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第一章 変態とイケ女
終業式はイケ女のお誘いで集中できなかったみたいです
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「――ということで、夏休みといっても怠けず勉学に励み――」
終業式。
これがあると、いよいよ夏休みが始まるのだと実感する。
私は背が低いから、壇上に立っている先生との距離が近い。
だから先生の声がよく聞こえるし、話も聞きやすい。
まあ、今の私にとっては先生の話なんてこれっぽっちも入ってこないのだけども。
だって、あの朔良さんから夏休みに旅行に行こうと誘われてしまったのだ。
テンションが上がって、耳には届くものの、左から右に流れて頭には残らない。
そんな状態を繰り返している。
私はもうそれは気分が舞い上がって飛べちゃうんじゃないかと本気で思うほどだった。
朔良さんと二人で行かない理由がない。
むしろ行きたいし、今すぐにでもその計画を実行したいくらいだ。
「――では、皆さん良い夏休みを」
そう締めくくり、校長先生の長いお話が終わる。
ようやくこの時が来た。
今日が終われば、待ちに待った夏休みだ!
先程よりも舞い上がった気持ちで体育館を出る。
そして、教室に戻る途中で後ろから声をかけられた。
「よっ!」
振り向くとそこには朔良さんがいた。
彼女の方から話しかけてくるなんて思わなくて、思わず驚きの声が出てしまう。
「え、さ、朔良さん!? どうして!?」
「いやー、ちょっとね……」
朔良さんは言いながら頭を掻いて苦笑いを浮かべる。
そして、少し間を置いて言った。
「……明日のことなんだけどさ」
「はい?」
私は首を傾げる。
明日って何かあっただろうか?
私が考え込んでいると、朔良さんは焦り出したように早口で言う。
「ほら、あれだよ! 明日から学校休みじゃんか! 課題とかもたくさん出るだろ? だから……その……」
そこで言葉を詰まらせる朔良さん。
なんだか様子がおかしい気がしたけど、とりあえず彼女が何を言おうとしているのか察することができた。
要するに、彼女は課題を教えてほしいということだろう。
私としても教えられる範囲なら教えたいし、一緒に勉強したいと思っていたからちょうどよかった。
一人でやるより誰かと一緒にやった方が捗るものだ。
それに、勉強を教えるという名目で、朔良さんと夏休み中にたくさん会えるかもしれない。
これはいい機会だと思った。
もちろんそれを断る理由はどこにもない。
なので私は満面の笑みで了承の意を示した。
すると、朔良さんは安堵のため息をつく。
それから、申し訳なさそうな表情をして言う。
まるで断られるかもという不安があったみたいに。
「ありがとな。正直こんなお願い断られると思ってたわ」
「何言ってるんですか! 私が朔良さんのお願いを断るわけないじゃないですか!」
私がそう力説すると、朔良さんはとても驚いた顔をしていた。
自分でも驚くくらい大きな声を出してしまったと思う。
でも、それくらい朔良さんからの頼み事は嬉しかったのだ。
だって、好きな人から頼られたんだもの。
たとえそれがどんな内容だったとしても嬉しいに決まっている。
「そっか……うん、よかった。じゃあまた後でなー」
「はい! って朔良さん!?」
朔良さんは約束を取り付けたことに満足したのか、足早に去っていってしまう。
一緒に教室に戻りたかったのに。
でもこれで、夏休み中の予定がまた一つ増えた。
それだけで私の心は晴れやかな気持ちになる。
私がスキップをしながら教室に戻ろうとした時……
「ふぅん、君はあの人に夢中なんだね?」
「……ん?」
後ろから興味深そうに笑う謎の声が聞こえてきた。
振り向いてみるけれど、私のことを見ている人物はおらず、みんな友だちと楽しそうに話していて私に興味ないようだった。
きっと気のせいだろうと思い直し、再び前を向いて歩き出す。
……しかし、その人物がついてきているような気配を感じた。
なんなのだ一体。
いや、みんなで教室に向かっているのだからついてきたとしても不思議ではないのだが。
少し気味が悪かった。
だが、その人物はすぐにどこかへ行ってしまったようで、いつの間にかいなくなっていた。
やっぱり勘違いだったようだ。
安心して胸を撫で下ろす。
それと同時に、なぜあんなに気にしてしまったのか疑問に思ったが、特に深く考えることもなく教室へと戻った。
「でもきっと、朔良さんも不気味に思ってたんでしょうねぇ……」
そう自虐気味に笑う。
私も朔良さんのことをつけ狙っていたことがあるから、その行動が自分に返ってきた気がして複雑な気持ちだった。
朔良さんは私のストーキング行為をどう捉えていたのだろう。
そもそも気づいていただろうか。
「……過ぎたことは気にしないようにしましょうか……」
終業式が終わり、いよいよ夏休みがはじまる。
私はこれからの朔良さんとの日々に、心を弾ませるのだった。
終業式。
これがあると、いよいよ夏休みが始まるのだと実感する。
私は背が低いから、壇上に立っている先生との距離が近い。
だから先生の声がよく聞こえるし、話も聞きやすい。
まあ、今の私にとっては先生の話なんてこれっぽっちも入ってこないのだけども。
だって、あの朔良さんから夏休みに旅行に行こうと誘われてしまったのだ。
テンションが上がって、耳には届くものの、左から右に流れて頭には残らない。
そんな状態を繰り返している。
私はもうそれは気分が舞い上がって飛べちゃうんじゃないかと本気で思うほどだった。
朔良さんと二人で行かない理由がない。
むしろ行きたいし、今すぐにでもその計画を実行したいくらいだ。
「――では、皆さん良い夏休みを」
そう締めくくり、校長先生の長いお話が終わる。
ようやくこの時が来た。
今日が終われば、待ちに待った夏休みだ!
