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第一章 変態とイケ女
弟の恋人となぜか会話をすることになりました
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「こんにちは。ってうぉっ!? 急に抱きついてくるなよ」
「えへへ~、だって早く会いたかったんだもん♡」
「さっき学校で一緒に過ごしたばっかだろ」
「むー、冷たいなぁ。でもそこがいい~!♡」
なにやら生々しい会話が扉越しに聞こえてくる。
あんなに恥ずかしがっていた琉璃が、裏声で甘えた声を出す。
ちなみに、可愛い言葉遣いになっている方が私の弟だ。
弟は男子の前で女子になりきるのが好きらしい。
女装も趣味で、どっちかというと可愛らしい顔立ちをしているから琉璃に釘付けになる男子が後を絶たないのだとか。
私のことを変態だなんだと言っていたけれど、弟もたいがい変態だ。
血は争えない……といったところか。
「んっ!? 美味しい……琉璃のくせに料理の腕上がってますね……」
こんなところに朔良さんを呼ぶ勇気もなく、一人寂しくチャーハンを食していた。
というか、そもそも朔良さんの連絡先も知らないという状況だった。
少し前まで接点がなかったから当然といえば当然だが……
「はぁ……むなしい……」
弟は家に男を連れ込んでいるというのに、私はその段階にすらいない。
琉璃はまだ中学生で、私の方が年上なのに。
くっ……リア充なんて爆発してしまえばいいんだ。
あ、でもそうすると私も爆発しちゃうかな?
「いやいや、まだなにもできてないのにそれだけは……」
「……今度はどうしたんだよ」
「はうぁっ!?」
またも琉璃は突然私の部屋に無断で侵入してくる。
こいつは暗殺者かなにかなのか?
まったく気配を感じなかったし、しかもプライバシーの侵害という言葉を理解していないように思える。
しかも、なにやらモジモジと顔を赤らめていて気持ちが……いや気味が悪い。
まさか琉璃が私に欲情するわけもないから、なにかを言いに来たのだろう。
それにしても鬱陶しい。はやく要件を言え。
「えっと、なに? どうしたんですか?」
「あー、いや、あいつが姉貴と話したいってさ。ったく、なんでなんだろうな……」
……私の耳がおかしくなったのだろうか。
琉璃がなにやらおかしなことを言っている。
いや、元は顔を合わせるつもりだったからいいけど、なぜわざわざ琉璃のパートナーは私をお呼びなのだろう。
行けばその理由がわかるとはわかっているけれど、なんとなく足が重かった。
それはもちろん、わざわざ私を呼び出す理由の見当がつかないということにある。
「まあ、仕方ないし行ってみましょうか。顔見てみたいし」
なにか裏があるのではと思いつつも、好奇心には勝てずに席を立つ。
そして琉璃はというと、複雑そうな顔をしながら私のあとについてきたのだった。
「あ、琉璃くんのお姉さんですか? はじめまして。琉璃くんとお付き合いさせてもらっています」
「あ、ど、どうも。私に話があるとか……?」
琉璃のパートナーにはじめて会ったが、礼儀正しくてなかなか好感が持てた。
アイドルほどじゃないにしても顔が整っているし、この子が琉璃のパートナーだなんて信じられないくらい優良物件のように見える。
いったいこの子は琉璃のどこに惚れたんだろうか。
「実は琉璃くんからお姉さんが女子校に通っていると伺いまして。どんな感じなんですか?」
「……女子校に興味があるんですか?」
「あ、いえ、その……なんて言うんでしょうね……未知のものに対する好奇心というか……決していやらしい意味で言ったわけではなく……!」
弟のことが好きな男の子が女子校について聞きたいなんて何事かと耳を疑ったけど、そういうことだったか。
確かに私も男子校とか気になるしなぁ。
私を呼んだのも、女子校について聞きたかったということだろう。
「そうですね……他の女子校はどうかわかりませんけど……私が通っている聖ピスではいじめとかもなく平和ですし、ただ男子がいないだけで共学とそんなに変わらない気がしますね」
「聖ピス……聖ピスタチオ女子ですか! あそこ珍名学校で有名ですよね!」
「あはは、変わってるのは学校名だけで通ってる子たちはいい人ばかりですよ」
あ、この言い方だと遠回しに私もいい人だぞというアピールをしてるみたいになってしまった。
そのことに気づいたものの、今更訂正するのもどうかと思いやめておく。
私が通っている学校――聖ピスタチオ女子高等学校は名前こそ変わっているものの、それ以外は特にいたって普通の学校だ。
女子校についてなにかを語りたくても、男子がいないという以外は共学校とも大差はないだろうと思っているから難しい。
「なるほど。つまり共学校と似たような感じなんですね」
「まあ、そうですね。なのでこれといって特にはエピソードが……あ」
「ん? どうしたんですか?」
「あ、い、いえ……その……」
なにも語ることがないかと思われたが、一点だけ萌花に心当たりがあった。
だが、これを教えてもいいものか悩ましい。
男子同士で付き合っているのだから、こんなことには興味ないだろう。
いやでも、話しておきたい気もする。
「えーっと、さっき共学校とそんなに変わらないと言いましたけど一つだけ……」
「お、なんですか?」
琉璃のパートナーはグイッと前のめりな体勢になる。
そこまで目を輝かせるほどのものでもないと思うが……
「共学校よりは……女子同士の距離が近いかなーって……」
そう。これこそが決定的に違う点。
私が小中学校と共学だった時と比べて、女子同士のスキンシップが少々激しめなのだ!
手を繋いだり抱きつきあったりするのはもはや見慣れた光景である!
……まあ、まだ私が女子校に入って二ヶ月くらいしか経っていないんだけど。
「お、お、いいじゃないですか! 素晴らしい!」
「……へ?」
「僕、実は百合が好きなんですよ! 秘密の花園を覗き込むようなことはしたくなかったんですけど、百合が好きすぎてどうしてもお聞きしたくて!」
ま、まさかの百合好き男子だったとは……
琉璃のパートナーの子による超絶な熱い語りは、何時間にも及んだのだった。
「えへへ~、だって早く会いたかったんだもん♡」
「さっき学校で一緒に過ごしたばっかだろ」
「むー、冷たいなぁ。でもそこがいい~!♡」
なにやら生々しい会話が扉越しに聞こえてくる。
あんなに恥ずかしがっていた琉璃が、裏声で甘えた声を出す。
ちなみに、可愛い言葉遣いになっている方が私の弟だ。
弟は男子の前で女子になりきるのが好きらしい。
女装も趣味で、どっちかというと可愛らしい顔立ちをしているから琉璃に釘付けになる男子が後を絶たないのだとか。
私のことを変態だなんだと言っていたけれど、弟もたいがい変態だ。
血は争えない……といったところか。
「んっ!? 美味しい……琉璃のくせに料理の腕上がってますね……」
こんなところに朔良さんを呼ぶ勇気もなく、一人寂しくチャーハンを食していた。
というか、そもそも朔良さんの連絡先も知らないという状況だった。
少し前まで接点がなかったから当然といえば当然だが……
「はぁ……むなしい……」
弟は家に男を連れ込んでいるというのに、私はその段階にすらいない。
琉璃はまだ中学生で、私の方が年上なのに。
くっ……リア充なんて爆発してしまえばいいんだ。
あ、でもそうすると私も爆発しちゃうかな?
「いやいや、まだなにもできてないのにそれだけは……」
「……今度はどうしたんだよ」
「はうぁっ!?」
またも琉璃は突然私の部屋に無断で侵入してくる。
こいつは暗殺者かなにかなのか?
