154 / 1,646
工作班
しおりを挟む
シュユーのエンチャントによる“不可視”とは、文字通り肉眼で捉えることが出来なくなる付与効果であり、その効果が発動している間は周りの者に視認されなくなるという便利な効果だ。
ただ気をつけなければならないのが、視覚による探知を受けなくなるというだけで、音や臭い、温度や気配などによる探知は受けてしまい、見えないだけで触れることも出来てしまうため、ぶつかったり広範囲に渡る技の効果を受けた際に不自然な現象が視認されて位置が特定されてしまうなどという欠点もある。
要は敵に姿を見られていない状態での先制などで、大きな力を発揮する。また、目眩しなどにより相手の視界から自身の姿を、一時遮断した後のムーブにも効果的で、逃走の際や、体制を立て直すのに重宝する、アサシンのクラスと非常に相性の良い特殊効果である。
「そんな便利なものが・・・。それで?そのロッシュ海賊団に探知が得意なクラスについている者はいるのか?」
シンの危惧する探知系の能力を持つ者が、今回の任務において最も注意を払うべき相手だろう。何かおかしな物音や気配を察知されてスキルを使われたりでもしたら、直ぐに侵入がバレ、ロッシュの元にも連絡がいってしまう。そのような事態だけは何としても避けなければならない。
「勿論、船員の中にはそう言った能力に長けている者もいるだろうが、常日頃から探知をしている訳でもあるまい。何か予兆がなければスキルを使うことはないだろう。一応、フーファンの術式を仕掛けにいく際に相手方の動きと警戒態勢のチェックをしてくる。奴は頭の切れる男だ・・・、何かしらの防衛線を引いていてもおかしくはない」
フーファンの妖術に必要な術式の仕掛けは、必ず一つ以上必要になる。逆に言うのであれば一つだけあれば妖術を発動させることは可能だ。しかし、その妖術の効果や範囲、難解度が術式の個数によって様々に変化してくるのも妖術師のクラスの特徴とも言えるだろう。
多く設置すれば敵に発見されやすく破壊されて弱体化するデメリットもあり、術式の数が減れば妖術の内容が変わり、戦況が変化する。それを見越して敢えて見つかり易い所に仕掛けるなど、考え始めれば果てがないほど奥深く面白い。
「術式の設置はフーファンとシュユーに一任してある。ミアとツクヨは彼らについて行き、重要な術式の護衛をしてもらう。フーファン、今夜の決行時間までには準備出来そうかい?」
「大丈夫です!今回は隠密ということなので、設置する術式の数も少数に留めます。人通りの多い町中や、海上などではかえって目立ってしまいますので、ここはオーソドックスに物を隠すような場所で、目標の船にも近い場所に仕掛けようと思っているですよ」
それを聞いてグレイスは頷き、班を二手に分けて作戦の下準備に取り掛かるよう指示を出していく。班は、術式の設置、調査、護衛、実働班の援護を行うミアとツクヨ、そしてシュユーとフーファンの班。もう一つは、シュユーのエンチャント装備を持ち、実際の動きを確認し、実行するシンとグレイスの班になった。
「よしッ!それじゃぁ設置班は準備に取りかかってくれ。シンとアタシは、装備と侵入経路の確認、それとアンタのスキルがどんな物なのかアタシに見せておくれ。それによってアタシらの行動も変わってくるからね」
一行は席を立ち、任務の成功を誓い合うとそれぞれの場所へと動き出した。
設置班を率いるフーファンは、一行を連れ町中を抜けて行く。始めに訪れたのは町の港にズラリと並ぶ様々な形や武装が施された船が数多く停まる停泊場。船乗りや海賊達の人並みを進んでいき、とある場所に停めてあった何の変哲も無い、よく見かけるような小型の船に辿り着く。
「まずはここに設置するですよ!」
停泊してある目的の船を指差しながら、勢いそのままに歩いて行くフーファン。だれの物かも分からぬ船に、説明もなく進んでいく二人に質問を投げかけるミア。
「この船はなんだ・・・、誰の船なんだ?」
フーファンでは説明にならないと思ったのか、シュユーがミアの質問に答える。
「こちらは我々が前もって用意していた偽造船です。適当なものを見繕い準備しました。任務決行の際にフーファンが術を発動する、妖術の最重要ポイントになります」
妖術師というクラスに疎かったミアとツクヨは、術の仕組みや条件などは分からないが、ロッシュの船も停まっているであろう停泊場に術者であるフーファンと重要ポイントを置くことに不安が過った。
「停泊場は他にもあるのか?奴の・・・ロッシュの船とはどのくらいの距離にある?」
「標的の船はこの近くですよ。ホラ・・・あそこに見える船がその船です」
そういうとフーファンは指を指してロッシュの海賊船をミアとツクヨに教えた。驚いたことにロッシュの船とはそれなりに近い距離感にあり、流石は名の知れた海賊といったところか、その大きさと物騒な装飾は、他の船を圧倒するものがあった。
「こんなに近くで大丈夫なのかい?もし敵側に探知スキルを持った者がいたら・・・」
ロッシュの船を目の当たりにすれば、ツクヨの不安も当然といえるだろう。しかし、二人はさしたる問題ではないといった様子でいる。
「ご安心下さい、術式の設置において我々が組まされているのには理由があるのです」
妖術において術式を破壊されるのが最も痛手となる。それを補うためにエンチャントを行えるシュユーが彼女と組み、装置の隠蔽を施す。隠密の任務を行うのだ、隠匿に向いたクラスの者を差し向けるのは当然の判断だろう。
