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第二章 吸血少女は愛されたい

したいと思ってしまい……

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「あの、なんかごめんね……変な勘違いしてて……」
「あははっ、花恋ちゃんは面白いなぁ」

 さっきの渚の「ホテル泊まりたい」発言に大きな勘違いをしていたことを正直に明かした。
 ドン引きされるかと思ったけど、渚はお腹をかかえて笑っている。
 引かれるよりはいいけど、そんなに面白いことだろうか。

「私がそういうことしたいようなやつに見える?」
「……見えない。あたしがやりたいって思ったからそのせいで勘違いしたのかも……」
「そっかそっか……って、え?」
「え?」

 あれ? なんだろうこの空気。
 二人して固まってしまった。
 お互いに顔を真っ赤にして見つめ合う。
 渚は耳まで赤く染めながら、視線を逸らしつつ口を開いた。

「……そっか。花恋ちゃん、したかったんだね」
「ち、ちがっ……くないけど! もう高校生だし!? 付き合って結構経つし!? そろそろいいかなって!」

 今まで、あたしたちは〝その〟一線を越えたことはなかった。
 それは単純にお互い初めてだったからという理由と、まだ早いんじゃないかという意見が一致したからだ。
 一緒にお風呂に入ったことはあるし、下着姿を見たことはあるし、一緒の布団で寝たことはある。
 だけど、そういうことはまったく縁がなかった。

「私は別にいつでもいいよ。花恋ちゃんさえよければ今晩する?」
「…………へ?」

 さらっととんでもない発言をされた気がするが、理解するまで時間がかかってしまった。
 今晩するってどういう意味だ。まさか泊まるってそういうことなのか。
 いやでもさすがにそれは早すぎるんじゃないだろうか。
 あたふたしていると、ふわっと抱き締められた。

「花恋ちゃん可愛いなぁ……私もしたくなってきたなぁ~」
「えっ!」
「冗談だよー」

 渚はクスクス笑いながら腕を離す。
 なんだ、びっくりした……
 心臓が止まるかと思った。

「じゃ、遊園地デート楽しもっか」

 まずはジェットコースターに乗ることにした。
 絶叫系が好きなあたしとしては嬉しいアトラクションである。
 待ち時間なく乗れたことにテンションが上がる。
 安全ベルトをつけていざ出発!

「うわっ!?」
「きゃあっ!」

 ガタンガタンッ! 急発進に体がシートに押し付けられる。
 スピードが出る瞬間思わず目を瞑ってしまったが、徐々に速度が遅くなりやがて停止した。
 ゆっくりと目を開けると、視界がグラグラ揺れていた。

「花恋ちゃん大丈夫?」
「うん。渚こそ平気?」

 隣に座っている渚を見ると、彼女は青ざめた顔色をして冷や汗を流していた。
 声をかけるとぎこちない笑顔で返してくる。
 どうやらあまり得意ではないらしい。

「花恋ちゃん、次行こっか」
「そうだね」

 次の乗り物へ移動すると、渚が手を繋いできた。
 渚と指を絡めると、妙な安心感がある。
 上手く言葉にできないけど、すごくいい気分だ。
 二人で手を繋いだまま、アトラクションに乗り込んだ。

「うわああぁぁぁ!」
「ひゃあぁぁぁ!」

 グルングルン回転しながら宙を舞う。
 遠心力で振り回され、目が回る。
 隣の渚を見ると、彼女も同じ気持ちらしく目が回ってフラフラしていた。
 二人して地面に降り立つと、すぐに近くのベンチに座り込む。

「はしゃぎすぎた……」
「うん……ちょっと休もう」

 ベンチで休憩してから、また別のアトラクションへ向かった。
 楽しい時間はあっという間に過ぎていく。
 あたしたちは夕方になるまで遊んで、最後に観覧車に乗った。
 夕陽に染まる景色はとても綺麗だ。

「花恋ちゃん、今日一日楽しかった?」
「もちろん。渚からの一世一代の告白も聞けたしねー」
「ちょっ、それは忘れてよ!」

 あたしたちはいつも通りくだらない話をしながら笑って過ごした。
 もう夕方になっちゃったか。
 名残惜しいけど、あたしは渚に言わなきゃいけないことがある。

「ん、どうしたの?」

 真剣な表情をしているあたしを見て、渚も察してくれたようだ。
 緊張した面持ちになりながら、あたしの言葉を待つ。
 あたしは大きく深呼吸して、自分の想いを口に出した。

「あたし、ホテル泊まりたい」
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