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地を駆ける斬撃の円舞
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シュトラール以外の者達は、突然の出来事に言葉を失うと、ただシンが倒れ伏す光景を見守るしか出来なかった。
「・・・シン・・・君?」
脳を介せず、ただ口から漏れ出るようにツクヨが、倒れるシンに声をかけるが、無論それに答えるそぶりは無く、ピクリとも動かない。
「残りは・・・お前達だ・・・」
彼は、一度ミアのいる方を睨むと、ツクヨへ向きを変え、最早倒れたシンには目もくれなくなった。
「シィィィーーーンッ!!」
凄惨な出来事に、一度は思考が停止していたミアだったが、徐々に脳が活動を再開し、事の重大さを理解すると、感情に任せた一斉掃射をシュトラールへ浴びせる。
シュトラールに向けて放たれる銃弾の数々は、彼の周りに現れる光の剣によって、虚しくも防がれてしまう。
「感情に任せた攻撃など、最早注視するほどでもない・・・。 まずはお前からだ・・・」
彼はミアを見限り、ツクヨとの一騎打ちに専念する。
「・・・野郎ッ・・・! アタシは眼中にねぇってことかよ・・・。 ナメやがってッ・・・」
歩み寄るシュトラールに、ツクヨは体勢を低くし、剣を逆手に持ちながら自身の後方に構えて、彼を迎え撃つ。
「見ない構えだ・・・。 今度はオリジナルか?」
ツクヨの変わった構えに、シュトラールは一種の期待のようなものを感じていた。
「なんの因果か・・・。 ただの偶然なのかもしれにけど、この国では様々な剣技を見る機会が多くて参考になる。 ・・・妻が・・・十六夜がくれたこの身体は剣を握ることを望んでいる。だからこそ、私の始まりの地はここ聖都ユスティーチだったのかもしれない・・・」
普段ゲームをしない彼が、初めて降り立った地。
それは彼の妻である十六夜が、彼のために用意した舞台なのかもしれない。
様々な剣技が集うこの国で、そのスキルを磨いて欲しいと準備していた彼女の意思なのだと、ツクヨは理解した。
「私の知らないところで彼女は、常に私のことを想って、贈り物を残していってくれている・・・。 その想いに応えないと・・・彼女に顔向けできないッ・・・!」
まだシュトラールとの距離がある段階で、ツクヨは構えた剣を、地を滑らせながら彼に向けて振り抜く。
すると、斬撃が地を走りながらシュトラールのいる方向へと駆けて行く。
「剣技・・・地走りッ!」
一撃目の、地を走る斬撃を放つと、剣を回転させて持ち替えると反対側から、同じ剣技をもう一撃放つ。
「地奏円舞円舞ッ!」
地を走る二つの斬撃は、まるで舞踏会で会場を盛り上げる美しい調のように、踊りながらシュトラールを襲う。
挟むように襲いかかろうとする斬撃を、飛んで避けるシュトラールだったが、ツクヨの攻撃は終わらない。
「竜門登鯉竜門登鯉・昇竜ッ!」
シュトラールが飛び上がったことで、ぶつかり合う斬撃は一つとなり、竜門を駆け上がる鯉のように上空へと登りながら、その形を竜へと変え、彼を飲み込もうとする。
光の力でこれを向かい撃ちたくても、ミアの銃弾を防ぐのに力を割いてしまっているので、攻撃に回せないでいた。
「ここに来て響いて来るか・・・」
懐から何かを取り出したシュトラールは、それを遠くへ投げると、今度は自らが持つ剣で、ツクヨの放つ斬撃を迎え撃つため、昇り来る竜へ斬りかかる。
しかし、竜を打ち消すほどの攻撃をシュトラールは放てず、多少の威力は削いだものの、竜に呑まれツクヨの攻撃は直撃した。
「くッ・・・! やむを得まいッ・・・」
激しい斬撃を浴びたシュトラールが、地面へと降りて来る。
だが、どういうわけか、ツクヨが思っていたようなダメージはなく、依然シュトラールは立ち上がって来る。
「ッ・・・? 直撃したはずなのに・・・どうして・・・」
動揺するツクヨに、ゆっくりと立ち上がったシュトラールが声をかける。
「自信を喪失させる必要はない。 お前の剣技は、聖騎士の隊長くらすを脅かすのには十分な威力を持っていた。 ・・・ただ、私には通用しなかった、それだけのこと」
