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第二章 吸血少女は愛されたい
自分の夢を発表したい
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濃い休日を過ごしたあたしは、朝からとても頭が冴え渡っていた。
今ならなんでもできそうなほど気分がいい。
特徴的な赤くて長い髪をなびかせ、膝を高くあげてスキップをしている。
「ふふっ、うふふふふ……」
あたしはスキップをしたまま学校へ向かう。
こんなに清々しいのは初めてかもしれない。
今日はどんな日になるんだろうという期待で胸がいっぱいになった。
教室に入るといつも通りの光景が広がっている。
みんな友だちと楽しげに会話をしていたり、スマホをいじったりしている。
そんないつも通りの風景を見て、あたしも自分の席に着いた。
「……あれ?」
そこで異変に気付いた。
机の中になにかが入っている。
手を入れて取り出してみると手紙だった。
「……これって」
もしかしてラブレターなのだろうか。
……このあたしに?
女子校で女子が女子にラブレターを書くことも少なくないと、渚が言っていたことがある。
だけど、それを受け取るのは女子ウケのいいボーイッシュな子だったりみんなから慕われるリーダー的な存在の子が多い。
どうして、どちらかと言えば男ウケのよさそうな見た目のあたしなんかに……
あたしはおそるおそる封を破り、中の手紙を取り出す。
そこには一言だけ書かれていた。
〝放課後、屋上へ来てください〟
差出人の名前は書いていないけど、間違いなくこれは呼び出し状だと思われる。
一体だれがくれたのかわからないけど、とりあえず放課後行ってみるしかないだろう。
「でも、この字……どこかで……?」
手紙の字には見覚えがあるような気がした。
どこで見たのか思い出せないけど、確かに知っている字のような気がするのだ。
まあ、気のせいだと思うんだけど……
そして授業が始まり、時間が過ぎていく。
その間ずっと考え事をしていた。
そのせいか、先生の話なんてまったく聞いていなかった。
ノートも取らず、ただひたすらあの手紙のことについて考えていた。
「……」
結局、だれなのかわからずに放課後になってしまった。
ここまできたらもう行くしかない。
あたしはゆっくりと立ち上がり、屋上へと向かった。
「あ……」
屋上へと続く階段を上りきったとき、そこにいた人物を見て声が出た。
そう、それは朝に机に入っていた手紙の差出人。
あたしがよく見知った人物。
「高宮先輩……?」
そうつぶやくと、彼女はこちらを振り向く。
初めて会った時から変わらない可愛らしい顔立ち。
字を見たことがあるのは、馬術部の活動の中でメモを渡されたことがあるからだ。
「待ってましたよ」
「あたしを呼び出した理由ってなんですか?」
あたしは率直に疑問をぶつける。
呼び出されるようなことはしていないはずだ。
しかも、彼女には恋人がいることもすでに知っている。
わざわざあたしに告白してくるとは思えない。
すると、先輩は真剣な表情をして口を開いた。
「私は口下手だから、単刀直入に言いますね。私――あなたに馬術部に入ってほしいんです!」
「……はい?」
予想外の言葉を聞いて思わず聞き返してしまった。
いや、馬好きな彼女のことだから、別に意外でもないのだけど。
でも、てっきり怒られるか告白されるかのシチュエーションだと思っていたから、まさか部活への勧誘だとは思わなかった。
「この前ボス馬のマーガレットも懐いてましたし、どうですか!? 黒衣さんって帰宅部なんでしたよね!?」
「え、あぁ……はい。たしかに帰宅部ですけども……」
突然グイグイ迫ってくる先輩に戸惑いながら答える。
食い気味に来られて若干固まるも、あたしは内心嬉しかった。
だって、それはあたしから言おうとしていたことだから。
「なので、ぜひっ!」
「いいですよ」
「やっぱだめですよね……って、え?」
あっさりOKされたことで呆気に取られる彼女。
断られるとばかり思っていたんだろう。
「いいですよ。だってあたしの夢は――厩務員になることですから!」
やっと見つけた……見つかった、あたしの夢。
その宣言は、青空の下で風に乗って町に流れたのだった。
今ならなんでもできそうなほど気分がいい。
特徴的な赤くて長い髪をなびかせ、膝を高くあげてスキップをしている。
「ふふっ、うふふふふ……」
あたしはスキップをしたまま学校へ向かう。
こんなに清々しいのは初めてかもしれない。
今日はどんな日になるんだろうという期待で胸がいっぱいになった。
教室に入るといつも通りの光景が広がっている。
みんな友だちと楽しげに会話をしていたり、スマホをいじったりしている。
そんないつも通りの風景を見て、あたしも自分の席に着いた。
「……あれ?」
そこで異変に気付いた。
机の中になにかが入っている。
手を入れて取り出してみると手紙だった。
「……これって」
もしかしてラブレターなのだろうか。
……このあたしに?
女子校で女子が女子にラブレターを書くことも少なくないと、渚が言っていたことがある。
だけど、それを受け取るのは女子ウケのいいボーイッシュな子だったりみんなから慕われるリーダー的な存在の子が多い。
どうして、どちらかと言えば男ウケのよさそうな見た目のあたしなんかに……
あたしはおそるおそる封を破り、中の手紙を取り出す。
そこには一言だけ書かれていた。
〝放課後、屋上へ来てください〟
差出人の名前は書いていないけど、間違いなくこれは呼び出し状だと思われる。
一体だれがくれたのかわからないけど、とりあえず放課後行ってみるしかないだろう。
「でも、この字……どこかで……?」
手紙の字には見覚えがあるような気がした。
どこで見たのか思い出せないけど、確かに知っている字のような気がするのだ。
まあ、気のせいだと思うんだけど……
そして授業が始まり、時間が過ぎていく。
その間ずっと考え事をしていた。
そのせいか、先生の話なんてまったく聞いていなかった。
ノートも取らず、ただひたすらあの手紙のことについて考えていた。
「……」
結局、だれなのかわからずに放課後になってしまった。
ここまできたらもう行くしかない。
あたしはゆっくりと立ち上がり、屋上へと向かった。
「あ……」
屋上へと続く階段を上りきったとき、そこにいた人物を見て声が出た。
そう、それは朝に机に入っていた手紙の差出人。
あたしがよく見知った人物。
「高宮先輩……?」
そうつぶやくと、彼女はこちらを振り向く。
初めて会った時から変わらない可愛らしい顔立ち。
字を見たことがあるのは、馬術部の活動の中でメモを渡されたことがあるからだ。
「待ってましたよ」
「あたしを呼び出した理由ってなんですか?」
あたしは率直に疑問をぶつける。
呼び出されるようなことはしていないはずだ。
しかも、彼女には恋人がいることもすでに知っている。
わざわざあたしに告白してくるとは思えない。
すると、先輩は真剣な表情をして口を開いた。
「私は口下手だから、単刀直入に言いますね。私――あなたに馬術部に入ってほしいんです!」
「……はい?」
予想外の言葉を聞いて思わず聞き返してしまった。
いや、馬好きな彼女のことだから、別に意外でもないのだけど。
でも、てっきり怒られるか告白されるかのシチュエーションだと思っていたから、まさか部活への勧誘だとは思わなかった。
「この前ボス馬のマーガレットも懐いてましたし、どうですか!? 黒衣さんって帰宅部なんでしたよね!?」
「え、あぁ……はい。たしかに帰宅部ですけども……」
突然グイグイ迫ってくる先輩に戸惑いながら答える。
食い気味に来られて若干固まるも、あたしは内心嬉しかった。
だって、それはあたしから言おうとしていたことだから。
「なので、ぜひっ!」
「いいですよ」
「やっぱだめですよね……って、え?」
あっさりOKされたことで呆気に取られる彼女。
断られるとばかり思っていたんだろう。
「いいですよ。だってあたしの夢は――厩務員になることですから!」
やっと見つけた……見つかった、あたしの夢。
その宣言は、青空の下で風に乗って町に流れたのだった。
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