ただ気をつけなければならないのが、視覚による探知を受けなくなるというだけで、音や臭い、温度や気配などによる探知は受けてしまい、見えないだけで触れることも出来てしまうため、ぶつかったり広範囲に渡る技の効果を受けた際に不自然な現象が視認されて位置が特定されてしまうなどという欠点もある。
要は敵に姿を見られていない状態での先制などで、大きな力を発揮する。また、目眩しなどにより相手の視界から自身の姿を、一時遮断した後のムーブにも効果的で、逃走の際や、体制を立て直すのに重宝する、アサシンのクラスと非常に相性の良い特殊効果である。
「そんな便利なものが・・・。それで?そのロッシュ海賊団に探知が得意なクラスについている者はいるのか?」
シンの危惧する探知系の能力を持つ者が、今回の任務において最も注意を払うべき相手だろう。何かおかしな物音や気配を察知されてスキルを使われたりでもしたら、直ぐに侵入がバレ、ロッシュの元にも連絡がいってしまう。そのような事態だけは何としても避けなければならない。
「勿論、船員の中にはそう言った能力に長けている者もいるだろうが、常日頃から探知をしている訳でもあるまい。何か予兆がなければスキルを使うことはないだろう。一応、フーファンの術式を仕掛けにいく際に相手方の動きと警戒態勢のチェックをしてくる。奴は頭の切れる男だ・・・、何かしらの防衛線を引いていてもおかしくはない」
フーファンの妖術に必要な術式の仕掛けは、必ず一つ以上必要になる。逆に言うのであれば一つだけあれば妖術を発動させることは可能だ。しかし、その妖術の効果や範囲、難解度が術式の個数によって様々に変化してくるのも妖術師のクラスの特徴とも言えるだろう。
多く設置すれば敵に発見されやすく破壊されて弱体化するデメリットもあり、術式の数が減れば妖術の内容が変わり、戦況が変化する。それを見越して敢えて見つかり易い所に仕掛けるなど、考え始めれば果てがないほど奥深く面白い。
「術式の設置はフーファンとシュユーに一任してある。ミアとツクヨは彼らについて行き、重要な術式の護衛をしてもらう。フーファン、今夜の決行時間までには準備出来そうかい?」
「大丈夫です!今回は隠密ということなので、設置する術式の数も少数に留めます。人通りの多い町中や、海上などではかえって目立ってしまいますので、ここはオーソドックスに物を隠すような場所で、目標の船にも近い場所に仕掛けようと思っているですよ」
それを聞いてグレイスは頷き、班を二手に分けて作戦の下準備に取り掛かるよう指示を出していく。班は、術式の設置、調査、護衛、実働班の援護を行うミアとツクヨ、そしてシュユーとフーファンの班。もう一つは、シュユーのエンチャント装備を持ち、実際の動きを確認し、実行するシンとグレイスの班になった。
「よしッ!それじゃぁ設置班は準備に取りかかってくれ。シンとアタシは、装備と侵入経路の確認、それとアンタのスキルがどんな物なのかアタシに見せておくれ。それによってアタシらの行動も変わってくるからね」
一行は席を立ち、任務の成功を誓い合うとそれぞれの場所へと動き出した。
設置班を率いるフーファンは、一行を連れ町中を抜けて行く。始めに訪れたのは町の港にズラリと並ぶ様々な形や武装が施された船が数多く停まる停泊場。船乗りや海賊達の人並みを進んでいき、とある場所に停めてあった何の変哲も無い、よく見かけるような小型の船に辿り着く。
「まずはここに設置するですよ!」
停泊してある目的の船を指差しながら、勢いそのままに歩いて行くフーファン。だれの物かも分からぬ船に、説明もなく進んでいく二人に質問を投げかけるミア。
「この船はなんだ・・・、誰の船なんだ?」
フーファンでは説明にならないと思ったのか、シュユーがミアの質問に答える。
「こちらは我々が前もって用意していた偽造船です。適当なものを見繕い準備しました。任務決行の際にフーファンが術を発動する、妖術の最重要ポイントになります」
妖術師というクラスに疎かったミアとツクヨは、術の仕組みや条件などは分からないが、ロッシュの船も停まっているであろう停泊場に術者であるフーファンと重要ポイントを置くことに不安が過った。
「停泊場は他にもあるのか?奴の・・・ロッシュの船とはどのくらいの距離にある?」
「標的の船はこの近くですよ。ホラ・・・あそこに見える船がその船です」
そういうとフーファンは指を指してロッシュの海賊船をミアとツクヨに教えた。驚いたことにロッシュの船とはそれなりに近い距離感にあり、流石は名の知れた海賊といったところか、その大きさと物騒な装飾は、他の船を圧倒するものがあった。
「こんなに近くで大丈夫なのかい?もし敵側に探知スキルを持った者がいたら・・・」
ロッシュの船を目の当たりにすれば、ツクヨの不安も当然といえるだろう。しかし、二人はさしたる問題ではないといった様子でいる。
「ご安心下さい、術式の設置において我々が組まされているのには理由があるのです」
妖術において術式を破壊されるのが最も痛手となる。それを補うためにエンチャントを行えるシュユーが彼女と組み、装置の隠蔽を施す。隠密の任務を行うのだ、隠匿に向いたクラスの者を差し向けるのは当然の判断だろう。
0
お気に入りに追加
305
あなたにおすすめの小説