シュトラールは、地面に落ちていたミアの銃弾を拾い上げると、何やら文字の書いてある紙と共に、人形にくり抜かれた紙を重ねて地面に置き、その上に銃弾を置く。
「・・・何をしているんだ・・・?」
最後にそこに光を放つと、シュトラールは後ろを向く。
すると、遠くにいた筈のミアが突然そこに現れ、シュトラールは彼女の出現を計ったかのように強烈な回し蹴りをお見舞いする。
「ッ・・・! ミアッ!!」
「・・・?」
突然のことに、何故自分がここにいるのか理解出来ない様子のミアは、目の前に迫る彼の蹴りを辛うじてガードするも、外壁まで吹き飛ばされてしまう。
「なッ・・・何でここに・・・」
追い討ちをかけるように、光の剣を数本生成すると、投げるような動作を取るシュトラール。
剣は、動揺とダメージで動けずにいるミア目掛けて飛んでいき、彼女にいくつも刺ささっていく。
「あああぁぁぁッ・・・!!」
しかし、剣が刺さろうともミアの身体から血が出ることはなかったが、その悲鳴から痛みやダメージがあるのは明確だった。
「リーベと戦っていたお前達なら・・・わかるんじゃないか? 実体のない光の武器は通常の武器よりも素早く、外傷は無くともその者は確実にダメージを負う・・・」
リーベとの戦いで、その身に刻まれた光の攻撃が、ミアを瀕死に追い込んだトラウマを引き起こし、精神と肉体の両方に多大なダメージを負ってしまい、ミアは意識を失う。
「ミアッ!! ・・・そんな・・・ミアまで・・・」
朝孝との戦いで片腕を失い、疲労している筈のシュトラールに、イデアール、シン、そしてミアと、次々に倒されていく光景に、勝機を見失い絶望の表情を浮かべるツクヨ。
「さぁ・・・、残すはお前一人だ。シャルロットには悪いが、知ってしまったからには彼女にも退場してもらわなくてはな・・・」
彼らとは異次元の強さを誇るシュトラール。
万全の状態の彼をここまで弱らせた朝孝が、如何に彼を抑止する力を持っていたのかがよく分かる。
三人がかりでも彼を追い込むことが出来なかったというのに、一人ではどうしようもない絶望的な状況に、これから自分の身に起こることを想像しただけで、戦う意欲が失われてしまう。
「・・・シン・・・君?」
脳を介せず、ただ口から漏れ出るようにツクヨが、倒れるシンに声をかけるが、無論それに答えるそぶりは無く、ピクリとも動かない。
「残りは・・・お前達だ・・・」
彼は、一度ミアのいる方を睨むと、ツクヨへ向きを変え、最早倒れたシンには目もくれなくなった。
「シィィィーーーンッ!!」
凄惨な出来事に、一度は思考が停止していたミアだったが、徐々に脳が活動を再開し、事の重大さを理解すると、感情に任せた一斉掃射をシュトラールへ浴びせる。
シュトラールに向けて放たれる銃弾の数々は、彼の周りに現れる光の剣によって、虚しくも防がれてしまう。
「感情に任せた攻撃など、最早注視するほどでもない・・・。 まずはお前からだ・・・」
彼はミアを見限り、ツクヨとの一騎打ちに専念する。
「・・・野郎ッ・・・! アタシは眼中にねぇってことかよ・・・。 ナメやがってッ・・・」
歩み寄るシュトラールに、ツクヨは体勢を低くし、剣を逆手に持ちながら自身の後方に構えて、彼を迎え撃つ。
「見ない構えだ・・・。 今度はオリジナルか?」
ツクヨの変わった構えに、シュトラールは一種の期待のようなものを感じていた。
「なんの因果か・・・。 ただの偶然なのかもしれにけど、この国では様々な剣技を見る機会が多くて参考になる。 ・・・妻が・・・十六夜がくれたこの身体は剣を握ることを望んでいる。だからこそ、私の始まりの地はここ聖都ユスティーチだったのかもしれない・・・」
普段ゲームをしない彼が、初めて降り立った地。
それは彼の妻である十六夜が、彼のために用意した舞台なのかもしれない。
様々な剣技が集うこの国で、そのスキルを磨いて欲しいと準備していた彼女の意思なのだと、ツクヨは理解した。
「私の知らないところで彼女は、常に私のことを想って、贈り物を残していってくれている・・・。 その想いに応えないと・・・彼女に顔向けできないッ・・・!」
