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迫る最悪の事態
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しかし、ロッシュは気のせいだったで済ませる様な男ではなかった。どんな場であろうと、意識が混濁するほど酔うことはなく、この場においても酒の量を自らコントロールし、気になった原因について冷静に考察をする。
「いや、やはり見に行こう。ついて来れる者を何人か集めろ、一度船に戻る」
そう言うと彼は席を立ち、側の椅子に掛けてあった上着を羽織ると、酔いの回っていない部下を数名連れて店を出て行った。事情を知らない部下の一人が、彼に船へ戻る理由を尋ねる。
「船に何かあったのですか?船長」
「少し気になっただけだ。何もなければ何もないで構わないだろう。それを今から確かめに行く」
ロッシュの船員達はいつも彼の“気掛かり”に振り回されている。だが、そんな彼の用心深さがあったからこそ、何度も危機を乗り越え、裏切りや偽造工作などの不穏な気配を看破してきた。故に、誰もロッシュの判断に従わない者はいない。勿論、歯向かわない理由はそれだけではなかったが。
「また船長の“気掛かり”か・・・。まだロッシュ海賊団の恐ろしさを知らねぇ奴らがいるのか?身の程知らずにも程があるぜぇ!」
「しかもレース前でピリついてるこの時期になぁ。誰が何を企んでるかいるか知らねぇが、もし見つかりでもしたらどんなバラされ方をするかねぇ・・・。死ねることがどんなに楽なことか、思い知らされることになるだろうよ」
ロロネー程ではないが、用心深く起伏の激しい性格をしているロッシュもまた頭のネジが何処かへ行ってしまっている狂人で有名だった。それは例えどんなに小さなことであっても、ロッシュ海賊団へ手を出そうとした者は見せしめのために拷問を受けた酷い状態で帰らされるケースが多いからだ。
そして拷問を受けた者達は決まって、彼らのことについて語ろうとはせず、その界隈から足を洗い、彼らに見つからない様、隠れる様にして人里離れた場所へと行ってしまうのだとか。
目立たないくらいの人数で町中を進み、停泊場へと向かう一行は、刻一刻とシン達の忍び込んでいる海賊船へと近づいていく。
一方、死霊モンスター達の捜索の魔の手を掻い潜り、船長室へと辿り着いたシンとグレイスは目的のアイテムを探すため、二手に分かれて室内を探索する。音を立てるわけにもいかないので、どうしても作業は慎重になり、時間がかかっている上、その間にもモンスター達の往来が度々あり、その都度シンが陽動をかけていた。
ロッシュ一行が近づく中、二人の探索は難攻していたが、漸く探索作業に進展があった。ロッシュの机周辺を探していたシンが、床に敷き詰められた木目に違和感を感じ触れてみると、何かを引っ掛ける様な小さな窪みを見つける。
しかし、それは同時に鍵の存在の有無を二人の脳裏に過らせる結果となった。大事なものであれば厳重に施錠するのは当然のことで、鍵を肌身離さず持ち歩いている可能性が非常に高い。
鍵を掛けているであろうことも想定していたグレイスは、ピッキング道具を取り出すと解錠作業に取り掛かると、やはりここでも大きな音を立てない様に慎重に鍵穴へと道具を入れる。
彼女の苦労の甲斐虚しく、解錠は上手くことはなく、このままいつ終わるかもわからないピッキングを続けているわけにもいかないと、いよいよ力技に出ようとするグレイスをシンが引き止める。
「待て、確かシュユーは鍛治師と言ったな?彼なら鍵を作れないだろうか?」
「鍵を作るだけなら可能かも知れない。だが、鍵の形状が分からなければ彼でも作ることは出来ないだろう。合鍵を作るのは・・・無理だ・・・」
「鍵の形状を教えられればいいんだな?」
僅かに聞こえるかといった声でグレイスと会話をするシンは、彼女に場所を譲ってもらうよう促すと床に手を当て、自身の影を鍵穴へと落とし込んでいく。何をしているのかとのぞみ込むグレイスは、鍵穴を満たす影を見て、あることに気がついた。
なんとシンは影で鍵穴の型を取っていたのだった。鍵ほど小さいものであれば、【潜影】の範囲も遠くまで及ぶため、ハオランに連れて行かれた店で接触を済ませているシュユーとフーファンのいる船まで、影で作った鍵の型を送ることも可能だろう。
シンはそのまま、鍵の型をシュユーの影へと送り、フーファンの妖術を使った声の伝達を無線機のように使い、彼に合鍵の作成を依頼する。
「シュユー、目的の物を手に入れるには鍵が必要だ。鍛治師のスキルで合鍵を作ることは可能だろうか?」
「鍵を作るのは簡単だが、どんな鍵なのか形が分からなければ作ることは出来ない」
彼の鍵を作れるという言葉に安堵の表情を浮かべるシンとグレイス。シンは鍵の型を取った影をそのまま【潜影】でシュユーの影へと送り、グレイスが代わりに状況を説明した。
「今シンのスキルを使って、アンタの影に鍵の型を送ってるから、それで大至急合鍵を作ってくれ」
シュユーが自身の影を確認すると、その中から黒い鍵の形をした塊が姿を表し、シンのスキルがこんなにも器用なことに使えるかと驚くと、急ぎ合鍵の作成に取り掛かる。
「こんなにくっきりとした型があるのなら作成に時間は掛からないだろう。少し待っててくれ」
