134 / 1,646
未知のスキル
しおりを挟む
突然の出来事に状況整理が追いつかない一行と、それを知ってか知らずか恥ずかしがりながら立っているヘラルト。それはまるで自分の創作キャラクターを知人に披露するかのような感覚で、そういうものを描いている自分をどう思うのか、そして創作キャラクターへの評価はどうかと、相手の反応に不安と期待で心臓が早鐘を打つ。
「・・・これは・・・?」
そんな彼とは打って変わり、シン達が驚いていたのは作家というクラスでありながら彼が戦闘を行ったということ。正確には彼がというよりは、彼が生み出した生物がモンスターと戦っているということだが、単に彼が話さなかっただけでダブルクラスの保有者だったとでも言うのだろうか。
しかし、仮に彼がダブルクラスであったとしても年齢が若過ぎるという問題が浮上する。プレイヤーキャラクターであれば見た目や年齢は関係ないが、WoFの世界観的にはどのような設定がされているのか、 シン達には知る由もない。
「創作物・・・?これはお前のスキルなのか?」
ミアが言葉を失う二人の代わりにヘラルトに、疑問の根幹となる部分を聞いた。だが彼は、何をそんなに驚くことがあるのかと首を傾げて質問に答える。
「えぇ、そうですけど・・・。その、やっぱり変でしょうか?」
「変・・・ッて、そういう問題じゃ・・・」
シンはツクヨとミアの表情を伺い、何か心当たりはあるかといった意図の視線を送るが、二人とも首を横に振った。そして新たに得られた情報として、彼は作家というクラスが戦えるということに違和感を感じていないということだ。つまりヘラルトにとっては、別段可笑しなことではないという解釈なのである。
「シン、アレを使う時が来たんじゃないかい?」
ツクヨの言葉で忘失していた、あるアイテムの存在を喚び起こした。それはシンが現実世界で白獅から渡されたWoFの世界にあるデータを読み取ることのできる、テュルプ・オーブという黒い球体だった。
自身の意識を集中させ、メニュー欄を視界の中で展開させると、視線を動かしてアイテム欄を開く。そこには確かに白獅から受け取ったテュルプ・オーブの名前があった。まだこちらの世界で使ったことが無かったため、どうなるのかという不安要素もあったが、今まさにその真価を発揮する時と、そのアイテムを使用してみることに。
「ッ・・・!?」
すると、シンの片目の視界が徐々に黒く塗り潰されていく。慌てて顔の前に手を出し、自分の見ている景色を確認しようとしたが、その甲斐むなしく彼の右目の視界は真っ暗になってしまう。だが、直後に視界は元通りについさっきまで見ていた景色が帰ってくると、シンは安心しホッと胸を撫で下ろした。
無論、何も起きなかった訳ではなく、シンが見る右目の視界にはスクリーンのようなものが見えるようになり、接続中や解析中といった文字が浮かび上がる。
《早速何か情報を得たのか?シン》
「これはッ・・・!?」
突然驚き出すシンに一行は何事かと振り向くと、慌てた彼は身体を反転させ視線を遮ると、どうやってその文字に返事をすればいいものかと、右目の前で手をかざして視線をあちこちに移動させてみる。
《落ち着いて言葉を頭の中に思い浮かべるだけでいい。それをこっちが解析する》
シンは言われた通り呼吸を整え、スクリーンに映し出される文字に対し質問を投げかける。
《アンタは何者だ?俺の想像している通りの人物・・・ってことでいいのか?》
まだこのやり取りの相手が何者であるか断定出来ていないシンは、名前を伏せて探りを入れる。何者であれ下手に自分や仲間の情報を開示する訳にはいかないシンには、そうする他ない。
《安心しろ、お前の思っている通りの相手で間違いない。このシステムは俺が創り出したんだから、よく知っているさ。こちらは白獅、何か情報が手に入ったのか?》
《良かった・・・。情報と言っても、そちらが欲しがる情報かどうかは調べてみないと分からないがな。今俺達の前にいる少年、クラスが作家なんだが、自作のキャラクターを生み出して戦闘を行ったんだ。俺達は作家というクラスに戦闘スキルがあるのを知らなかったんだが、そっちデータベースではどうなっている?》