まだシュトラールとの距離がある段階で、ツクヨは構えた剣を、地を滑らせながら彼に向けて振り抜く。
すると、斬撃が地を走りながらシュトラールのいる方向へと駆けて行く。
「剣技・・・地走りッ!」
一撃目の、地を走る斬撃を放つと、剣を回転させて持ち替えると反対側から、同じ剣技をもう一撃放つ。
「地奏円舞円舞ッ!」
地を走る二つの斬撃は、まるで舞踏会で会場を盛り上げる美しい調のように、踊りながらシュトラールを襲う。
挟むように襲いかかろうとする斬撃を、飛んで避けるシュトラールだったが、ツクヨの攻撃は終わらない。
「竜門登鯉竜門登鯉・昇竜ッ!」
シュトラールが飛び上がったことで、ぶつかり合う斬撃は一つとなり、竜門を駆け上がる鯉のように上空へと登りながら、その形を竜へと変え、彼を飲み込もうとする。
光の力でこれを向かい撃ちたくても、ミアの銃弾を防ぐのに力を割いてしまっているので、攻撃に回せないでいた。
「ここに来て響いて来るか・・・」
懐から何かを取り出したシュトラールは、それを遠くへ投げると、今度は自らが持つ剣で、ツクヨの放つ斬撃を迎え撃つため、昇り来る竜へ斬りかかる。
しかし、竜を打ち消すほどの攻撃をシュトラールは放てず、多少の威力は削いだものの、竜に呑まれツクヨの攻撃は直撃した。
「くッ・・・! やむを得まいッ・・・」
激しい斬撃を浴びたシュトラールが、地面へと降りて来る。
だが、どういうわけか、ツクヨが思っていたようなダメージはなく、依然シュトラールは立ち上がって来る。
「ッ・・・? 直撃したはずなのに・・・どうして・・・」
動揺するツクヨに、ゆっくりと立ち上がったシュトラールが声をかける。
「自信を喪失させる必要はない。 お前の剣技は、聖騎士の隊長くらすを脅かすのには十分な威力を持っていた。 ・・・ただ、私には通用しなかった、それだけのこと」
シュトラールは、地面に落ちていたミアの銃弾を拾い上げると、何やら文字の書いてある紙と共に、人形にくり抜かれた紙を重ねて地面に置き、その上に銃弾を置く。
「・・・何をしているんだ・・・?」
最後にそこに光を放つと、シュトラールは後ろを向く。
すると、遠くにいた筈のミアが突然そこに現れ、シュトラールは彼女の出現を計ったかのように強烈な回し蹴りをお見舞いする。
「ッ・・・! ミアッ!!」
「・・・?」
突然のことに、何故自分がここにいるのか理解出来ない様子のミアは、目の前に迫る彼の蹴りを辛うじてガードするも、外壁まで吹き飛ばされてしまう。
「なッ・・・何でここに・・・」
追い討ちをかけるように、光の剣を数本生成すると、投げるような動作を取るシュトラール。
剣は、動揺とダメージで動けずにいるミア目掛けて飛んでいき、彼女にいくつも刺ささっていく。
「あああぁぁぁッ・・・!!」
しかし、剣が刺さろうともミアの身体から血が出ることはなかったが、その悲鳴から痛みやダメージがあるのは明確だった。
「リーベと戦っていたお前達なら・・・わかるんじゃないか? 実体のない光の武器は通常の武器よりも素早く、外傷は無くともその者は確実にダメージを負う・・・」
リーベとの戦いで、その身に刻まれた光の攻撃が、ミアを瀕死に追い込んだトラウマを引き起こし、精神と肉体の両方に多大なダメージを負ってしまい、ミアは意識を失う。
「ミアッ!! ・・・そんな・・・ミアまで・・・」
朝孝との戦いで片腕を失い、疲労している筈のシュトラールに、イデアール、シン、そしてミアと、次々に倒されていく光景に、勝機を見失い絶望の表情を浮かべるツクヨ。
「さぁ・・・、残すはお前一人だ。シャルロットには悪いが、知ってしまったからには彼女にも退場してもらわなくてはな・・・」
彼らとは異次元の強さを誇るシュトラール。
万全の状態の彼をここまで弱らせた朝孝が、如何に彼を抑止する力を持っていたのかがよく分かる。
三人がかりでも彼を追い込むことが出来なかったというのに、一人ではどうしようもない絶望的な状況に、これから自分の身に起こることを想像しただけで、戦う意欲が失われてしまう。
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