短剣を力一杯弾き飛ばし、無防備になったところへ、床に敷かれた木材をへし折る程、力強く踏み込んだシルヴィの一撃がロッシュを刈り取る。
と、誰もが思っていたが、突然動きがゆっくりになり、遂には止まってしまうシルヴィ。一体どうしたのかと彼女に視線を移すと、その身体には数本の短剣が突き刺さっていた。
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