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旧知の仲
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エイヴリー海賊団が何故ウィリアムのところに来ていたのか、それはレースで乗る予定の船の最終調整を行うためだった。だが、何故レース当日の今日になってこんな事をしているのだろうか。その秘密は、先日ツバキがウィリアムに頼まれて持って来た荷物にあったのだ。
「ガキの好奇心からとはいえ、面白いことになってきたじゃねぇかよ。ウィリアムの旦那はツバキの成長のため、ツバキは旦那に追いつきたい一心で・・・。同じ土俵で競い合える舞台を用意してやったんだ。感謝されてもいいと思うんだが?」
「誰がそんなこと頼んだんだ!ぇえ!?・・・だが、まぁ・・・ありがとよ。こうでもしねぇとあのガキと向き合う機会もなかっただろうしな。丁度いい頃合いじゃな・・・」
マクシムの減らず口に感謝の言葉を返すウィリアム。予想外の反応だったのか、不気味なものを前にしたかのように目を細め、冷や汗をかくマクシム。
「うぉ・・・!何でそんなに素直なんだ!?・・・似つかわしくないぜ・・・旦那ぁ」
ウィリアムとツバキの関係を、冗談交じりに茶化すマクシム。そんなやり取りを尻目に、エイヴリーが船の調整についてウィリアムに尋ねる。
「それで?ウィリアム、調整は上手くいったんだろうなぁ?オメェんとこのガキのために一肌脱いでやったんだ。出来ませんでした、なんてこたぁねぇだろうなぁ?ぇえ?」
「わしを誰だと思っとるんだ?この程度の事、わしに掛かれば朝飯前じゃ。・・・エイヴリー、オメェさんがわしの技術を使いこなせるかどうかの方が不安じゃわい・・・」
幾つもの修羅場を乗り越えてきた漢達の、研ぎ澄まされた眼光による睨み合いに、一色触発の雰囲気を感じ取った周りの者達が思わず固唾を飲む。ビリビリと肌を刺激するかのような緊迫した空気に、マクシムは口角を上げる。ウィリアムがまだ海賊だった頃の気迫を失っていないのだと分かり、彼は嬉しかったのだ。
「抜かすようになったじゃぁねぇか。安心しろ、コイツを誰よりも上手く扱ってやれるのは俺だけだからなぁ。だからマクシムの戯言に付き合ってやったのさ」
「横柄な態度は、その図体だけじゃないようじゃな・・・。オメェさんのおかげでわしも一回り大きくなれた。また期待しておるよ」
二人が気を緩めると同時に、辺りの緊張が一気に溶ける。エイヴリーとウィリアムは嘗ての海賊時代で凌ぎを削り合った盟友でもあり、幾度となく剣を交えてきた。ウィリアムが海賊稼業から足を洗う時、エイヴリーは彼を止めることはなかったという。
それにはエイヴリーの思想が大きく影響していた。彼が良く口にしている言葉の中にこんな言葉がある。やりたい事をやって来た人生は、成功、失敗問わずいい人生だ。だから俺の海賊船に乗る奴はどんなに小さなものでもいい、夢を持っている奴しか乗せねぇ。
ウィリアムは海賊をやっていく中で、新たにやりたい事を見つけた。それは今まで自分が歩んで来た人生を棒に振ってでもやりたかった事であった。それを聞かされたエイヴリーは、彼の生き生きとしたその姿に、最早止めようなどとは思わなかった。その時のやりたかった事というのが、今の造船技師であった。
それから彼らは、船を造って貰っては名を轟かせる関係となり、エイヴリーは海賊界きっての大物となり、ウィリアムはどんな素材をも船に組み込み、他にないオリジナリティー溢れる船を造る異端の造船技師として有名になっていく。
「調整が上手くいったんなら良かった。旦那、そんじゃぁそろそろ行きましょうか」
折り合いを見て会話にピリオドを打つマクシムが、レースの会場へ向かおうとエイヴリーを促す。用件の済んだ彼も、特に断る理由もなかったのでそのままウィリアムに搭乗の許可を得ると、部下を連れて自らの船に乗り込んで行く。
「ウィリアム、世話になったからといってオメェんところのガキに手を抜く真似はしねぇぞ。構わねぇな?」
「あぁ、分かってるとも。小僧もそのつもりでいるさ、いつも言い聞かせておるからのぅ。可愛がってやってくれ」
レースが始まればどんな相手であろうと、その全ての参加者がライバルとなる。エイヴリーは情に流されるほど単純な男ではない。目の前に立ちはだかるともなれば、例えそれが盟友の子であっても切り捨てる覚悟がある。
ウィリアムも、常日頃からツバキにレースの過酷さや起きてなどを言い聞かせて来た。そのツバキが自ら危険を冒してまで、恩師であるウィリアムに挑もうというのだ。その覚悟に水を刺すような真似は出来ないことは、彼自身よく理解している。
動き出した海賊船はウィリアムの工房を離れ、レース会場へと向かっていった。その船内でマクシムの表情を見たエイヴリーが、その表情の理由を尋ねる。
「今回はいつにもなく気合い入ってるじゃねぇか、ぇえ?マクシム。オメェの気にかけてたガキのことか?」
「えぇ、まぁ・・・。旦那ぁ・・・今回はキングやチン・シーだけじゃねぇかもしれませんぜ?」
