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憎悪滾る禁忌のクラス
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瓦礫をどかしながら、吹き飛ばされていたツクヨが戻ってくる。
そして、彼の眼前に、血を流し倒れるシャルロットの姿が映ると、現実世界で見た、この世のものとは思えないほど凄惨な場面が、フラッシュバックした。
「・・・あ・・・ああぁッ・・・」
思い起こされるは、二人と過ごした思い出の言葉と光景。
「十六夜です、よろしくお願いします」 「趣味ですか? ・・・えっと・・・映画とか読書、とか?」 「あんまりこういうの、誘われたことなくて・・・」 「あそこで出てきたキャラは、前作にも出ていてッ!」 「今日は、たのしかったです・・・それと、ありがとうございました」 「あぁ・・・バレちゃいました・・・?」 「それッ! 私もやってるんです!」 「一緒に・・・やりませんか?」 「本当ですか!? 嬉しいです!」 「はい・・・よろしくお願いします」
「おはよう・・・」 「いってらっしゃい」 「おかえりなさい」 「おやすみ」「なんか夢みたい・・・、好きなものを一緒にできるなんて」 「こういうのも良いなって・・・最近良く思うの」
「女の子だって・・・。そんなに泣いて、子供みたいよ?お父さん」 「ねぇ聞いて!? 今日初めて喋ったのよ」 「私の勝ちねッ! ふふっ」 「すごい! 立ってる! ねぇ見て!」 「お友達できるかしらね?」
「一生で一度の物なんだもの、ちょっとくらい奮発しても良いんじゃない?」 「緊張しなくても大丈夫よ、みんな一緒だもん」 「ねぇ、もう友達できたんだって」 「よかった、学校楽しいみたい。 いつも嬉しそうに話してくれるわ」 「好きな子ができたそうよ。 ・・・やめてよ?変なこと言うの!」 「運動会の写真、いっぱい撮ってきたから!」 「あの子、歌の才能あるかも」 「仲良かった子と、別の学校になっちゃうんですって・・・」 「あっという間だったね・・・」
「可愛い制服! よく似合ってるわ」 「運動部に入ってくれて良かったわ・・・、第二の私になっちゃうところだった」 「反抗期が来なくて助かった・・・。 それともこれから?」 「蜜月もやるようになったの。 あとは貴方だけよ?」 「貴方のために、作っておいたから。 いつか一緒に遊べるように」
一緒に遊べるように・・・
そして、ツクヨはあの晩の光景を思い出す。
月明かりの中、割れた窓から入る風がカーテンを、その姿を映しているかのような揺らし、倒れる十六夜を優しく撫でる。
蜜月や十六夜が、どんなに怖い思いをしたか・・・。
どんなことを思っていたのか、ツクヨには分からないが、彼はあの日からずっと二人に対し、呪文でも唱えているかのように謝罪の言葉や後悔の念を並べ連ねていた。
もっと早く帰っていれば、もっと永く一緒の時間を過ごせていたら、もっと二人に思いを伝えていれば・・・。
「助けて! お父さん!」 「怖い・・・痛い・・・」 「苦しいよ・・・」
「早く帰ってきて! 貴方!」「家を・・・蜜月を守らないと・・・!」 「どうしてこんな目に・・・」 「ごめんなさい・・・月詠さん、私・・・」
ツクヨの負の感情が、彼の中にある二人の姿を黒く染め上げていく。
「お父さんが早く帰ってきてくれたら、私たちこんな怖い思いをしなくて済んだのに・・・。 お父さんは私たちのこと嫌いなの? だからいつも遅いんでしょ・・・。 お父さんにとって私たちは、その程度の存在だったんだね・・・。 私たちも、もう待つのは疲れたから・・・。 さよなら・・・」