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

神速の冒険者〜ステータス素早さ全振りで無双する〜
FREE
ファンタジー
Glavo kaj Magio
通称、【GKM】
これは日本が初めて開発したフルダイブ型のVRMMORPGだ。
世界最大規模の世界、正確な動作、どれを取ってもトップレベルのゲームである。
その中でも圧倒的人気な理由がステータスを自分で決めれるところだ。
この物語の主人公[速水 光]は陸上部のエースだったが車との交通事故により引退を余儀なくされる。
その時このゲームと出会い、ステータスがモノを言うこの世界で【素早さ】に全てのポイントを使うことを決心する…


【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。
アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。
両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。
両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。
テッドには、妹が3人いる。
両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。
このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。
そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。
その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。
両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。
両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…
両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが…
母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。
今日も依頼をこなして、家に帰るんだ!
この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。
お楽しみくださいね!
HOTランキング20位になりました。
皆さん、有り難う御座います。

リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?
あくの
ファンタジー
15になって領地の修道院から王立ディアーヌ学園、通称『学園』に通うことになったリリゼット。
加護細工の家系のドルバック伯爵家の娘として他家の令嬢達と交流開始するも世間知らずのリリゼットは令嬢との会話についていけない。
また姉と婚約者の破天荒な行動からリリゼットも同じなのかと学園の男子生徒が近寄ってくる。
長女気質のダンテス公爵家の長女リーゼはそんなリリゼットの危うさを危惧しており…。
リリゼットは楽しい学園生活を全うできるのか?!

微妙なバフなどもういらないと追放された補助魔法使い、バフ3000倍で敵の肉体を内部から破壊して無双する
こげ丸
ファンタジー
「微妙なバフなどもういらないんだよ!」
そう言われて冒険者パーティーを追放されたフォーレスト。
だが、仲間だと思っていたパーティーメンバーからの仕打ちは、それだけに留まらなかった。
「もうちょっと抵抗頑張んないと……妹を酷い目にあわせちゃうわよ?」
窮地に追い込まれたフォーレスト。
だが、バフの新たな可能性に気付いたその時、復讐はなされた。
こいつら……壊しちゃえば良いだけじゃないか。
これは、絶望の淵からバフの新たな可能性を見いだし、高みを目指すに至った補助魔法使いフォーレストが最強に至るまでの物語。

悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。
向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。
それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない!
しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。
……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。
魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。
木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ!
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる