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決定的な一撃
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鎧に覆われていたヴォルテルの本体が姿を表す。男の身体は筋肉質ではあるものの、別の種族でも異生物のものでもない人間の身体そのものだった。
故に男の力やスピードは種族の違いによるものではなく、単純にその男本人の持つステータスであったことが分かる。ただ一つ不可解なのは、この男がルシアンの乗る船に乗り込んで来る時に見せた、人のものとは思えぬ程の跳躍力だ。
あれがこの男の身体能力から繰り出されたものなのか、それとも何かの能力向上効果、或いは付与による能力なのか。その要因がヴォルテル本人以外の何者かによるものであるならば、この男を倒したところでまだロッシュに続く不安要素があるのかも知れない。
だが、この男を拘束したところで何かを吐くとも思えない。それにそんな余裕はルシアンにもなかった。相手を生け捕りにするなど、相手より優っている者が出来る芸当。何とか相手を倒すのが精一杯という状況。
鎧が剥がれたことによって男は、ルシアンの時間差で射出されるシェイカーを生身で受けることになる。こんかいは鎧の時とは違い、シェイカーを受け止めるだけでもその勢いによる衝撃でダメージが入っていた。
「クソッ・・・!こんなことがッ・・・、こんな攻撃如きでダメージを受けるなんど・・・何たる屈辱ッ・・・!」
ステンレス製のシェイカーがヴォルテルの腕に当たり、鈍い音を奏でる。すると今度は爆発を起こし、更なるダメージを与える。これを何度も繰り返し、いくら屈強なる身体の持ち主であっても、攻撃をもろともしない防御力を誇ろうとも、このままでは最悪の事態を覚悟しなければならない事態に追い込まれていた。
「ぉぉぉ・・・ぉぉおおおッ!」
腕は痣に蝕まれ、爆発の火傷を負いながらも尚、男はその腕を振るい続け直撃を何とか免れている。
その間にも、着実に勝利への布石を敷いていくルシアンは、トドメの攻撃のための準備を全て終え、いよいよこの戦闘に終止符を打つ心構えをする。
「準備は整いました。ここまで来るのに、どれだけの命を捧げたことか・・・。彼らのくれたチャンスが、漸く実を結ぶ時が来たのです。彼ら無くして私の命もなかったでしょう・・・。感謝しなくてはなりませんね・・・」
爆煙の中から覗かせるヴォルテルの身体は、見るも耐えない痛々しい姿をしている。しかしそんな光景を前にしても、ルシアンに慈悲の心など一切ない。それだけこの男も仲間の命を摘み取って来たのだ。情けなど無用だろう。
息を切らせ、辛うじて膝を折ることなく踏ん張り続けるヴォルテルへの、攻撃の手が一時止まる。掌の上でシェイカーをクルクルと回し、その指を閉じ握りしめると共に顔を上げて男を睨みつけるルシアン。
そして一気にヴォルテルへ駆け寄ると、直接至近距離で食らわせるため男の懐へと飛び込んで行く。だが、男もただ黙っている筈もなく、お互い腕を伸ばせば届く距離にまで迫られると、彼に向けてその拳を数度に渡り繰り出す。
しかし、負傷した腕で素早い動きの彼を捕らえることは出来ず、拳の間をすり抜けてきたルシアンは男の胸に、手にしていたシェイカーを押し当てる。
「くッ・・・!!」
「これで・・・最期です。戦は個でするものではありません。例え、絶対的な戦力差があろうとも・・・」
ルシアンは男の胸を蹴り、飛び退く。ゆっくりと男との距離を空けるその刹那、彼の顔の横を、物凄い速さでシェイカーが通り抜ける。突然の出来事に理解の追いつかないルシアンは目を見開き、思わず口が開いた。
まるで時がゆっくり進んでいるかのように、宙に舞う彼は男を中心として見えない何かが押し寄せて来るのが分かった。瓦礫や残骸が吹き飛び、倒れる船員達を宙に巻き上げながら、近くにある凡ゆるモノを遠くへ吹き飛ばしていく。
そして、その見えないに何かはルシアンの身体にぶつかると、大きな物に跳ね飛ばされるようにして、彼の身体を勢い良く後方へ吹き飛ばしていった。
「あぁ、全く・・・テメェの言う通りだぜ。戦は一人でするもんじゃぁねぇ・・・。絶対的な戦力差は一瞬で・・・戦況を覆しちまうんだからなぁッ!」
あと一歩で、この男の絶対防御の中へ潜り込み、内側から爆発を与え吹き飛ばすことが出来たのかもしれない。もしそれが上手くいっていれば、ルシアンの勝利は決定的なモノになっていたことだろう。
いや、実際のところ彼は勝利を掴んでいた。だがそれは無残にも彼の手からこぼれ落ち、男の忘れそうになっていた力に勝利の女神は微笑んだ。