「家族の為、家族の為って・・・いつもそうやって私に押し付けて。 こっちの苦労も知らないで、貴方は外で好き放題できて羨ましいわね。 私に近づいたのも世間体や身の回りの世話をさせるためなんじゃないの? 家にいても何もしないし、もうウンザリよ・・・。 私の人生を返して・・・」
彼の作り出した虚像の二人が、辛辣な言葉をツクヨに吐き出し、それはまるで二人が内心彼に対して日頃思っていたのではないかと、錯覚させる。
自分の出来なかったこと、しなかったことに自身を苦しめ上手く呼吸ができなくなってしまうツクヨ。
「はぁッ・・・! はぁッ・・・!」
胸を両手で押さえつけながら苦しみだすツクヨを、正気に戻そうと声をかけるシンだったが、彼の耳には届かない。
「あぁあッ・・・! あああぁぁぁッ!!」
それは凡そ人の声とは思えぬ、怪物の唸り声のような声色で、彼は絶叫する。
私・・・、俺ではない。
全ては二人をあんな姿に変えた、犯人が悪い。
人の幸せを、愛するものを奪い去っていった犯人が全て・・・。
憎い・・・許せない・・・殺すなんて生温い・・・地獄のような苦しみを味合わせなければならない。
彼の二人に対する謝罪や後悔の念とは、彼の表の部分であり、心の奥深くに根付く彼の本当の感情とは、二人をあんな姿に変えた犯人に対する、ドス黒い憎悪の怒りそのものだった。
シャルロットが血を流し倒れる姿が引き金となり、彼の憎悪の怒りを呼び覚まし、赤黒いオーラがツクヨの周りを渦巻くと、まるでナーゲルの変化の時と同じように、容姿がやや筋肉質となり、その顔は怒りに満ち、人のそれではなかった。
「がぁぁぁあああああッ!!」
身悶えしていた腕を解き放ち、赤黒いオーラを爆風のように辺りへ撒き散らすと、先程までとは別次元の速さと力で、シュトラールへ襲いかかる。
「何かと思えば・・・。 お前に隠された謎のクラスとは、理性を失う獣と化す狂戦士、バーサーカーであったか。 自ら思考を捨てるなど愚の骨頂ッ! 最大の武器を捨てたお前に、最早臆するものなど一ミリも無いッ!」
飛びかかるツクヨの一撃を躱し、強烈な拳を腹に入れると、回し蹴りでツクヨの顎をかちあげる。
上空に打ち上げられた彼に、シュトラールが手を伸ばすと、ツクヨの周りを無数の光の剣が囲い、握りつぶすようにその手を閉じると、剣はツクヨへ向かって集結する。
しかし、なんとツクヨは空中で身を翻し剣を躱すと、それを掴み取り、次々にシュトラールへ投げつけていく。
「ッ・・・!!」
思わぬ反撃に、焦りの表情を浮かべるシュトラール。
着地を果たしたツクヨが、最後に手にした光の剣を振りかざし、斬りかかる。
瞬時にツクヨの行動を悟ったシュトラールは、身体を横にずらして避けようとするが、ツクヨは剣を逆手に持ち替えて、彼が避けた先へと投げつける。
ピタッと止まって投げつけられた剣を避けるシュトラールに、ツクヨは数回組手を交わすも、力負けしたシュトラールがそれを嫌がり距離を取る。
「獣の分際でッ・・・!」
ツクヨは投げつけた剣を引き抜くと、驚くべき行動をとった。
「あれはッ・・・!」
剣先を地に滑らせ、勢いよく振り上げると、斬撃が地を走りシュトラールへと向かう。
「シャァァァッ!!」
それは、冷静にシュトラールと対峙していた時に彼が放った剣技、地走りだった。
「馬鹿なッ・・・! バーサーカーが剣技を使うだとッ!? 」
これはシンにとっても驚くべきことで、WoFのバーサーカーというクラスは、それこそ単純な武器であれば振り回すことくらいなら可能ではあるが、弓や銃など繊細な武器は扱えない。
そして何より、バーサーカーは魔力を用いたスキルを使用できない。
それなのに今ツクヨは、自らの剣技を、理性を失った状態で放っていたのだ。
「・・・まさかッ・・・!」
シンは急ぎツクヨのステータス、クラスの部分の表示を確認する。
そこには、一つは剣士のクラスが、もう一つのクラス欄は激しいノイズを走らせながら薄っすらと、その文字を浮かび上がらせていく。
