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先鋒戦幕引き
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彼が初めに気にしたのは、戦闘機が単機であるのかそれとも複数機存在するのかだ。戦闘の優劣に関わるのは勿論のことだが、もし複数いるのだとしたら船尾のグレイス救出が敵に気付かれてしまう。
複数いるのであれば、何より先に自分を狙っていない機体を探さなければならない。これだけ敵の視認し易い場所にいるのだ、それでも尚無視して索敵を行うのであれば、個体によって優先事項が違うか、別の目標を既に見つけた時くらいのものだろう。
エリク自身を狙ってくる機体を尻目に、周囲の様子や同じ音を出している物がいないか探りを入れる。だが、彼の頭の中で枝分かれする“もしも”という不安要素は、現実のものとはならなかった。戦闘機の視野に入りながら射線上を避けて動き、僅かな間だが五感を集中させ索敵してみても、それらしき物を発見することは出来なかった。
「一機だけ・・・か?これなら対処できそうだな」
彼は懐から小型の擲弾発射機を取り出すと、銃身の元の部分を折り弾を込める。これは所謂グレネードランチャーと呼ばれる物で、砲術士のクラスであれば携帯出来る最小の砲撃手段となる。
「ルシアンさんに在り合わせで作って貰っといて良かった・・・。通常のグレネード弾なら、あんなに早い動きの相手に合わせられなかっただろう」
耳障りな音を立て接近してくるのを察したエリクは、意を決し戦闘機の射線上で火器の銃口を向かってくる物に向けて仁王立ちをする。敵機は標的を正面に捉え、機銃を撃ち放つと、彼はそれを負傷した腕で受け切る。
「ぐッ・・・ぁぁぁあああッ!!」
痛みに耐えながらも目を逸らすことなく、グレネードランチャーの射程距離に入った戦闘機目掛けてトリガーを引くエリク。弾がバレルを走り抜け銃口から炎が噴き出る中、銃弾が放たれると弾は向かってくる戦闘機との距離を縮めていく。
しかし、命中するかというところで敵機は機体を回転させて、彼の放った銃弾を避けてみせる。弾は敵機とすれ違ったところで内部の弾を拡散させながら、黒煙を撒き散らしながら連続して小規模の爆発を引き起こす。
戦闘機はエリクの顔スレスレを飛び抜けていくと、旋回し再び向かってこようとしている。急ぎ敵機の方へと振り向きながら、一度グレネードランチャーを懐のホルダーへ仕舞うと、代わりに弾を二つ取り出し、高度を分けて上空に弾を放る。
再びグレネードランチャーを取り出し身体を使って銃身を折ると、薬莢を捨て一つ目の落ちてくる弾を見事キャッチしリロードする。折れた銃身を身体で戻すと、敵機へ銃口を向ける。垂れ下がる片腕を一瞬だけ確認すると、攻撃を受け切るのはこれが最後だと悟る。
「まだ辛うじて動く・・・。十分だ・・・どの道、これでダメならそれまでだッ!」
エリクは向かってくる戦闘機目掛けてトリガーを引いた。今度は射程距離に入るよりも早く撃ち放ち、拡散した弾が宙で爆発を起こす。周囲に更なる黒煙が撒き散らされるが、その向こうから戦闘機は機銃を撃ってきた。負傷している腕を更に鞭打つように盾として使い、銃弾を受け止める。
これでもう攻撃を受けられなくなったが、エリクにとってここまでは想定していた通りにことが運んでいる。再びから薬莢を捨て、音を聞きながら戦闘機の位置に目ぼしをつけると、身体を回転させて二つ目の落ちてくる弾を装填する。
「爆発の黒煙で目眩しか・・・?やはりコイツが迫撃砲を撃ち込んできた策士か。だが、生憎こちらは生身じゃねぇからな・・・」
ロッシュがエリクと戦闘機の様子を遠くから見ている。戦闘機は彼の何らかのスキルによって動かしている偵察機の役割に過ぎない。例え一機失おうと、ロッシュにとっては全く痛手ではないのだ。
戦闘機は、黒煙に囲われたエリクの元へ突っ込んでいく。何も見えない煙の中を突き進むと、光明が見え始めエリクのいるであろう台風の目に到達する。しかし、そこにエリクの姿が見当たらない。黒煙の外にいた戦闘機には、彼が煙の中から飛び出した様子は確認できていない。必ずエリクはここにいる筈なのだ。
「現れたな・・・これで終いだッ!」
彼の手にしたグレネードランチャーから銃弾が飛び出し、煙と炎を噴き出す。弾は戦闘機の腹部を捉え、爆発を引き起こした。
エリク床に仰向けで倒れると、黒煙に囲まれ制限された空間を隈なく見渡せる位置にいたのだ。どの角度、どの方角から黒煙を抜けて来ようと必ず捉えることの出来る位置に。
「ほう・・・よくもまぁ撃墜できたものだ。そいつは迫撃の礼だ・・・」
