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触発される決意
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ヴォルテルがルシアンを乗せた工作船に単騎突撃をしている頃、シルヴィはグレイスのいる最後尾の船に乗り合わせ、彼女らから右前方を行く味方船と共にロッシュ軍の船団へ向けて進軍していた。
だが、ここでグレイス軍にとって誤算だったのはヴォルテルが乗り込んで来たことによって、左前方でぶつかる筈だったロッシュ軍の一隻がグレイスやシルビィの乗る後方へと、進路を変え向かって来たのだ。
「シルヴィさんッ!向こうの船が一隻、こちらへ向かって来ていますッ!」
船員の報告で、ルシアンを乗せた船の方を確認するシルヴィ。敵船が進路を変えたにもかかわらず彼らの船は、真直ぐ進んで行く。操縦士がやられたのか、それとも退っ引きならない状態にあるのか。
否、両軍がぶつかり合う戦場から、彼らの船が遠ざかるのはルシアンの指示。ヴォルテルという主戦力の者が飛び込んできたのは、不意を突かれた誤算だったがこれをルシアンはまたと無い好機と捉えた。
ロッシュの腹心にして、凡ゆる攻撃から守る絶対防御の男が主人と共にあらば、攻略は容易ではなかっただろう。それがのこのこと前線に出て来たのだから、引き剥がさない手は無い。
例えヴォルテルとの戦闘に敗れようと、飛んで戻れないほど距離を空けてしまえば、この男は孤立し戦線に戻ってくることはない。転んでもタダでは転ばない、そうした思いが彼に行動を起こさせたのだ。
「よ・・・よろしいのですか!?ルシアンさん!」
「構いません、これは不幸中の幸い・・・チャンスなのです。戦は個の勝利ではなく軍の勝利で勝敗が決するもの。しかし、元より我々も諦めたからこのような策に出るのではありません。・・・勝って船長達と合流しますよ」
ルシアン達の視点からも、ヴォルテルが飛び出した船が舵を切り、進路を変える様子が見える。だがシルヴィの実力を持ってすれば、烏合の衆がいくら集まろうときっと上手くやってくれる筈。
仲間の活躍を信じ、今は目の前の男を突破することだけを考えるよう船員達に指示し、戦いに集中させると共に自身にも、余計なことを考え気を逃すことのないよう気を引き締めるルシアン。
「こっちに三隻も・・・。後方に控える船には恐らくロッシュの野郎がいる・・・。前の二隻で様子見してくるか、それとも三隻で一気に攻め落としにくるか・・・」
グレイス復活までの間、どの様に凌ぐか。もう一隻に囮りをさせ時間を稼ぐか、それともシルヴィ自ら敵船を相手にするか。グレイスの眠る船内の方へ視線を送ると、危機迫る状況下の中でシルヴィは大きく深呼吸し、目を閉じて仲間の活躍を思い出していた。
自らを危険に晒し、戦況を五分五分にまで持ち込んだエリクの奮闘した姿。ロッシュ軍の注目を集め囮役を買って出たルシアン。そして彼も今まさに戦っている。そんな中で自分は何が出来るのか。
「おい・・・前の船に速力を落とすよう伝えろ。距離を空けるな、二隻を近づけて協力しながら迎え撃て。・・・それと、ワイヤーフックと射出機を用意してくれるか?」
シルヴィの指示通り、残り二隻となったグレイス軍の船は距離を縮めて敵船を迎え撃つ構えを取る。船員に一人用のワイヤーフックを準備させたシルヴィはマストに登ると、上から手動の荷物用昇降機を使ってワイヤーフックと射出機を受け取り、準備を始める。
真っ直ぐグレイス軍目掛けて直進していた敵船との距離が近づく。シルヴィは射程に入った敵船のマストにワイヤーフックを撃ち込むと、ジップラインのようにして敵船へと乗り込んで行った。
「敵の一人がこっちに乗り込んでくるぞッ!」
「一人だぁ!?戦力差が理解出来てねぇようだな!」
ヴォルテルのような防御に特化したタンク役であるならまだしも、軽装のシルヴィを見て嘲笑するロッシュ軍の者達。滑走してくる彼女目掛けて、遠距離武器で応戦する。すると彼女は、身体を揺らし勢いをつけると、滑走するスピードを利用し敵船へと飛び込んで来た。
空中で手斧を取り出すと、甲板で迎え撃とうとしている船員に次々と放り、着地点の確保をする。無事に敵船へ到達してみせたシルヴィに、思わず後退りするロッシュ軍。
「おらぁッ!かかって来いやッ!このシルヴィ様が相手になってやるぜぇッ!!」
命懸けで仲間達が繋いだこの状況を、何としてもグレイスに繋げるためにシルヴィは、残りの船員達に彼女の乗る船の守りを固めさせ、自身が先陣で敵軍を相手取る手段を選んだのだ。
ヴォルテルがルシアンの船に乗り込んで行って間も無く、ロッシュは自身の船に感じた違和感の正体を確かめるため、船内へと向かう。グラン・ヴァーグで感じた嫌な予感とは違い、今度こそ気のせいでは無くハッキリと何者かの気配を感じたロッシュは、船内に繋がる扉に手を添えて意識を集中させる。
「フェリクスの奴が逃げるなんざ、あり得ねぇことだ。原因はコイツと見て間違いないだろう・・・。問題はコイツが何者かだ、グレイスんとこの奴か?それとも・・・」