「・・・デスト・・・ロイヤー・・・」
彼のクラス項目に表れたのは、Destroyer・・・破壊者という文字だった。
そして、彼の眼前に、血を流し倒れるシャルロットの姿が映ると、現実世界で見た、この世のものとは思えないほど凄惨な場面が、フラッシュバックした。
「・・・あ・・・ああぁッ・・・」
思い起こされるは、二人と過ごした思い出の言葉と光景。
「十六夜です、よろしくお願いします」 「趣味ですか? ・・・えっと・・・映画とか読書、とか?」 「あんまりこういうの、誘われたことなくて・・・」 「あそこで出てきたキャラは、前作にも出ていてッ!」 「今日は、たのしかったです・・・それと、ありがとうございました」 「あぁ・・・バレちゃいました・・・?」 「それッ! 私もやってるんです!」 「一緒に・・・やりませんか?」 「本当ですか!? 嬉しいです!」 「はい・・・よろしくお願いします」
「おはよう・・・」 「いってらっしゃい」 「おかえりなさい」 「おやすみ」「なんか夢みたい・・・、好きなものを一緒にできるなんて」 「こういうのも良いなって・・・最近良く思うの」
「女の子だって・・・。そんなに泣いて、子供みたいよ?お父さん」 「ねぇ聞いて!? 今日初めて喋ったのよ」 「私の勝ちねッ! ふふっ」 「すごい! 立ってる! ねぇ見て!」 「お友達できるかしらね?」
「一生で一度の物なんだもの、ちょっとくらい奮発しても良いんじゃない?」 「緊張しなくても大丈夫よ、みんな一緒だもん」 「ねぇ、もう友達できたんだって」 「よかった、学校楽しいみたい。 いつも嬉しそうに話してくれるわ」 「好きな子ができたそうよ。 ・・・やめてよ?変なこと言うの!」 「運動会の写真、いっぱい撮ってきたから!」 「あの子、歌の才能あるかも」 「仲良かった子と、別の学校になっちゃうんですって・・・」 「あっという間だったね・・・」
「可愛い制服! よく似合ってるわ」 「運動部に入ってくれて良かったわ・・・、第二の私になっちゃうところだった」 「反抗期が来なくて助かった・・・。 それともこれから?」 「蜜月もやるようになったの。 あとは貴方だけよ?」 「貴方のために、作っておいたから。 いつか一緒に遊べるように」
一緒に遊べるように・・・
そして、ツクヨはあの晩の光景を思い出す。
月明かりの中、割れた窓から入る風がカーテンを、その姿を映しているかのような揺らし、倒れる十六夜を優しく撫でる。
蜜月や十六夜が、どんなに怖い思いをしたか・・・。
どんなことを思っていたのか、ツクヨには分からないが、彼はあの日からずっと二人に対し、呪文でも唱えているかのように謝罪の言葉や後悔の念を並べ連ねていた。
もっと早く帰っていれば、もっと永く一緒の時間を過ごせていたら、もっと二人に思いを伝えていれば・・・。
「助けて! お父さん!」 「怖い・・・痛い・・・」 「苦しいよ・・・」
「早く帰ってきて! 貴方!」「家を・・・蜜月を守らないと・・・!」 「どうしてこんな目に・・・」 「ごめんなさい・・・月詠さん、私・・・」
ツクヨの負の感情が、彼の中にある二人の姿を黒く染め上げていく。
「お父さんが早く帰ってきてくれたら、私たちこんな怖い思いをしなくて済んだのに・・・。 お父さんは私たちのこと嫌いなの? だからいつも遅いんでしょ・・・。 お父さんにとって私たちは、その程度の存在だったんだね・・・。 私たちも、もう待つのは疲れたから・・・。 さよなら・・・」
「家族の為、家族の為って・・・いつもそうやって私に押し付けて。 こっちの苦労も知らないで、貴方は外で好き放題できて羨ましいわね。 私に近づいたのも世間体や身の回りの世話をさせるためなんじゃないの? 家にいても何もしないし、もうウンザリよ・・・。 私の人生を返して・・・」
