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第三章 百合信者
萌花はイケ女がどういう気持ちなのか知りたいようです
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「る、琉璃くん!?」
「へ!? ……な、なんで朔良さんが隣に……」
朔良さんの声に琉璃は目を覚ましたようで、今の状況をうまく飲み込めていないようだった。
叫びを上げた朔良さんも何があったのかわかっていないようだ。
「あー、なんだ? 俺にも何がなんだか……」
「琉璃が、朔良さんの肩にもたれかかって寝ていて……それで私が麦茶を取りに行ったらちょうど朔良さんが目を覚ましたんです」
「え!?」
私の言葉に朔良さんは驚いて自身の肩を見て、その状態を確認すると琉璃の身体をゆすった。
「琉璃くん!? なんであたしの肩なんかで寝てるんだ!?」
「え……あぁ!?」
琉璃は状況を理解すると、朔良さんの肩を急いで離し顔を真っ青にして俯く。
そして、小さな声で謝罪の言葉を述べる。
「すみません……」
「い、いや! そんな謝らなくても!」
「姉貴の彼女さんの隣で寝るなんて……すみません」
「な、何もしてないし! 謝らなくていいよ!」
「いえ……こんな暑いのに朔良さんの隣に座るなんて……」
どうやら琉璃は自分の行動を相当反省しているようだ。
しかし、朔良さんはそんな琉璃の謝罪をなんとか止めようとしていた。
私にもどうすればいいのかよくわからない。
ただ、この場で変に口を挟むとややこしくなるのは火を見るよりも明らかなので黙って成り行きを見守ることにした。
羨ましさと琉璃を消してしまいたい気持ちでいっぱいになっていたが、なんとかその気持ちをしまい込む。
しかし、そんな私の考えを裏切るかのように琉璃はとんでもない爆弾を落とした。
それはまさに爆弾と呼ぶに相応しいものだった。
誰もが驚愕するであろう一言を、琉璃は口にする。
「朔良さんの隣は……姉貴だけのものなのに」
「……え?」
「え!?」
朔良さんは目を丸くして、私は驚きに声を上げる。
琉璃の口から出てきた衝撃的な言葉に、朔良さんは状況がうまく理解できていないようだ。
琉璃はというと、自分が何を言ったのか自覚がないようで首を傾げている。
私は恐る恐る朔良さんの表情を盗み見ると、朔良さんの顔は真っ赤に染まっていた。
耳まで真っ赤だ。
かく言う私も、琉璃の放った言葉が嬉しくて胸が高鳴っていたが。
「な、なにを言ってるんだ? あたしたちはそんな関係じゃ」
「え? でもよく姉貴から朔良さんの話聞きますよ?」
「!?」
琉璃が平然と言ってのけた一言に、朔良さんは一瞬でフリーズした。
私も流れるような自然な暴露に完全に固まってしまっている。
そんな私たちを置いてけぼりにして、琉璃は言葉を続ける。
「すっごくお似合いだと思います。どうかこれからも、姉貴のことよろしくお願いします」
琉璃はそう言って深々と朔良さんに頭を下げると、私の手を引いて歩き出した。
私は混乱したまま自分の部屋を後にし、手を引かれるままに歩く。
しばらく歩いたところで、ようやく脳が動き始めた。
「る、琉璃? さっきのはどういうつもりです?」
私は少し距離を空けて前を歩く琉璃に尋ねる。
すると、琉璃はこちらを振り返りながらこう答えた。
「姉貴、朔良さんのこと好きなんだろ?」
「……」
たしかに、私は朔良さんのことが好きだ。
それを琉璃に話したこともある。
だが、改めて指摘されてしまうと恥ずかしくて顔が熱くなる。
しかし、朔良さんとは無理に付き合ってもらっているだけだ。
そう、朔良さんの意思で私と付き合っているわけではない。
朔良さんは優しい人だから、私のワガママに付き合ってくれているだけ。
私が脅して無理やり作った恋人関係に心が伴うわけがない。
私なんかが朔良さんと恋人でいるなんて、おこがましいにも程がある。
それなのに……
「好き、すごく好き。だけど朔良さんはそうじゃないんです。だからさっきみたいなことは……ちょっと……」
「そっか」
琉璃はまた前を向いて歩き始める。
私は自分の気持ちを正直に言葉にして、それを琉璃が理解してくれたのか心配だったが、それは杞憂だったようだ。
琉璃は私に背を向けたまま口を開く。
「姉貴の気持ちはわかった」
「うん」
「でも、やっぱり朔良さんが好きならちゃんと言わなきゃダメだと思うぞ?」
「……うん、そうですよね」
私は俯きながら返事を返す。
確かにその通りだ。
しかし、私の気持ちを朔良さんが受け入れてくれるとは思えない。
それがわかっているから、私は悩んでいるのだ。
「それにさ、姉貴は朔良さんの気持ちちゃんと聞いたことある?」
「え?」
琉璃の突然の問いに私は困惑する。
朔良さんの気持ち……私は考えたこともなかった。
それを聞くことが怖かったから。
だから、聞かずにこうして悩むことを選んでしまった。
今のままでも、充分幸せだから。
「それは……」
「うん、それは?」
「……聞いてません」
私は正直に答え、俯いたまま黙り込む。
そんな私を見かねてか、琉璃は励ましの言葉をかけてくれた。
「じゃあ、まずはそこからだな! 話はそれからだ!」
私は顔を上げて琉璃の顔を見る。
そこには、太陽のように眩しい笑顔が浮かんでいた。
「うん……そうだね」
琉璃がこうして励ましてくれるのは珍しい。