まったく気配を感じなかったし、しかもプライバシーの侵害という言葉を理解していないように思える。
しかも、なにやらモジモジと顔を赤らめていて気持ちが……いや気味が悪い。
まさか琉璃が私に欲情するわけもないから、なにかを言いに来たのだろう。
それにしても鬱陶しい。はやく要件を言え。
「えっと、なに? どうしたんですか?」
「あー、いや、あいつが姉貴と話したいってさ。ったく、なんでなんだろうな……」
……私の耳がおかしくなったのだろうか。
琉璃がなにやらおかしなことを言っている。
いや、元は顔を合わせるつもりだったからいいけど、なぜわざわざ琉璃のパートナーは私をお呼びなのだろう。
行けばその理由がわかるとはわかっているけれど、なんとなく足が重かった。
それはもちろん、わざわざ私を呼び出す理由の見当がつかないということにある。
「まあ、仕方ないし行ってみましょうか。顔見てみたいし」
なにか裏があるのではと思いつつも、好奇心には勝てずに席を立つ。
そして琉璃はというと、複雑そうな顔をしながら私のあとについてきたのだった。
「あ、琉璃くんのお姉さんですか? はじめまして。琉璃くんとお付き合いさせてもらっています」
「あ、ど、どうも。私に話があるとか……?」
琉璃のパートナーにはじめて会ったが、礼儀正しくてなかなか好感が持てた。
アイドルほどじゃないにしても顔が整っているし、この子が琉璃のパートナーだなんて信じられないくらい優良物件のように見える。
いったいこの子は琉璃のどこに惚れたんだろうか。
「実は琉璃くんからお姉さんが女子校に通っていると伺いまして。どんな感じなんですか?」
「……女子校に興味があるんですか?」
「あ、いえ、その……なんて言うんでしょうね……未知のものに対する好奇心というか……決していやらしい意味で言ったわけではなく……!」
弟のことが好きな男の子が女子校について聞きたいなんて何事かと耳を疑ったけど、そういうことだったか。
確かに私も男子校とか気になるしなぁ。
私を呼んだのも、女子校について聞きたかったということだろう。
「そうですね……他の女子校はどうかわかりませんけど……私が通っている聖ピスではいじめとかもなく平和ですし、ただ男子がいないだけで共学とそんなに変わらない気がしますね」
「聖ピス……聖ピスタチオ女子ですか! あそこ珍名学校で有名ですよね!」
「あはは、変わってるのは学校名だけで通ってる子たちはいい人ばかりですよ」
あ、この言い方だと遠回しに私もいい人だぞというアピールをしてるみたいになってしまった。
そのことに気づいたものの、今更訂正するのもどうかと思いやめておく。
私が通っている学校――聖ピスタチオ女子高等学校は名前こそ変わっているものの、それ以外は特にいたって普通の学校だ。
女子校についてなにかを語りたくても、男子がいないという以外は共学校とも大差はないだろうと思っているから難しい。
「なるほど。つまり共学校と似たような感じなんですね」
「まあ、そうですね。なのでこれといって特にはエピソードが……あ」
「ん? どうしたんですか?」
「あ、い、いえ……その……」
なにも語ることがないかと思われたが、一点だけ萌花に心当たりがあった。
だが、これを教えてもいいものか悩ましい。
男子同士で付き合っているのだから、こんなことには興味ないだろう。
いやでも、話しておきたい気もする。
「えーっと、さっき共学校とそんなに変わらないと言いましたけど一つだけ……」
「お、なんですか?」
琉璃のパートナーはグイッと前のめりな体勢になる。
そこまで目を輝かせるほどのものでもないと思うが……
「共学校よりは……女子同士の距離が近いかなーって……」
そう。これこそが決定的に違う点。
私が小中学校と共学だった時と比べて、女子同士のスキンシップが少々激しめなのだ!
手を繋いだり抱きつきあったりするのはもはや見慣れた光景である!
……まあ、まだ私が女子校に入って二ヶ月くらいしか経っていないんだけど。
「お、お、いいじゃないですか! 素晴らしい!」
「……へ?」
「僕、実は百合が好きなんですよ! 秘密の花園を覗き込むようなことはしたくなかったんですけど、百合が好きすぎてどうしてもお聞きしたくて!」
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