扉に手をつくロッシュの腕から、無数に枝分かれした青白く光る半透明の細胞のようなモノが、壁を伝い船内へと広がって行く。船内に潜む何者かの気配を探る、ロッシュの捜索が始まる。
だが、ここでグレイス軍にとって誤算だったのはヴォルテルが乗り込んで来たことによって、左前方でぶつかる筈だったロッシュ軍の一隻がグレイスやシルビィの乗る後方へと、進路を変え向かって来たのだ。
「シルヴィさんッ!向こうの船が一隻、こちらへ向かって来ていますッ!」
船員の報告で、ルシアンを乗せた船の方を確認するシルヴィ。敵船が進路を変えたにもかかわらず彼らの船は、真直ぐ進んで行く。操縦士がやられたのか、それとも退っ引きならない状態にあるのか。
否、両軍がぶつかり合う戦場から、彼らの船が遠ざかるのはルシアンの指示。ヴォルテルという主戦力の者が飛び込んできたのは、不意を突かれた誤算だったがこれをルシアンはまたと無い好機と捉えた。
ロッシュの腹心にして、凡ゆる攻撃から守る絶対防御の男が主人と共にあらば、攻略は容易ではなかっただろう。それがのこのこと前線に出て来たのだから、引き剥がさない手は無い。
例えヴォルテルとの戦闘に敗れようと、飛んで戻れないほど距離を空けてしまえば、この男は孤立し戦線に戻ってくることはない。転んでもタダでは転ばない、そうした思いが彼に行動を起こさせたのだ。
「よ・・・よろしいのですか!?ルシアンさん!」
「構いません、これは不幸中の幸い・・・チャンスなのです。戦は個の勝利ではなく軍の勝利で勝敗が決するもの。しかし、元より我々も諦めたからこのような策に出るのではありません。・・・勝って船長達と合流しますよ」
ルシアン達の視点からも、ヴォルテルが飛び出した船が舵を切り、進路を変える様子が見える。だがシルヴィの実力を持ってすれば、烏合の衆がいくら集まろうときっと上手くやってくれる筈。
仲間の活躍を信じ、今は目の前の男を突破することだけを考えるよう船員達に指示し、戦いに集中させると共に自身にも、余計なことを考え気を逃すことのないよう気を引き締めるルシアン。
「こっちに三隻も・・・。後方に控える船には恐らくロッシュの野郎がいる・・・。前の二隻で様子見してくるか、それとも三隻で一気に攻め落としにくるか・・・」
グレイス復活までの間、どの様に凌ぐか。もう一隻に囮りをさせ時間を稼ぐか、それともシルヴィ自ら敵船を相手にするか。グレイスの眠る船内の方へ視線を送ると、危機迫る状況下の中でシルヴィは大きく深呼吸し、目を閉じて仲間の活躍を思い出していた。
自らを危険に晒し、戦況を五分五分にまで持ち込んだエリクの奮闘した姿。ロッシュ軍の注目を集め囮役を買って出たルシアン。そして彼も今まさに戦っている。そんな中で自分は何が出来るのか。
「おい・・・前の船に速力を落とすよう伝えろ。距離を空けるな、二隻を近づけて協力しながら迎え撃て。・・・それと、ワイヤーフックと射出機を用意してくれるか?」
シルヴィの指示通り、残り二隻となったグレイス軍の船は距離を縮めて敵船を迎え撃つ構えを取る。船員に一人用のワイヤーフックを準備させたシルヴィはマストに登ると、上から手動の荷物用昇降機を使ってワイヤーフックと射出機を受け取り、準備を始める。
真っ直ぐグレイス軍目掛けて直進していた敵船との距離が近づく。シルヴィは射程に入った敵船のマストにワイヤーフックを撃ち込むと、ジップラインのようにして敵船へと乗り込んで行った。
「敵の一人がこっちに乗り込んでくるぞッ!」
「一人だぁ!?戦力差が理解出来てねぇようだな!」
ヴォルテルのような防御に特化したタンク役であるならまだしも、軽装のシルヴィを見て嘲笑するロッシュ軍の者達。滑走してくる彼女目掛けて、遠距離武器で応戦する。すると彼女は、身体を揺らし勢いをつけると、滑走するスピードを利用し敵船へと飛び込んで来た。
空中で手斧を取り出すと、甲板で迎え撃とうとしている船員に次々と放り、着地点の確保をする。無事に敵船へ到達してみせたシルヴィに、思わず後退りするロッシュ軍。
「おらぁッ!かかって来いやッ!このシルヴィ様が相手になってやるぜぇッ!!」
命懸けで仲間達が繋いだこの状況を、何としてもグレイスに繋げるためにシルヴィは、残りの船員達に彼女の乗る船の守りを固めさせ、自身が先陣で敵軍を相手取る手段を選んだのだ。
ヴォルテルがルシアンの船に乗り込んで行って間も無く、ロッシュは自身の船に感じた違和感の正体を確かめるため、船内へと向かう。グラン・ヴァーグで感じた嫌な予感とは違い、今度こそ気のせいでは無くハッキリと何者かの気配を感じたロッシュは、船内に繋がる扉に手を添えて意識を集中させる。
「フェリクスの奴が逃げるなんざ、あり得ねぇことだ。原因はコイツと見て間違いないだろう・・・。問題はコイツが何者かだ、グレイスんとこの奴か?それとも・・・」
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