その珍しさにあてられて、あとで朔良さんに自分のことをどう思っているのか聞こうと決意した。
「へ!? ……な、なんで朔良さんが隣に……」
朔良さんの声に琉璃は目を覚ましたようで、今の状況をうまく飲み込めていないようだった。
叫びを上げた朔良さんも何があったのかわかっていないようだ。
「あー、なんだ? 俺にも何がなんだか……」
「琉璃が、朔良さんの肩にもたれかかって寝ていて……それで私が麦茶を取りに行ったらちょうど朔良さんが目を覚ましたんです」
「え!?」
私の言葉に朔良さんは驚いて自身の肩を見て、その状態を確認すると琉璃の身体をゆすった。
「琉璃くん!? なんであたしの肩なんかで寝てるんだ!?」
「え……あぁ!?」
琉璃は状況を理解すると、朔良さんの肩を急いで離し顔を真っ青にして俯く。
そして、小さな声で謝罪の言葉を述べる。
「すみません……」
「い、いや! そんな謝らなくても!」
「姉貴の彼女さんの隣で寝るなんて……すみません」
「な、何もしてないし! 謝らなくていいよ!」
「いえ……こんな暑いのに朔良さんの隣に座るなんて……」
どうやら琉璃は自分の行動を相当反省しているようだ。
しかし、朔良さんはそんな琉璃の謝罪をなんとか止めようとしていた。
私にもどうすればいいのかよくわからない。
ただ、この場で変に口を挟むとややこしくなるのは火を見るよりも明らかなので黙って成り行きを見守ることにした。
羨ましさと琉璃を消してしまいたい気持ちでいっぱいになっていたが、なんとかその気持ちをしまい込む。
しかし、そんな私の考えを裏切るかのように琉璃はとんでもない爆弾を落とした。
それはまさに爆弾と呼ぶに相応しいものだった。
誰もが驚愕するであろう一言を、琉璃は口にする。
「朔良さんの隣は……姉貴だけのものなのに」
「……え?」
「え!?」
朔良さんは目を丸くして、私は驚きに声を上げる。
琉璃の口から出てきた衝撃的な言葉に、朔良さんは状況がうまく理解できていないようだ。
琉璃はというと、自分が何を言ったのか自覚がないようで首を傾げている。
私は恐る恐る朔良さんの表情を盗み見ると、朔良さんの顔は真っ赤に染まっていた。
耳まで真っ赤だ。
かく言う私も、琉璃の放った言葉が嬉しくて胸が高鳴っていたが。
「な、なにを言ってるんだ? あたしたちはそんな関係じゃ」
「え? でもよく姉貴から朔良さんの話聞きますよ?」
「!?」
琉璃が平然と言ってのけた一言に、朔良さんは一瞬でフリーズした。
私も流れるような自然な暴露に完全に固まってしまっている。
そんな私たちを置いてけぼりにして、琉璃は言葉を続ける。
「すっごくお似合いだと思います。どうかこれからも、姉貴のことよろしくお願いします」
琉璃はそう言って深々と朔良さんに頭を下げると、私の手を引いて歩き出した。
私は混乱したまま自分の部屋を後にし、手を引かれるままに歩く。
しばらく歩いたところで、ようやく脳が動き始めた。
「る、琉璃? さっきのはどういうつもりです?」
私は少し距離を空けて前を歩く琉璃に尋ねる。
すると、琉璃はこちらを振り返りながらこう答えた。
「姉貴、朔良さんのこと好きなんだろ?」
「……」
たしかに、私は朔良さんのことが好きだ。
それを琉璃に話したこともある。
だが、改めて指摘されてしまうと恥ずかしくて顔が熱くなる。
しかし、朔良さんとは無理に付き合ってもらっているだけだ。
そう、朔良さんの意思で私と付き合っているわけではない。
朔良さんは優しい人だから、私のワガママに付き合ってくれているだけ。
私が脅して無理やり作った恋人関係に心が伴うわけがない。
私なんかが朔良さんと恋人でいるなんて、おこがましいにも程がある。
それなのに……
「好き、すごく好き。だけど朔良さんはそうじゃないんです。だからさっきみたいなことは……ちょっと……」
「そっか」
琉璃はまた前を向いて歩き始める。
私は自分の気持ちを正直に言葉にして、それを琉璃が理解してくれたのか心配だったが、それは杞憂だったようだ。
琉璃は私に背を向けたまま口を開く。
「姉貴の気持ちはわかった」
「うん」
「でも、やっぱり朔良さんが好きならちゃんと言わなきゃダメだと思うぞ?」
「……うん、そうですよね」
私は俯きながら返事を返す。
確かにその通りだ。
しかし、私の気持ちを朔良さんが受け入れてくれるとは思えない。
それがわかっているから、私は悩んでいるのだ。
「それにさ、姉貴は朔良さんの気持ちちゃんと聞いたことある?」
「え?」
琉璃の突然の問いに私は困惑する。
朔良さんの気持ち……私は考えたこともなかった。
それを聞くことが怖かったから。
だから、聞かずにこうして悩むことを選んでしまった。
今のままでも、充分幸せだから。
「それは……」
「うん、それは?」
「……聞いてません」
私は正直に答え、俯いたまま黙り込む。
そんな私を見かねてか、琉璃は励ましの言葉をかけてくれた。
「じゃあ、まずはそこからだな! 話はそれからだ!」
私は顔を上げて琉璃の顔を見る。
そこには、太陽のように眩しい笑顔が浮かんでいた。
「うん……そうだね」
琉璃がこうして励ましてくれるのは珍しい。
その珍しさにあてられて、あとで朔良さんに自分のことをどう思っているのか聞こうと決意した。
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