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19.04.18
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100円ショップで可愛い女性の店員さんが、お釣りを渡すときにしっかり手を添えてくれる人だった。久し振りに、人の手に触れた。温かくて驚いた。顔に動揺が出ていた気がする。もうあのお店には行けない。
昨日からの続き。ソープランドまでやってきた。狭い路地に位置する店舗は、歴史を感じると言うよりも古びていて、中の設備も不安になる。店前には、他店舗と同じように黒服が立っている。その人も特別に威圧する空気を持っているわけではない。
「いらっしゃいませ。どうぞ」
扉を開けてもらう。入って右手にカウンター、左手には暖簾が掛かっていて向こうはソファのようなものが見え、正面はカーテンで全く先は見えない。3人くらいの黒服がいた。その内の1人に、予約時間と女性の名前を告げる。
「御来店ありがとうございます。こちらでお待ちください」
そう言われて、暖簾をくぐり、テレビや雑誌があるソファ席に通される。待ち合い席だろう。そこには先に待っている男が1人いて、その人は私よりも随分歳上に見えた。チラリと目が合うが、すぐに逸らした。ここはそういう礼儀だろう。男と離れたソファに座って、テレビを眺めた。何も頭に入らなかったが。黒服がやってきて、飲み物を勧められる。烏龍茶を頼んだ。飲み物を用意すると同時に、女性の写真を見せられる。ホームページにあったようなモザイクがかったものではなく、顔の全てが出ていて、それは期待通りの顔立ちだった。
「本日は△△ちゃんの120分ですね。45,000円を頂戴致します」
財布から現金を取り出して渡す。家にあるスピーカーがこれくらいの値段だったな、とその時に思った。
「ちょうど頂戴致します。爪を見せて頂いてよろしいですか」
手の甲、引っ繰り返して、平。問題ない、と黒服が頷く。
「では、準備を致しますので、もうしばらくお待ちください」
緊張で喉が乾いていたので、あっという間に烏龍茶を飲み干し、待つ。すると、先に来ていた男が、黒服に連れられて席を立つ。
「ご案内でーす!」
まるで居酒屋みたいな野太い声が飛ぶ。男が女性と部屋に入っていく姿を思い浮かべる。男の歳の割りに女性は若いイメージ。グロテスクだ。別の客が入ってくる。やはり、そっと視線を交わして、後は無視を決め込む。そして、私の下へ黒服がやって来る。
「お待たせ致しました。ご案内します」
はい、と返事した声は、やはり力がなかった。胃はキリキリと痛み、脚は震えている。とても行為に向かおうという気分ではなかった。待ち合い席を出ると、閉まっていたカーテンが開いていて、その向こうに女性がいる。
「ご案内でーす!」
ゆっくりと女性に向かって歩を進める。初めての性体験が始まる。
細かい話は明日以降に続ける。
昨日からの続き。ソープランドまでやってきた。狭い路地に位置する店舗は、歴史を感じると言うよりも古びていて、中の設備も不安になる。店前には、他店舗と同じように黒服が立っている。その人も特別に威圧する空気を持っているわけではない。
「いらっしゃいませ。どうぞ」
扉を開けてもらう。入って右手にカウンター、左手には暖簾が掛かっていて向こうはソファのようなものが見え、正面はカーテンで全く先は見えない。3人くらいの黒服がいた。その内の1人に、予約時間と女性の名前を告げる。
「御来店ありがとうございます。こちらでお待ちください」
そう言われて、暖簾をくぐり、テレビや雑誌があるソファ席に通される。待ち合い席だろう。そこには先に待っている男が1人いて、その人は私よりも随分歳上に見えた。チラリと目が合うが、すぐに逸らした。ここはそういう礼儀だろう。男と離れたソファに座って、テレビを眺めた。何も頭に入らなかったが。黒服がやってきて、飲み物を勧められる。烏龍茶を頼んだ。飲み物を用意すると同時に、女性の写真を見せられる。ホームページにあったようなモザイクがかったものではなく、顔の全てが出ていて、それは期待通りの顔立ちだった。
「本日は△△ちゃんの120分ですね。45,000円を頂戴致します」
財布から現金を取り出して渡す。家にあるスピーカーがこれくらいの値段だったな、とその時に思った。
「ちょうど頂戴致します。爪を見せて頂いてよろしいですか」
手の甲、引っ繰り返して、平。問題ない、と黒服が頷く。
「では、準備を致しますので、もうしばらくお待ちください」
緊張で喉が乾いていたので、あっという間に烏龍茶を飲み干し、待つ。すると、先に来ていた男が、黒服に連れられて席を立つ。
「ご案内でーす!」
まるで居酒屋みたいな野太い声が飛ぶ。男が女性と部屋に入っていく姿を思い浮かべる。男の歳の割りに女性は若いイメージ。グロテスクだ。別の客が入ってくる。やはり、そっと視線を交わして、後は無視を決め込む。そして、私の下へ黒服がやって来る。
「お待たせ致しました。ご案内します」
はい、と返事した声は、やはり力がなかった。胃はキリキリと痛み、脚は震えている。とても行為に向かおうという気分ではなかった。待ち合い席を出ると、閉まっていたカーテンが開いていて、その向こうに女性がいる。
「ご案内でーす!」
ゆっくりと女性に向かって歩を進める。初めての性体験が始まる。
細かい話は明日以降に続ける。
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