現実世界にいる白獅には、WoFの世界のデータであれば解析することが可能だと言う。ただそれが、シン達のいる世界のデータであるかどうかは分からない。故に解析結果で、作家にそんなスキルはないと出ても、バグによる影響で何かしらの変化が起きている可能性も十分にあり得る。
《分かった、解析してみよう。結果はすぐに出る、少し待っててくれ》
白獅との会話ともメッセージとも少し違うやり取りを終えたシンに、ツクヨがヘラルトのスキルについて何か分かったかを確認する。ミアはシンが言っていたアイテムで何か調べているのを察すると、その間ヘラルトの注意を逸らしてくれていた。
「シン、何か分かったかい?」
「解析に少し時間がかかるみたいだ、もう少し待ってくれ」
解析の結果が出るまでの間、一行はクエストを完了し村に戻ることにした。その道中、彼らは彼らでヘラルトから直接聞き、調べられることは自分達で調べていた。しかし、肝心な情報を得ることは出来ず、ヘラルトはダブルクラスではなかった。
村に到着する頃、白獅から再び連絡が入る。
《待たせたな。こっちで調べてみた結果だが・・・。作家にそんなスキルはないようだ。何か別のクラスで出現させていたんじゃないのか?召喚士だとか、妖術士とか・・・》
《いや・・・それが彼、ダブルクラスではないと言うんだ。別のクラスのスキルという線は消えた。これは・・・》
シンと白獅は、ある同じ結論へと至った。しかしそう考える他無く、それが最も疑問の念を晴らすのには、これ以上ないほどしっくり来る答えだった。
《つまり彼は、バグや異変による何かの影響を受けている可能性が高い・・・。早速掴んだチャンスだ、彼の過去の体験や経歴を出来るだけ調べて欲しい。お前達のプラスになることもあるかもしれないしな》
聖都を出て、まさかこんなすぐに異変と出会うことになろうとは、シン達は勿論、白獅も想定外のことだった。しかし、異変との遭遇は何も悪いことばかりではない。自分達の身に起きていること、知らないことを知れるということは、この世界で生存していく上で大きく繋がることになる。
「・・・これは・・・?」
そんな彼とは打って変わり、シン達が驚いていたのは作家というクラスでありながら彼が戦闘を行ったということ。正確には彼がというよりは、彼が生み出した生物がモンスターと戦っているということだが、単に彼が話さなかっただけでダブルクラスの保有者だったとでも言うのだろうか。
しかし、仮に彼がダブルクラスであったとしても年齢が若過ぎるという問題が浮上する。プレイヤーキャラクターであれば見た目や年齢は関係ないが、WoFの世界観的にはどのような設定がされているのか、 シン達には知る由もない。
「創作物・・・?これはお前のスキルなのか?」
ミアが言葉を失う二人の代わりにヘラルトに、疑問の根幹となる部分を聞いた。だが彼は、何をそんなに驚くことがあるのかと首を傾げて質問に答える。
「えぇ、そうですけど・・・。その、やっぱり変でしょうか?」
「変・・・ッて、そういう問題じゃ・・・」
シンはツクヨとミアの表情を伺い、何か心当たりはあるかといった意図の視線を送るが、二人とも首を横に振った。そして新たに得られた情報として、彼は作家というクラスが戦えるということに違和感を感じていないということだ。つまりヘラルトにとっては、別段可笑しなことではないという解釈なのである。
「シン、アレを使う時が来たんじゃないかい?」
ツクヨの言葉で忘失していた、あるアイテムの存在を喚び起こした。それはシンが現実世界で白獅から渡されたWoFの世界にあるデータを読み取ることのできる、テュルプ・オーブという黒い球体だった。
自身の意識を集中させ、メニュー欄を視界の中で展開させると、視線を動かしてアイテム欄を開く。そこには確かに白獅から受け取ったテュルプ・オーブの名前があった。まだこちらの世界で使ったことが無かったため、どうなるのかという不安要素もあったが、今まさにその真価を発揮する時と、そのアイテムを使用してみることに。
「ッ・・・!?」