彼の作り出した虚像の二人が、辛辣な言葉をツクヨに吐き出し、それはまるで二人が内心彼に対して日頃思っていたのではないかと、錯覚させる。
自分の出来なかったこと、しなかったことに自身を苦しめ上手く呼吸ができなくなってしまうツクヨ。
「はぁッ・・・! はぁッ・・・!」
胸を両手で押さえつけながら苦しみだすツクヨを、正気に戻そうと声をかけるシンだったが、彼の耳には届かない。
「あぁあッ・・・! あああぁぁぁッ!!」
それは凡そ人の声とは思えぬ、怪物の唸り声のような声色で、彼は絶叫する。
私・・・、俺ではない。
全ては二人をあんな姿に変えた、犯人が悪い。
人の幸せを、愛するものを奪い去っていった犯人が全て・・・。
憎い・・・許せない・・・殺すなんて生温い・・・地獄のような苦しみを味合わせなければならない。
彼の二人に対する謝罪や後悔の念とは、彼の表の部分であり、心の奥深くに根付く彼の本当の感情とは、二人をあんな姿に変えた犯人に対する、ドス黒い憎悪の怒りそのものだった。
シャルロットが血を流し倒れる姿が引き金となり、彼の憎悪の怒りを呼び覚まし、赤黒いオーラがツクヨの周りを渦巻くと、まるでナーゲルの変化の時と同じように、容姿がやや筋肉質となり、その顔は怒りに満ち、人のそれではなかった。
「がぁぁぁあああああッ!!」
身悶えしていた腕を解き放ち、赤黒いオーラを爆風のように辺りへ撒き散らすと、先程までとは別次元の速さと力で、シュトラールへ襲いかかる。
「何かと思えば・・・。 お前に隠された謎のクラスとは、理性を失う獣と化す狂戦士、バーサーカーであったか。 自ら思考を捨てるなど愚の骨頂ッ! 最大の武器を捨てたお前に、最早臆するものなど一ミリも無いッ!」
飛びかかるツクヨの一撃を躱し、強烈な拳を腹に入れると、回し蹴りでツクヨの顎をかちあげる。
上空に打ち上げられた彼に、シュトラールが手を伸ばすと、ツクヨの周りを無数の光の剣が囲い、握りつぶすようにその手を閉じると、剣はツクヨへ向かって集結する。
しかし、なんとツクヨは空中で身を翻し剣を躱すと、それを掴み取り、次々にシュトラールへ投げつけていく。
「ッ・・・!!」
思わぬ反撃に、焦りの表情を浮かべるシュトラール。
着地を果たしたツクヨが、最後に手にした光の剣を振りかざし、斬りかかる。
瞬時にツクヨの行動を悟ったシュトラールは、身体を横にずらして避けようとするが、ツクヨは剣を逆手に持ち替えて、彼が避けた先へと投げつける。
ピタッと止まって投げつけられた剣を避けるシュトラールに、ツクヨは数回組手を交わすも、力負けしたシュトラールがそれを嫌がり距離を取る。
「獣の分際でッ・・・!」
ツクヨは投げつけた剣を引き抜くと、驚くべき行動をとった。
「あれはッ・・・!」
剣先を地に滑らせ、勢いよく振り上げると、斬撃が地を走りシュトラールへと向かう。
「シャァァァッ!!」
それは、冷静にシュトラールと対峙していた時に彼が放った剣技、地走りだった。
「馬鹿なッ・・・! バーサーカーが剣技を使うだとッ!? 」
これはシンにとっても驚くべきことで、WoFのバーサーカーというクラスは、それこそ単純な武器であれば振り回すことくらいなら可能ではあるが、弓や銃など繊細な武器は扱えない。
そして何より、バーサーカーは魔力を用いたスキルを使用できない。
それなのに今ツクヨは、自らの剣技を、理性を失った状態で放っていたのだ。
「・・・まさかッ・・・!」
シンは急ぎツクヨのステータス、クラスの部分の表示を確認する。
そこには、一つは剣士のクラスが、もう一つのクラス欄は激しいノイズを走らせながら薄っすらと、その文字を浮かび上がらせていく。
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