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運命は彼らの未来と共に
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シュトラールが腕を上げると、彼の周りに一本また一本と光の剣が、次々に生成されていく。
「お前の最期は、戦意喪失か? 他の者達は最期まで足掻いていたというのに・・・」
「ッ・・・」
彼の言葉に、現状では何も太刀打ちする術が思い浮かばないツクヨは、自身の無力さとどうしようもできない悔しさに、言い返す言葉も無ければ、顔すらまともに見ることが出来なくなる。
「残念だ・・・。 だが、万全を期して私はお前には近づかない。 ・・・もう、そんな気も起こせないだろうがな・・・」
上げた腕をツクヨに向かって振り下ろすと、無数の光の剣はツクヨにその剣先を突き刺さんとばかりに、我先にと飛んで行く。
剣を握っているものの、動く気配のないツクヨに、まもなく光の剣が突き刺さろうかとした、その時・・・。
彼の前に飛んできた何かが、次々に光の剣を弾き落とす。
「・・・あの程度で終わりだとは、思っていなかったさ」
ツクヨの前に現れた男は、その長い獲物をクルクルと回し、まだその闘志が燃え尽きていない様子を見せつける。
「ならばその期待に応えなくては、貴方への侮辱となってしまうな・・・」
男は振り返り、彼の失われた士気を取り戻す。
「ツクヨ殿、まだ諦めるには些か早いのではありませんか?」
ツクヨは男の顔を見て呆気にとられると同時に、その頼もしい戦力に折れた膝を立て直す。
「貴方は・・・イデアールさんッ! ・・・ご無事だったのですか?」
ツクヨ達がここに到着した時には、ひどい重傷で吹き飛ばされてきていたが、外傷からの出血は止まっており、その傷も小さくなりつつあった。
「万全・・・とまではいきませんが、ある程度戦えるまでには回復しました。 シャルロットのお陰です」
「そうだッ! 彼女は? シャルロットは今何を・・・」
イデアールがここにいるのなら、シャルロットは一体今何をしているのか、当然の疑問であった。
「シャルロットは今、ミアの手当てをしています。 それと、しばしの間シュトラール殿の相手は俺が引き受けます。 その隙に貴方はシンをシャルロットの元へ・・・。卑怯だのと言ってはいられません、少しでも多くの戦力で協力し合わなければ彼に太刀打ちすることなど不可能でしょう・・・」
同じ国で彼と共に聖騎士として、人々を守ってきたイデアールならば、シュトラールの得体の知れない強さについて、何か知っているのではないかと考えたツクヨは、彼にシュトラールの秘密について聞いてみた。
「彼の・・・シュトラールについて何か知りませんか? 単純に身体的な強さもあるが、何かこう・・・妙なことがいくつかあるのですが・・・」
ツクヨの質問に、イデアールは少し困った表情で彼に返す。
「長く共に過ごしてきましたが、彼の戦闘を見る機会はかなり限られていました・・・。 それに、我々隊長クラスの者達と同じように、光のスキルを使うということ以外に、これといって変わった様子を見たことがありません・・・」
短にいた者にも、自らの能力を明かすことなく過ごしていたというシュトラールの徹底ぶりから、彼のしたたかさが伺える。
「そうですか・・・、それともう一つだけ・・・」
ツクヨは辺りを見渡し、シャルロットの方をチラッと見ると、声を少し小さくして話した。
「朝孝さんは・・・? 彼はどうなっているのです?」
戦力のことを考えるのであれば、シュトラールをあそこまで疲弊させた朝孝の復活が、ツクヨ達に取れる最大の切り札になると、彼は踏んでいた。
しかし、そんな希望は無いのだと、イデアールの表情を見るだけで読み取れた。
「・・・朝孝殿は・・・、俺が来た時には既にあの状態でした・・・。 あれから彼が動く様子はありません・・・」
「そう・・・ですか・・・。 彼の力が借りられないのなら、今出来ることをするしかない・・・。 シン君を救出します。 彼の足止めをお願いします」
自ら言い出したことではあるが、そのあまりにも無謀とも取れる難しい役に、冷や汗を流すと共に、思わず笑みがこぼれてしまうイデアール。
「本当に救出するだけの時間しか、稼げないかもしれませんがね・・・」
彼の不安を見せまいとする表情につられて、ツクヨも思わず笑みを浮かべる。
「十分です・・・。 貴方が来なければ、私は希望を見ずにあの時やられていたでしょうからね・・・」
それだけを伝えると、ツクヨは息を呑み、そしてシンの倒れる場所へと走り出す。
イデアールは、シュトラールから目を離さずに、緊張を保っていたが、そんな彼の姿勢とは裏腹にシュトラールは、シンの救出には目もくれなかった。
「・・・見逃してくれるのですか・・・?」
「見逃す? フッ・・・、残念ながらそんな気は毛頭無い。 遅かれ早かれ秘密を知った君達には、ここで消えてもらう」
シンの元までたどり着いたツクヨが、彼を起こし肩を貸す。
「シン君ッ・・・! しっかりするんだッ! 私達が生き残る術は、彼らの未来を紡ぐことでしか叶わないッ!!」
ツクヨの呼びかけに、あれだけのダメージを受けたシンだったが、意識を取り戻し、彼は思いもよらぬ事を話し出した。