ロッシュの操る戦闘機を見事破壊したエリクであったが、消耗が激しくこれ以上の戦闘は不可能な状態に追いやられてしまった。これで彼の風水による援護を失ったグレイス軍だが、遠距離クラスの部下を失ったのは両軍共に同じこと。これよりはヴォルテルの突撃による接近戦へと移行する。
シルヴィがグレイスを引き上げ、船員に治療を行わせる指示を出したところで、船首の方から爆発音が聞こえると、何かの部品のようなものが辺りに飛び散っていた。誰と誰が戦闘を繰り広げていたのか、状況が分からないシルヴィが確認のため黒煙の中へ向かう。
「何だぁッ!?一体何が・・・しかもこんな近くで・・・」
徐々に晴れていく煙の中を慎重に進むシルヴィ。すると、彼女の足の爪先が何かに当たるのを感じ取る。何かを発見するには、想定外の位置にあったため得体の知れない何かを確認しようと、ゆっくり視線を落としていく。
そこには、泥臭い接近戦など汚れるから絶対に嫌だと日頃から抜かしていた、見慣れた男が血を流し倒れていた。
複数いるのであれば、何より先に自分を狙っていない機体を探さなければならない。これだけ敵の視認し易い場所にいるのだ、それでも尚無視して索敵を行うのであれば、個体によって優先事項が違うか、別の目標を既に見つけた時くらいのものだろう。
エリク自身を狙ってくる機体を尻目に、周囲の様子や同じ音を出している物がいないか探りを入れる。だが、彼の頭の中で枝分かれする“もしも”という不安要素は、現実のものとはならなかった。戦闘機の視野に入りながら射線上を避けて動き、僅かな間だが五感を集中させ索敵してみても、それらしき物を発見することは出来なかった。
「一機だけ・・・か?これなら対処できそうだな」
彼は懐から小型の擲弾発射機を取り出すと、銃身の元の部分を折り弾を込める。これは所謂グレネードランチャーと呼ばれる物で、砲術士のクラスであれば携帯出来る最小の砲撃手段となる。
「ルシアンさんに在り合わせで作って貰っといて良かった・・・。通常のグレネード弾なら、あんなに早い動きの相手に合わせられなかっただろう」
耳障りな音を立て接近してくるのを察したエリクは、意を決し戦闘機の射線上で火器の銃口を向かってくる物に向けて仁王立ちをする。敵機は標的を正面に捉え、機銃を撃ち放つと、彼はそれを負傷した腕で受け切る。
「ぐッ・・・ぁぁぁあああッ!!」
痛みに耐えながらも目を逸らすことなく、グレネードランチャーの射程距離に入った戦闘機目掛けてトリガーを引くエリク。弾がバレルを走り抜け銃口から炎が噴き出る中、銃弾が放たれると弾は向かってくる戦闘機との距離を縮めていく。
しかし、命中するかというところで敵機は機体を回転させて、彼の放った銃弾を避けてみせる。弾は敵機とすれ違ったところで内部の弾を拡散させながら、黒煙を撒き散らしながら連続して小規模の爆発を引き起こす。
戦闘機はエリクの顔スレスレを飛び抜けていくと、旋回し再び向かってこようとしている。急ぎ敵機の方へと振り向きながら、一度グレネードランチャーを懐のホルダーへ仕舞うと、代わりに弾を二つ取り出し、高度を分けて上空に弾を放る。
再びグレネードランチャーを取り出し身体を使って銃身を折ると、薬莢を捨て一つ目の落ちてくる弾を見事キャッチしリロードする。折れた銃身を身体で戻すと、敵機へ銃口を向ける。垂れ下がる片腕を一瞬だけ確認すると、攻撃を受け切るのはこれが最後だと悟る。
「まだ辛うじて動く・・・。十分だ・・・どの道、これでダメならそれまでだッ!」
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戦闘機は、黒煙に囲われたエリクの元へ突っ込んでいく。何も見えない煙の中を突き進むと、光明が見え始めエリクのいるであろう台風の目に到達する。しかし、そこにエリクの姿が見当たらない。黒煙の外にいた戦闘機には、彼が煙の中から飛び出した様子は確認できていない。必ずエリクはここにいる筈なのだ。
「現れたな・・・これで終いだッ!」
彼の手にしたグレネードランチャーから銃弾が飛び出し、煙と炎を噴き出す。弾は戦闘機の腹部を捉え、爆発を引き起こした。
エリク床に仰向けで倒れると、黒煙に囲まれ制限された空間を隈なく見渡せる位置にいたのだ。どの角度、どの方角から黒煙を抜けて来ようと必ず捉えることの出来る位置に。
「ほう・・・よくもまぁ撃墜できたものだ。そいつは迫撃の礼だ・・・」
ロッシュの操る戦闘機を見事破壊したエリクであったが、消耗が激しくこれ以上の戦闘は不可能な状態に追いやられてしまった。これで彼の風水による援護を失ったグレイス軍だが、遠距離クラスの部下を失ったのは両軍共に同じこと。これよりはヴォルテルの突撃による接近戦へと移行する。
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