ヴォルテルがこの土壇場で放ったスキルこそ、遂にそのクールタイムを終え、満を辞して再使用された、“全方位シールドバッシュ”なのだ。
故に男の力やスピードは種族の違いによるものではなく、単純にその男本人の持つステータスであったことが分かる。ただ一つ不可解なのは、この男がルシアンの乗る船に乗り込んで来る時に見せた、人のものとは思えぬ程の跳躍力だ。
あれがこの男の身体能力から繰り出されたものなのか、それとも何かの能力向上効果、或いは付与による能力なのか。その要因がヴォルテル本人以外の何者かによるものであるならば、この男を倒したところでまだロッシュに続く不安要素があるのかも知れない。
だが、この男を拘束したところで何かを吐くとも思えない。それにそんな余裕はルシアンにもなかった。相手を生け捕りにするなど、相手より優っている者が出来る芸当。何とか相手を倒すのが精一杯という状況。
鎧が剥がれたことによって男は、ルシアンの時間差で射出されるシェイカーを生身で受けることになる。こんかいは鎧の時とは違い、シェイカーを受け止めるだけでもその勢いによる衝撃でダメージが入っていた。
「クソッ・・・!こんなことがッ・・・、こんな攻撃如きでダメージを受けるなんど・・・何たる屈辱ッ・・・!」
ステンレス製のシェイカーがヴォルテルの腕に当たり、鈍い音を奏でる。すると今度は爆発を起こし、更なるダメージを与える。これを何度も繰り返し、いくら屈強なる身体の持ち主であっても、攻撃をもろともしない防御力を誇ろうとも、このままでは最悪の事態を覚悟しなければならない事態に追い込まれていた。
「ぉぉぉ・・・ぉぉおおおッ!」
腕は痣に蝕まれ、爆発の火傷を負いながらも尚、男はその腕を振るい続け直撃を何とか免れている。
その間にも、着実に勝利への布石を敷いていくルシアンは、トドメの攻撃のための準備を全て終え、いよいよこの戦闘に終止符を打つ心構えをする。
「準備は整いました。ここまで来るのに、どれだけの命を捧げたことか・・・。彼らのくれたチャンスが、漸く実を結ぶ時が来たのです。彼ら無くして私の命もなかったでしょう・・・。感謝しなくてはなりませんね・・・」
爆煙の中から覗かせるヴォルテルの身体は、見るも耐えない痛々しい姿をしている。しかしそんな光景を前にしても、ルシアンに慈悲の心など一切ない。それだけこの男も仲間の命を摘み取って来たのだ。情けなど無用だろう。
息を切らせ、辛うじて膝を折ることなく踏ん張り続けるヴォルテルへの、攻撃の手が一時止まる。掌の上でシェイカーをクルクルと回し、その指を閉じ握りしめると共に顔を上げて男を睨みつけるルシアン。
そして一気にヴォルテルへ駆け寄ると、直接至近距離で食らわせるため男の懐へと飛び込んで行く。だが、男もただ黙っている筈もなく、お互い腕を伸ばせば届く距離にまで迫られると、彼に向けてその拳を数度に渡り繰り出す。
しかし、負傷した腕で素早い動きの彼を捕らえることは出来ず、拳の間をすり抜けてきたルシアンは男の胸に、手にしていたシェイカーを押し当てる。
「くッ・・・!!」
「これで・・・最期です。戦は個でするものではありません。例え、絶対的な戦力差があろうとも・・・」
ルシアンは男の胸を蹴り、飛び退く。ゆっくりと男との距離を空けるその刹那、彼の顔の横を、物凄い速さでシェイカーが通り抜ける。突然の出来事に理解の追いつかないルシアンは目を見開き、思わず口が開いた。
まるで時がゆっくり進んでいるかのように、宙に舞う彼は男を中心として見えない何かが押し寄せて来るのが分かった。瓦礫や残骸が吹き飛び、倒れる船員達を宙に巻き上げながら、近くにある凡ゆるモノを遠くへ吹き飛ばしていく。
そして、その見えないに何かはルシアンの身体にぶつかると、大きな物に跳ね飛ばされるようにして、彼の身体を勢い良く後方へ吹き飛ばしていった。
「あぁ、全く・・・テメェの言う通りだぜ。戦は一人でするもんじゃぁねぇ・・・。絶対的な戦力差は一瞬で・・・戦況を覆しちまうんだからなぁッ!」
あと一歩で、この男の絶対防御の中へ潜り込み、内側から爆発を与え吹き飛ばすことが出来たのかもしれない。もしそれが上手くいっていれば、ルシアンの勝利は決定的なモノになっていたことだろう。
いや、実際のところ彼は勝利を掴んでいた。だがそれは無残にも彼の手からこぼれ落ち、男の忘れそうになっていた力に勝利の女神は微笑んだ。
ヴォルテルがこの土壇場で放ったスキルこそ、遂にそのクールタイムを終え、満を辞して再使用された、“全方位シールドバッシュ”なのだ。
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