酒盛りをしているとばかり思っているロッシュが、自身の海賊船へと戻ってきていると知らないシンとグレイス。漸く目ぼしい場所を見つけるも、鍵の作成に更なる時間を費やしてしまう。シュユーの合鍵作成は、ロッシュ一行が帰ってくるまでに間に合うのだろうか。
「いや、やはり見に行こう。ついて来れる者を何人か集めろ、一度船に戻る」
そう言うと彼は席を立ち、側の椅子に掛けてあった上着を羽織ると、酔いの回っていない部下を数名連れて店を出て行った。事情を知らない部下の一人が、彼に船へ戻る理由を尋ねる。
「船に何かあったのですか?船長」
「少し気になっただけだ。何もなければ何もないで構わないだろう。それを今から確かめに行く」
ロッシュの船員達はいつも彼の“気掛かり”に振り回されている。だが、そんな彼の用心深さがあったからこそ、何度も危機を乗り越え、裏切りや偽造工作などの不穏な気配を看破してきた。故に、誰もロッシュの判断に従わない者はいない。勿論、歯向かわない理由はそれだけではなかったが。
「また船長の“気掛かり”か・・・。まだロッシュ海賊団の恐ろしさを知らねぇ奴らがいるのか?身の程知らずにも程があるぜぇ!」
「しかもレース前でピリついてるこの時期になぁ。誰が何を企んでるかいるか知らねぇが、もし見つかりでもしたらどんなバラされ方をするかねぇ・・・。死ねることがどんなに楽なことか、思い知らされることになるだろうよ」
ロロネー程ではないが、用心深く起伏の激しい性格をしているロッシュもまた頭のネジが何処かへ行ってしまっている狂人で有名だった。それは例えどんなに小さなことであっても、ロッシュ海賊団へ手を出そうとした者は見せしめのために拷問を受けた酷い状態で帰らされるケースが多いからだ。
そして拷問を受けた者達は決まって、彼らのことについて語ろうとはせず、その界隈から足を洗い、彼らに見つからない様、隠れる様にして人里離れた場所へと行ってしまうのだとか。
目立たないくらいの人数で町中を進み、停泊場へと向かう一行は、刻一刻とシン達の忍び込んでいる海賊船へと近づいていく。
一方、死霊モンスター達の捜索の魔の手を掻い潜り、船長室へと辿り着いたシンとグレイスは目的のアイテムを探すため、二手に分かれて室内を探索する。音を立てるわけにもいかないので、どうしても作業は慎重になり、時間がかかっている上、その間にもモンスター達の往来が度々あり、その都度シンが陽動をかけていた。
ロッシュ一行が近づく中、二人の探索は難攻していたが、漸く探索作業に進展があった。ロッシュの机周辺を探していたシンが、床に敷き詰められた木目に違和感を感じ触れてみると、何かを引っ掛ける様な小さな窪みを見つける。
しかし、それは同時に鍵の存在の有無を二人の脳裏に過らせる結果となった。大事なものであれば厳重に施錠するのは当然のことで、鍵を肌身離さず持ち歩いている可能性が非常に高い。
鍵を掛けているであろうことも想定していたグレイスは、ピッキング道具を取り出すと解錠作業に取り掛かると、やはりここでも大きな音を立てない様に慎重に鍵穴へと道具を入れる。
彼女の苦労の甲斐虚しく、解錠は上手くことはなく、このままいつ終わるかもわからないピッキングを続けているわけにもいかないと、いよいよ力技に出ようとするグレイスをシンが引き止める。
「待て、確かシュユーは鍛治師と言ったな?彼なら鍵を作れないだろうか?」
「鍵を作るだけなら可能かも知れない。だが、鍵の形状が分からなければ彼でも作ることは出来ないだろう。合鍵を作るのは・・・無理だ・・・」
「鍵の形状を教えられればいいんだな?」
僅かに聞こえるかといった声でグレイスと会話をするシンは、彼女に場所を譲ってもらうよう促すと床に手を当て、自身の影を鍵穴へと落とし込んでいく。何をしているのかとのぞみ込むグレイスは、鍵穴を満たす影を見て、あることに気がついた。
なんとシンは影で鍵穴の型を取っていたのだった。鍵ほど小さいものであれば、【潜影】の範囲も遠くまで及ぶため、ハオランに連れて行かれた店で接触を済ませているシュユーとフーファンのいる船まで、影で作った鍵の型を送ることも可能だろう。
シンはそのまま、鍵の型をシュユーの影へと送り、フーファンの妖術を使った声の伝達を無線機のように使い、彼に合鍵の作成を依頼する。
「シュユー、目的の物を手に入れるには鍵が必要だ。鍛治師のスキルで合鍵を作ることは可能だろうか?」
「鍵を作るのは簡単だが、どんな鍵なのか形が分からなければ作ることは出来ない」
彼の鍵を作れるという言葉に安堵の表情を浮かべるシンとグレイス。シンは鍵の型を取った影をそのまま【潜影】でシュユーの影へと送り、グレイスが代わりに状況を説明した。
「今シンのスキルを使って、アンタの影に鍵の型を送ってるから、それで大至急合鍵を作ってくれ」
シュユーが自身の影を確認すると、その中から黒い鍵の形をした塊が姿を表し、シンのスキルがこんなにも器用なことに使えるかと驚くと、急ぎ合鍵の作成に取り掛かる。
「こんなにくっきりとした型があるのなら作成に時間は掛からないだろう。少し待っててくれ」
酒盛りをしているとばかり思っているロッシュが、自身の海賊船へと戻ってきていると知らないシンとグレイス。漸く目ぼしい場所を見つけるも、鍵の作成に更なる時間を費やしてしまう。シュユーの合鍵作成は、ロッシュ一行が帰ってくるまでに間に合うのだろうか。
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