先程よりも舞い上がった気持ちで体育館を出る。
そして、教室に戻る途中で後ろから声をかけられた。
「よっ!」
振り向くとそこには朔良さんがいた。
彼女の方から話しかけてくるなんて思わなくて、思わず驚きの声が出てしまう。
「え、さ、朔良さん!? どうして!?」
「いやー、ちょっとね……」
朔良さんは言いながら頭を掻いて苦笑いを浮かべる。
そして、少し間を置いて言った。
「……明日のことなんだけどさ」
「はい?」
私は首を傾げる。
明日って何かあっただろうか?
私が考え込んでいると、朔良さんは焦り出したように早口で言う。
「ほら、あれだよ! 明日から学校休みじゃんか! 課題とかもたくさん出るだろ? だから……その……」
そこで言葉を詰まらせる朔良さん。
なんだか様子がおかしい気がしたけど、とりあえず彼女が何を言おうとしているのか察することができた。
要するに、彼女は課題を教えてほしいということだろう。
私としても教えられる範囲なら教えたいし、一緒に勉強したいと思っていたからちょうどよかった。
一人でやるより誰かと一緒にやった方が捗るものだ。
それに、勉強を教えるという名目で、朔良さんと夏休み中にたくさん会えるかもしれない。
これはいい機会だと思った。
もちろんそれを断る理由はどこにもない。
なので私は満面の笑みで了承の意を示した。
すると、朔良さんは安堵のため息をつく。
それから、申し訳なさそうな表情をして言う。
まるで断られるかもという不安があったみたいに。
「ありがとな。正直こんなお願い断られると思ってたわ」
「何言ってるんですか! 私が朔良さんのお願いを断るわけないじゃないですか!」
私がそう力説すると、朔良さんはとても驚いた顔をしていた。
自分でも驚くくらい大きな声を出してしまったと思う。
でも、それくらい朔良さんからの頼み事は嬉しかったのだ。
だって、好きな人から頼られたんだもの。
たとえそれがどんな内容だったとしても嬉しいに決まっている。
「そっか……うん、よかった。じゃあまた後でなー」
「はい! って朔良さん!?」
朔良さんは約束を取り付けたことに満足したのか、足早に去っていってしまう。
一緒に教室に戻りたかったのに。
でもこれで、夏休み中の予定がまた一つ増えた。
それだけで私の心は晴れやかな気持ちになる。
私がスキップをしながら教室に戻ろうとした時……
「ふぅん、君はあの人に夢中なんだね?」
「……ん?」
後ろから興味深そうに笑う謎の声が聞こえてきた。
振り向いてみるけれど、私のことを見ている人物はおらず、みんな友だちと楽しそうに話していて私に興味ないようだった。
きっと気のせいだろうと思い直し、再び前を向いて歩き出す。
……しかし、その人物がついてきているような気配を感じた。
なんなのだ一体。
いや、みんなで教室に向かっているのだからついてきたとしても不思議ではないのだが。
少し気味が悪かった。
だが、その人物はすぐにどこかへ行ってしまったようで、いつの間にかいなくなっていた。
やっぱり勘違いだったようだ。
安心して胸を撫で下ろす。
それと同時に、なぜあんなに気にしてしまったのか疑問に思ったが、特に深く考えることもなく教室へと戻った。
「でもきっと、朔良さんも不気味に思ってたんでしょうねぇ……」
そう自虐気味に笑う。
私も朔良さんのことをつけ狙っていたことがあるから、その行動が自分に返ってきた気がして複雑な気持ちだった。
朔良さんは私のストーキング行為をどう捉えていたのだろう。
そもそも気づいていただろうか。
「……過ぎたことは気にしないようにしましょうか……」
終業式が終わり、いよいよ夏休みがはじまる。
私はこれからの朔良さんとの日々に、心を弾ませるのだった。
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