すると、シンの片目の視界が徐々に黒く塗り潰されていく。慌てて顔の前に手を出し、自分の見ている景色を確認しようとしたが、その甲斐むなしく彼の右目の視界は真っ暗になってしまう。だが、直後に視界は元通りについさっきまで見ていた景色が帰ってくると、シンは安心しホッと胸を撫で下ろした。
無論、何も起きなかった訳ではなく、シンが見る右目の視界にはスクリーンのようなものが見えるようになり、接続中や解析中といった文字が浮かび上がる。
《早速何か情報を得たのか?シン》
「これはッ・・・!?」
突然驚き出すシンに一行は何事かと振り向くと、慌てた彼は身体を反転させ視線を遮ると、どうやってその文字に返事をすればいいものかと、右目の前で手をかざして視線をあちこちに移動させてみる。
《落ち着いて言葉を頭の中に思い浮かべるだけでいい。それをこっちが解析する》
シンは言われた通り呼吸を整え、スクリーンに映し出される文字に対し質問を投げかける。
《アンタは何者だ?俺の想像している通りの人物・・・ってことでいいのか?》
まだこのやり取りの相手が何者であるか断定出来ていないシンは、名前を伏せて探りを入れる。何者であれ下手に自分や仲間の情報を開示する訳にはいかないシンには、そうする他ない。
《安心しろ、お前の思っている通りの相手で間違いない。このシステムは俺が創り出したんだから、よく知っているさ。こちらは白獅、何か情報が手に入ったのか?》
《良かった・・・。情報と言っても、そちらが欲しがる情報かどうかは調べてみないと分からないがな。今俺達の前にいる少年、クラスが作家なんだが、自作のキャラクターを生み出して戦闘を行ったんだ。俺達は作家というクラスに戦闘スキルがあるのを知らなかったんだが、そっちデータベースではどうなっている?》
現実世界にいる白獅には、WoFの世界のデータであれば解析することが可能だと言う。ただそれが、シン達のいる世界のデータであるかどうかは分からない。故に解析結果で、作家にそんなスキルはないと出ても、バグによる影響で何かしらの変化が起きている可能性も十分にあり得る。
《分かった、解析してみよう。結果はすぐに出る、少し待っててくれ》
白獅との会話ともメッセージとも少し違うやり取りを終えたシンに、ツクヨがヘラルトのスキルについて何か分かったかを確認する。ミアはシンが言っていたアイテムで何か調べているのを察すると、その間ヘラルトの注意を逸らしてくれていた。
「シン、何か分かったかい?」
「解析に少し時間がかかるみたいだ、もう少し待ってくれ」
解析の結果が出るまでの間、一行はクエストを完了し村に戻ることにした。その道中、彼らは彼らでヘラルトから直接聞き、調べられることは自分達で調べていた。しかし、肝心な情報を得ることは出来ず、ヘラルトはダブルクラスではなかった。
村に到着する頃、白獅から再び連絡が入る。
《待たせたな。こっちで調べてみた結果だが・・・。作家にそんなスキルはないようだ。何か別のクラスで出現させていたんじゃないのか?召喚士だとか、妖術士とか・・・》
《いや・・・それが彼、ダブルクラスではないと言うんだ。別のクラスのスキルという線は消えた。これは・・・》
シンと白獅は、ある同じ結論へと至った。しかしそう考える他無く、それが最も疑問の念を晴らすのには、これ以上ないほどしっくり来る答えだった。
《つまり彼は、バグや異変による何かの影響を受けている可能性が高い・・・。早速掴んだチャンスだ、彼の過去の体験や経歴を出来るだけ調べて欲しい。お前達のプラスになることもあるかもしれないしな》
聖都を出て、まさかこんなすぐに異変と出会うことになろうとは、シン達は勿論、白獅も想定外のことだった。しかし、異変との遭遇は何も悪いことばかりではない。自分達の身に起きていること、知らないことを知れるということは、この世界で生存していく上で大きく繋がることになる。
0
お気に入りに追加
297
あなたにおすすめの小説
Another Of Life Game~僕のもう一つの物語~
神城弥生
ファンタジー
なろう小説サイトにて「HJ文庫2018」一次審査突破しました!!