「・・・やッ・・・奴は・・・、聖・・・騎士ッ・・・だけじゃ・・・ないッ・・・」
「・・・・・え?」
「シュト・・・ラールは・・・、ダブル・・・クラスだ・・・」
「お前の最期は、戦意喪失か? 他の者達は最期まで足掻いていたというのに・・・」
「ッ・・・」
彼の言葉に、現状では何も太刀打ちする術が思い浮かばないツクヨは、自身の無力さとどうしようもできない悔しさに、言い返す言葉も無ければ、顔すらまともに見ることが出来なくなる。
「残念だ・・・。 だが、万全を期して私はお前には近づかない。 ・・・もう、そんな気も起こせないだろうがな・・・」
上げた腕をツクヨに向かって振り下ろすと、無数の光の剣はツクヨにその剣先を突き刺さんとばかりに、我先にと飛んで行く。
剣を握っているものの、動く気配のないツクヨに、まもなく光の剣が突き刺さろうかとした、その時・・・。
彼の前に飛んできた何かが、次々に光の剣を弾き落とす。
「・・・あの程度で終わりだとは、思っていなかったさ」
ツクヨの前に現れた男は、その長い獲物をクルクルと回し、まだその闘志が燃え尽きていない様子を見せつける。
「ならばその期待に応えなくては、貴方への侮辱となってしまうな・・・」
男は振り返り、彼の失われた士気を取り戻す。
「ツクヨ殿、まだ諦めるには些か早いのではありませんか?」
ツクヨは男の顔を見て呆気にとられると同時に、その頼もしい戦力に折れた膝を立て直す。
「貴方は・・・イデアールさんッ! ・・・ご無事だったのですか?」
ツクヨ達がここに到着した時には、ひどい重傷で吹き飛ばされてきていたが、外傷からの出血は止まっており、その傷も小さくなりつつあった。
「万全・・・とまではいきませんが、ある程度戦えるまでには回復しました。 シャルロットのお陰です」
「そうだッ! 彼女は? シャルロットは今何を・・・」
イデアールがここにいるのなら、シャルロットは一体今何をしているのか、当然の疑問であった。
「シャルロットは今、ミアの手当てをしています。 それと、しばしの間シュトラール殿の相手は俺が引き受けます。 その隙に貴方はシンをシャルロットの元へ・・・。卑怯だのと言ってはいられません、少しでも多くの戦力で協力し合わなければ彼に太刀打ちすることなど不可能でしょう・・・」
同じ国で彼と共に聖騎士として、人々を守ってきたイデアールならば、シュトラールの得体の知れない強さについて、何か知っているのではないかと考えたツクヨは、彼にシュトラールの秘密について聞いてみた。
「彼の・・・シュトラールについて何か知りませんか? 単純に身体的な強さもあるが、何かこう・・・妙なことがいくつかあるのですが・・・」
ツクヨの質問に、イデアールは少し困った表情で彼に返す。
「長く共に過ごしてきましたが、彼の戦闘を見る機会はかなり限られていました・・・。 それに、我々隊長クラスの者達と同じように、光のスキルを使うということ以外に、これといって変わった様子を見たことがありません・・・」
短にいた者にも、自らの能力を明かすことなく過ごしていたというシュトラールの徹底ぶりから、彼のしたたかさが伺える。
「そうですか・・・、それともう一つだけ・・・」
ツクヨは辺りを見渡し、シャルロットの方をチラッと見ると、声を少し小さくして話した。
「朝孝さんは・・・? 彼はどうなっているのです?」
戦力のことを考えるのであれば、シュトラールをあそこまで疲弊させた朝孝の復活が、ツクヨ達に取れる最大の切り札になると、彼は踏んでいた。
しかし、そんな希望は無いのだと、イデアールの表情を見るだけで読み取れた。
「・・・朝孝殿は・・・、俺が来た時には既にあの状態でした・・・。 あれから彼が動く様子はありません・・・」
「そう・・・ですか・・・。 彼の力が借りられないのなら、今出来ることをするしかない・・・。 シン君を救出します。 彼の足止めをお願いします」
自ら言い出したことではあるが、そのあまりにも無謀とも取れる難しい役に、冷や汗を流すと共に、思わず笑みがこぼれてしまうイデアール。
「本当に救出するだけの時間しか、稼げないかもしれませんがね・・・」
彼の不安を見せまいとする表情につられて、ツクヨも思わず笑みを浮かべる。
「十分です・・・。 貴方が来なければ、私は希望を見ずにあの時やられていたでしょうからね・・・」
それだけを伝えると、ツクヨは息を呑み、そしてシンの倒れる場所へと走り出す。
イデアールは、シュトラールから目を離さずに、緊張を保っていたが、そんな彼の姿勢とは裏腹にシュトラールは、シンの救出には目もくれなかった。
「・・・見逃してくれるのですか・・・?」
「見逃す? フッ・・・、残念ながらそんな気は毛頭無い。 遅かれ早かれ秘密を知った君達には、ここで消えてもらう」
シンの元までたどり着いたツクヨが、彼を起こし肩を貸す。
「シン君ッ・・・! しっかりするんだッ! 私達が生き残る術は、彼らの未来を紡ぐことでしか叶わないッ!!」
ツクヨの呼びかけに、あれだけのダメージを受けたシンだったが、意識を取り戻し、彼は思いもよらぬ事を話し出した。
「・・・やッ・・・奴は・・・、聖・・・騎士ッ・・・だけじゃ・・・ないッ・・・」
「・・・・・え?」
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