マクシムは町で見かけた面白そうな人物達のことについて、楽しそうにエイヴリーに話す。彼はエイヴリーにツバキの造り上げた船の秘密については話さなかった。故に彼だけが知っている。造船技師の親子がそれぞれに造り上げた船の特別な力を。
「ガキの好奇心からとはいえ、面白いことになってきたじゃねぇかよ。ウィリアムの旦那はツバキの成長のため、ツバキは旦那に追いつきたい一心で・・・。同じ土俵で競い合える舞台を用意してやったんだ。感謝されてもいいと思うんだが?」
「誰がそんなこと頼んだんだ!ぇえ!?・・・だが、まぁ・・・ありがとよ。こうでもしねぇとあのガキと向き合う機会もなかっただろうしな。丁度いい頃合いじゃな・・・」
マクシムの減らず口に感謝の言葉を返すウィリアム。予想外の反応だったのか、不気味なものを前にしたかのように目を細め、冷や汗をかくマクシム。
「うぉ・・・!何でそんなに素直なんだ!?・・・似つかわしくないぜ・・・旦那ぁ」
ウィリアムとツバキの関係を、冗談交じりに茶化すマクシム。そんなやり取りを尻目に、エイヴリーが船の調整についてウィリアムに尋ねる。
「それで?ウィリアム、調整は上手くいったんだろうなぁ?オメェんとこのガキのために一肌脱いでやったんだ。出来ませんでした、なんてこたぁねぇだろうなぁ?ぇえ?」
「わしを誰だと思っとるんだ?この程度の事、わしに掛かれば朝飯前じゃ。・・・エイヴリー、オメェさんがわしの技術を使いこなせるかどうかの方が不安じゃわい・・・」
幾つもの修羅場を乗り越えてきた漢達の、研ぎ澄まされた眼光による睨み合いに、一色触発の雰囲気を感じ取った周りの者達が思わず固唾を飲む。ビリビリと肌を刺激するかのような緊迫した空気に、マクシムは口角を上げる。ウィリアムがまだ海賊だった頃の気迫を失っていないのだと分かり、彼は嬉しかったのだ。
「抜かすようになったじゃぁねぇか。安心しろ、コイツを誰よりも上手く扱ってやれるのは俺だけだからなぁ。だからマクシムの戯言に付き合ってやったのさ」
「横柄な態度は、その図体だけじゃないようじゃな・・・。オメェさんのおかげでわしも一回り大きくなれた。また期待しておるよ」
二人が気を緩めると同時に、辺りの緊張が一気に溶ける。エイヴリーとウィリアムは嘗ての海賊時代で凌ぎを削り合った盟友でもあり、幾度となく剣を交えてきた。ウィリアムが海賊稼業から足を洗う時、エイヴリーは彼を止めることはなかったという。
それにはエイヴリーの思想が大きく影響していた。彼が良く口にしている言葉の中にこんな言葉がある。やりたい事をやって来た人生は、成功、失敗問わずいい人生だ。だから俺の海賊船に乗る奴はどんなに小さなものでもいい、夢を持っている奴しか乗せねぇ。
ウィリアムは海賊をやっていく中で、新たにやりたい事を見つけた。それは今まで自分が歩んで来た人生を棒に振ってでもやりたかった事であった。それを聞かされたエイヴリーは、彼の生き生きとしたその姿に、最早止めようなどとは思わなかった。その時のやりたかった事というのが、今の造船技師であった。
それから彼らは、船を造って貰っては名を轟かせる関係となり、エイヴリーは海賊界きっての大物となり、ウィリアムはどんな素材をも船に組み込み、他にないオリジナリティー溢れる船を造る異端の造船技師として有名になっていく。
「調整が上手くいったんなら良かった。旦那、そんじゃぁそろそろ行きましょうか」
折り合いを見て会話にピリオドを打つマクシムが、レースの会場へ向かおうとエイヴリーを促す。用件の済んだ彼も、特に断る理由もなかったのでそのままウィリアムに搭乗の許可を得ると、部下を連れて自らの船に乗り込んで行く。
「ウィリアム、世話になったからといってオメェんところのガキに手を抜く真似はしねぇぞ。構わねぇな?」
「あぁ、分かってるとも。小僧もそのつもりでいるさ、いつも言い聞かせておるからのぅ。可愛がってやってくれ」
レースが始まればどんな相手であろうと、その全ての参加者がライバルとなる。エイヴリーは情に流されるほど単純な男ではない。目の前に立ちはだかるともなれば、例えそれが盟友の子であっても切り捨てる覚悟がある。
ウィリアムも、常日頃からツバキにレースの過酷さや起きてなどを言い聞かせて来た。そのツバキが自ら危険を冒してまで、恩師であるウィリアムに挑もうというのだ。その覚悟に水を刺すような真似は出来ないことは、彼自身よく理解している。
動き出した海賊船はウィリアムの工房を離れ、レース会場へと向かっていった。その船内でマクシムの表情を見たエイヴリーが、その表情の理由を尋ねる。
「今回はいつにもなく気合い入ってるじゃねぇか、ぇえ?マクシム。オメェの気にかけてたガキのことか?」
「えぇ、まぁ・・・。旦那ぁ・・・今回はキングやチン・シーだけじゃねぇかもしれませんぜ?」
マクシムは町で見かけた面白そうな人物達のことについて、楽しそうにエイヴリーに話す。彼はエイヴリーにツバキの造り上げた船の秘密については話さなかった。故に彼だけが知っている。造船技師の親子がそれぞれに造り上げた船の特別な力を。
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