皆様のおかげでなろうサイトで120万pv達成しました!
ありがとうございます!
VRMMOを造った山下グループの最高傑作「Another Of Life Game」。
山下哲二が、死ぬ間際に完成させたこのゲームに込めた思いとは・・・?
それでは皆様、AOLの世界をお楽しみ下さい!
毎週土曜日更新(偶に休み)
【ヤベェ】異世界転移したった【助けてwww】
一樹
ファンタジー
色々あって、転移後追放されてしまった主人公。
追放後に、持ち物がチート化していることに気づく。
無事、元の世界と連絡をとる事に成功する。
そして、始まったのは、どこかで見た事のある、【あるある展開】のオンパレード!
異世界転移珍道中、掲示板実況始まり始まり。
【諸注意】
以前投稿した同名の短編の連載版になります。
連載は不定期。むしろ途中で止まる可能性、エタる可能性がとても高いです。
なんでも大丈夫な方向けです。
小説の形をしていないので、読む人を選びます。
以上の内容を踏まえた上で閲覧をお願いします。
disりに見えてしまう表現があります。
以上の点から気分を害されても責任は負えません。
閲覧は自己責任でお願いします。
小説家になろう、pixivでも投稿しています。
転移先は勇者と呼ばれた男のもとだった。
桜花龍炎舞
ファンタジー
人魔戦争。
それは魔人と人族の戦争。
その規模は計り知れず、2年の時を経て終戦。
勝敗は人族に旗が上がったものの、人族にも魔人にも深い心の傷を残した。
それを良しとせず立ち上がったのは魔王を打ち果たした勇者である。
勇者は終戦後、すぐに国を建国。
そして見事、平和協定条約を結びつけ、法をつくる事で世界を平和へと導いた。
それから25年後。
1人の子供が異世界に降り立つ。
S級冒険者の子どもが進む道
干支猫
ファンタジー
【12/26完結】
とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。
父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。
そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。
その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。
魔王とはいったい?
※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。
黙示録戦争後に残された世界でたった一人冷凍睡眠から蘇ったオレが超科学のチート人工知能の超美女とともに文芸復興を目指す物語。
あっちゅまん
ファンタジー
黙示録の最終戦争は実際に起きてしまった……そして、人類は一度滅亡した。
だが、もう一度世界は創生され、新しい魔法文明が栄えた世界となっていた。
ところが、そんな中、冷凍睡眠されていたオレはなんと蘇生されてしまったのだ。
オレを目覚めさせた超絶ボディの超科学の人工頭脳の超美女と、オレの飼っていた粘菌が超進化したメイドと、同じく飼っていたペットの超進化したフクロウの紳士と、コレクションのフィギュアが生命を宿した双子の女子高生アンドロイドとともに、魔力がないのに元の世界の科学力を使って、マンガ・アニメを蘇らせ、この世界でも流行させるために頑張る話。
そして、そのついでに、街をどんどん発展させて建国して、いつのまにか世界にめちゃくちゃ影響力のある存在になっていく物語です。
【黙示録戦争後に残された世界観及び設定集】も別にアップしています。
よければ参考にしてください。
やっと買ったマイホームの半分だけ異世界に転移してしまった
ぽてゆき
ファンタジー
涼坂直樹は可愛い妻と2人の子供のため、頑張って働いた結果ついにマイホームを手に入れた。
しかし、まさかその半分が異世界に転移してしまうとは……。
リビングの窓を開けて外に飛び出せば、そこはもう魔法やダンジョンが存在するファンタジーな異世界。
現代のごくありふれた4人(+猫1匹)家族と、異世界の住人との交流を描いたハートフルアドベンチャー物語!
VRMMO~鍛治師で最強になってみた!?
ナイム
ファンタジー
ある日、友人から進められ最新フルダイブゲーム『アンリミテッド・ワールド』を始めた進藤 渚
そんな彼が友人たちや、ゲーム内で知り合った人たちと協力しながら自由気ままに過ごしていると…気がつくと最強と呼ばれるうちの一人になっていた!?
平凡冒険者のスローライフ
上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。
平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。
果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか……
ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる