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建物の間を走り抜けながら、時折リーベの動向を確認し、次の射撃ポイントまで移動するミアとツクヨ。
「どうだ? 彼女がこちらの動きに気づいてる様子はあるかい?」
壁に隠れながら、静かにリーベの様子を伺うミア。
「こっちに気づいてる様子は・・・無いように見えるが。 それに気にする素振りも見えない・・・。 だが、なんだろうな・・・さっきの例もあるし、とても好機には思えないんだが」
リーベはまだナーゲルへの攻撃の手を緩めておらず、ナーゲルの爪による衝撃波を避けながら宙を浮遊し、矢を放ち続けている。
「こっちを気にしていないのなら、好都合じゃないか。 ミア、この辺で彼女を狙える良射撃ポイントはあるか?」
「そうだな・・・。 少し高さがあれば・・・、あの建物でいいか」
すぐ側にあった、周囲でも少し高さのある建物を選ぶと、ミアは跳躍し外壁を軽快に駆け上がっていく。
「私は建物の中から上がって行く。 ミア、君のタイミングでやってくれ!」
「了解」
そう言うと今度は、もっと狙撃に適したライフルを取り出して、建物の屋上に寝そべりながら砲身部分と弾を入れ替える。
リーベとナーゲルは依然、激しい攻防を繰り広げており、時々ナーゲルの攻撃や建物を突き抜ける移動で煙が立っていたが、ミアのいる位置ならそれでもリーベを見失うことなく狙撃ができる。
ライフルの準備を整え、スコープを覗きながら狙撃のタイミングを計っていると、ミアが寝そべっている丁度下の階から、鉄で石を擦るような音がしてくる。
その後すぐに、屋上の戸を開ける音がするとツクヨが姿を現した。
「準備できたかい? ミア」
「あぁ、いつでもいけるよ。 それよりさっき、下の階で何か物音がしたようだが・・・何かしてたのか?」
ツクヨは少し得意げな表情を浮かべながら剣を取り出すと、さっきの音と同じ音を立てながら、ミアの周りを囲うように剣で円を描き出す。
「もしもの時の下準備さ! 君は攻撃に専念してくれ。 私はその後のカバーをするから・・・任せてくれ!」
分担出来るのであればそれに越した事はない。
今までの戦闘で、初めは本当にこの世界で戦っていけるのか不安もあったが、実際は想像以上の実力を持っており、戦況も冷静に観れていることから、ミアは彼を信用し、狙撃にだけ集中することを決める。
「わかった。 アタシは攻撃にだけ集中する」
ミアの言葉にツクヨが頷くと、リーベに見つからないよう身をかがめた。
「次は発射音も消す・・・。 これでリーベには音による探知もさせない」
ミアの手にしている銃を見ながら、ツクヨは不思議そうな顔をして彼女に聞いた。
「その・・・私はあまり銃に詳しくないんだが、消音のために付けるサプレッサーくらいは知っている。 ・・・君の持つそれには、付いていないように見えるんだが・・・?」
サプレッサーとは、銃の発射の時に生じる発射音と閃光を軽減するために、銃身の先端に取り付ける筒状の装置のことなのだが、彼女の銃身にはそれが取り付けられていない。
「スナイパーライフルでサプレッサーを付けても、完全には消せない発射音を聞き取り、リーベは気づく筈・・・。 だから完全に音を消し去るために、アタシはコレを使う」
ミアが取り出した弾をツクヨに見せてくれた。
その弾は、黒い靄もやに覆われており、そして彼女がライフルの砲身部分を触ると、そこからも靄が発生し、銃の先を覆ってしまった。
「こっ・・・これで射撃が出来るのか?」
「大丈夫だ、狙撃に支障はない。 ガンスリンガーのパッシブスキルには視力強化もあるんだ。 射撃体勢に入れば、真っ暗だろうが眩しかろうがある程度の射撃は可能だ。 そしてこの靄は、この土地特有の属性原子である闇・陰属性による魔法のようなものさ」
ミアが使役する四大元素の属性とは異なるため、メアとの戦いのような魔法に近い攻撃は出来ないが、属性特有のものを少し引き出すことが出来る。
例えば、炎属性なら何かに発火させることが、水属性なら濡らすことが、と言うようなことができ、陰の属性は何かを”消す“ことが出来る。
だが勿論のこと、対象を消したり自分を消すなどといったことまでは、ミアには出来ない。
今回の場合ミアが行った細工というのは、銃自体に発射の音を消す効果を付与し、弾にも同じく消音の効果を付与したのだ。
「銃と弾に陰の原子を使い、消音の効果を付与させた。 これで全く音を立てること無く狙撃出来る」
ミアは弾をしまうとスコープを覗き、狙撃の体勢に入る。
レンズの先でリーベを視界に捉えると、ミアは引き金に指をかける。
リーベがナーゲルへ攻撃を仕掛ける瞬間に狙いを定め、息を止めながら照準を合わせると、一気に引き金を引いた。
銃からは、発射の時に生じる閃光も音も無くリーベに向けて弾が飛んでいく。
間も無く彼女に命中するというところで、銃弾は何かによって弾かれてしまった。
「・・・っえ・・・?」
リーベを守って銃弾を弾いたのは、言うまでもなく彼女の生み出した光の矢だった。
音も無く飛んでいく銃弾なのだから、発射のタイミングも視認しなければ、いつ発射されるかもわからない筈なのに、何故リーベは一切こちらを見ることもなく防ぐことができたのか。
銃弾を弾いて漸くこちらを見るリーベは、何やらこちらに手の平を向けると、その手をグッと閉じた。
同時か、或いはそれよりも早くミアの寝そべる床が崩れ落ちる。
「ミアッ!」
ミアのいる建物の屋上を取り囲むように無数の光の矢が出現し、リーベの手の動きに呼応してミアへと発射される。
目にも留まらぬ剣さばきで、ミアのいる床を切り抜き、下の階への退路を作るツクヨは、彼女を抱えそのまま下へと降りる。
「ツクヨッ!」
飛んできた光の矢がミアのいた位置に到達するよりも先に、ツクヨは下の階に降りると、ミアを抱えたまま窓へ飛び込む。
窓ガラスを突き抜け、隣の建物の窓から再度室内へと入る。
勢いそのままに床へ転がるツクヨとミア。
ミアは狙撃に集中していたため、状況が全く理解できていないようだった。
「ツクヨッ! 大丈夫かッ!!」
「ぐっ・・・! ミアッ!! 時間が無い! すぐに建物を出て路地へと逃げるんだッ!!」
ミアを庇い退避した彼の身体を見ると、ガラスにより手や顔を少し切っており、何よりも数本、彼の身体に光の矢が突き刺さっていたのだ。
「・・・ツクヨッ!」
「早く降りるんだッ!! すぐに追いつくッ!」
彼の言葉に従い、心配する気持ちを堪え、ミアは窓へ飛び込み、ガラス片と共に落下しながら路地裏へと走る。
直後、ツクヨを残してきた建物に、無数の光の矢が滝のように降り注ぎ、一瞬にして建物を瓦礫の山へと変えた。
「そんなッ・・・嘘だろッ!?」
走りながら振り返るミアの視界に、土煙の中から姿を現したリーベがゆっくりとミアの方へと顔を向けた。
「何で奴がここにッ!? ナーゲルはどうしたんだッ!?」
ナーゲルがどうなったかも分からず、ツクヨの安否も不明・・・。
そしてリーベがここまで来たということは、標的をミアへ変えたと見て間違いないだろう。
仲間を失い、遂に戦闘はミアとリーベの一騎打ちへと突入する。
「どうだ? 彼女がこちらの動きに気づいてる様子はあるかい?」
壁に隠れながら、静かにリーベの様子を伺うミア。
「こっちに気づいてる様子は・・・無いように見えるが。 それに気にする素振りも見えない・・・。 だが、なんだろうな・・・さっきの例もあるし、とても好機には思えないんだが」
リーベはまだナーゲルへの攻撃の手を緩めておらず、ナーゲルの爪による衝撃波を避けながら宙を浮遊し、矢を放ち続けている。
「こっちを気にしていないのなら、好都合じゃないか。 ミア、この辺で彼女を狙える良射撃ポイントはあるか?」
「そうだな・・・。 少し高さがあれば・・・、あの建物でいいか」
すぐ側にあった、周囲でも少し高さのある建物を選ぶと、ミアは跳躍し外壁を軽快に駆け上がっていく。
「私は建物の中から上がって行く。 ミア、君のタイミングでやってくれ!」
「了解」
そう言うと今度は、もっと狙撃に適したライフルを取り出して、建物の屋上に寝そべりながら砲身部分と弾を入れ替える。
リーベとナーゲルは依然、激しい攻防を繰り広げており、時々ナーゲルの攻撃や建物を突き抜ける移動で煙が立っていたが、ミアのいる位置ならそれでもリーベを見失うことなく狙撃ができる。
ライフルの準備を整え、スコープを覗きながら狙撃のタイミングを計っていると、ミアが寝そべっている丁度下の階から、鉄で石を擦るような音がしてくる。
その後すぐに、屋上の戸を開ける音がするとツクヨが姿を現した。
「準備できたかい? ミア」
「あぁ、いつでもいけるよ。 それよりさっき、下の階で何か物音がしたようだが・・・何かしてたのか?」
ツクヨは少し得意げな表情を浮かべながら剣を取り出すと、さっきの音と同じ音を立てながら、ミアの周りを囲うように剣で円を描き出す。
「もしもの時の下準備さ! 君は攻撃に専念してくれ。 私はその後のカバーをするから・・・任せてくれ!」
分担出来るのであればそれに越した事はない。
今までの戦闘で、初めは本当にこの世界で戦っていけるのか不安もあったが、実際は想像以上の実力を持っており、戦況も冷静に観れていることから、ミアは彼を信用し、狙撃にだけ集中することを決める。
「わかった。 アタシは攻撃にだけ集中する」
ミアの言葉にツクヨが頷くと、リーベに見つからないよう身をかがめた。
「次は発射音も消す・・・。 これでリーベには音による探知もさせない」
ミアの手にしている銃を見ながら、ツクヨは不思議そうな顔をして彼女に聞いた。
「その・・・私はあまり銃に詳しくないんだが、消音のために付けるサプレッサーくらいは知っている。 ・・・君の持つそれには、付いていないように見えるんだが・・・?」
サプレッサーとは、銃の発射の時に生じる発射音と閃光を軽減するために、銃身の先端に取り付ける筒状の装置のことなのだが、彼女の銃身にはそれが取り付けられていない。
「スナイパーライフルでサプレッサーを付けても、完全には消せない発射音を聞き取り、リーベは気づく筈・・・。 だから完全に音を消し去るために、アタシはコレを使う」
ミアが取り出した弾をツクヨに見せてくれた。
その弾は、黒い靄もやに覆われており、そして彼女がライフルの砲身部分を触ると、そこからも靄が発生し、銃の先を覆ってしまった。
「こっ・・・これで射撃が出来るのか?」
「大丈夫だ、狙撃に支障はない。 ガンスリンガーのパッシブスキルには視力強化もあるんだ。 射撃体勢に入れば、真っ暗だろうが眩しかろうがある程度の射撃は可能だ。 そしてこの靄は、この土地特有の属性原子である闇・陰属性による魔法のようなものさ」
ミアが使役する四大元素の属性とは異なるため、メアとの戦いのような魔法に近い攻撃は出来ないが、属性特有のものを少し引き出すことが出来る。
例えば、炎属性なら何かに発火させることが、水属性なら濡らすことが、と言うようなことができ、陰の属性は何かを”消す“ことが出来る。
だが勿論のこと、対象を消したり自分を消すなどといったことまでは、ミアには出来ない。
今回の場合ミアが行った細工というのは、銃自体に発射の音を消す効果を付与し、弾にも同じく消音の効果を付与したのだ。
「銃と弾に陰の原子を使い、消音の効果を付与させた。 これで全く音を立てること無く狙撃出来る」
ミアは弾をしまうとスコープを覗き、狙撃の体勢に入る。
レンズの先でリーベを視界に捉えると、ミアは引き金に指をかける。
リーベがナーゲルへ攻撃を仕掛ける瞬間に狙いを定め、息を止めながら照準を合わせると、一気に引き金を引いた。
銃からは、発射の時に生じる閃光も音も無くリーベに向けて弾が飛んでいく。
間も無く彼女に命中するというところで、銃弾は何かによって弾かれてしまった。
「・・・っえ・・・?」
リーベを守って銃弾を弾いたのは、言うまでもなく彼女の生み出した光の矢だった。
音も無く飛んでいく銃弾なのだから、発射のタイミングも視認しなければ、いつ発射されるかもわからない筈なのに、何故リーベは一切こちらを見ることもなく防ぐことができたのか。
銃弾を弾いて漸くこちらを見るリーベは、何やらこちらに手の平を向けると、その手をグッと閉じた。
同時か、或いはそれよりも早くミアの寝そべる床が崩れ落ちる。
「ミアッ!」
ミアのいる建物の屋上を取り囲むように無数の光の矢が出現し、リーベの手の動きに呼応してミアへと発射される。
目にも留まらぬ剣さばきで、ミアのいる床を切り抜き、下の階への退路を作るツクヨは、彼女を抱えそのまま下へと降りる。
「ツクヨッ!」
飛んできた光の矢がミアのいた位置に到達するよりも先に、ツクヨは下の階に降りると、ミアを抱えたまま窓へ飛び込む。
窓ガラスを突き抜け、隣の建物の窓から再度室内へと入る。
勢いそのままに床へ転がるツクヨとミア。
ミアは狙撃に集中していたため、状況が全く理解できていないようだった。
「ツクヨッ! 大丈夫かッ!!」
「ぐっ・・・! ミアッ!! 時間が無い! すぐに建物を出て路地へと逃げるんだッ!!」
ミアを庇い退避した彼の身体を見ると、ガラスにより手や顔を少し切っており、何よりも数本、彼の身体に光の矢が突き刺さっていたのだ。
「・・・ツクヨッ!」
「早く降りるんだッ!! すぐに追いつくッ!」
彼の言葉に従い、心配する気持ちを堪え、ミアは窓へ飛び込み、ガラス片と共に落下しながら路地裏へと走る。
直後、ツクヨを残してきた建物に、無数の光の矢が滝のように降り注ぎ、一瞬にして建物を瓦礫の山へと変えた。
「そんなッ・・・嘘だろッ!?」
走りながら振り返るミアの視界に、土煙の中から姿を現したリーベがゆっくりとミアの方へと顔を向けた。
「何で奴がここにッ!? ナーゲルはどうしたんだッ!?」
ナーゲルがどうなったかも分からず、ツクヨの安否も不明・・・。
そしてリーベがここまで来たということは、標的をミアへ変えたと見て間違いないだろう。
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