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第二章 吸血少女は愛されたい
衝撃的な出会い
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散々な目に遭った。
自分が悪いことはわかるけど、まさかあたしの苦手な納豆を出されるとは思わなかった。
そんなショックからか、いつもなら見慣れたはずの景色が変わって見える。
……ん? そういえば……ここ、どこ?
今更ながらに自分がどこにいるのか疑問を抱く。
「ほんとにどこだ……全然わからない……」
辺りを見回すも、木々が多くて見晴らしが悪い。
木の葉で太陽の光は遮られていて薄暗いため、余計に見づらいのだ。
「えーっと……家はどっちだ?」
現在地がわからないため、とりあえず前に進んでみる。
ここは住宅街ではなく、山の中に来てしまったのではと思うほど緑一色。
でも、一応道はあるみたいだし、人が通るところまで行けば何とかなるはず……
「あわわわ……! 待って待ってー!」
「え?」
なにやら右の方からなにかが近づいてくる音と声がする。
そちらへ視線を向けると、一人の少女が全速力で走ってきていた。
見た目的にあたしより少し年上だろうか。
肩までいかないくらいの長さの黒髪で、くせ毛なのかふわふわしている。
服装はピンクのパーカーにジーパン姿というラフなものだった。
――いやいや、こんなにのんきに分析している暇はない!
なぜなら、その子のすぐ下には大きな馬がいるから。
しかも、その馬が少女とともにこっちに向かって突進してきていたのだから。
「うっそぉ!?」
「あぁ、もう! 止まれって言ってるのに!」
その人は馬に言い聞かせるように、手綱を力強く引っ張っている。
だけど、馬はその言葉を聞いていないかのように、まったく止まる気配がない。
そして、まっすぐこちらへと迫ってくる。
「ひぃっ!」
思わず叫んだものの、どうすることもできず、目をつぶることしかできなかった。
そのまま、ぶつかると思った瞬間……急ブレーキがかかったように動きが止まる。
「……あれ?」
恐る恐る目を開けると、さっきの少女があたしの前にいた。
その横には先ほどの馬もいる。
「ごめんなさい! この子ったら暴走しちゃって!」
「い、いえ……大丈夫ですけど……」
目の前で起きたことに驚きつつも返事をする。
すると、彼女はほっとした表情を浮かべた。
「よかった……あの、お怪我とかありませんか?」
「はい。なんともないので気にしないでください」
「本当にすみません……」
申し訳なさそうに頭を下げる彼女。
なんだかこっちが悪いことをした気分になる。
それよりも気になったのは彼女の容姿だった。
ところどころについている砂汚れのせいで遠目ではわからなかったけど、よく見ると顔立ちがよく整っていて人形のような美しさがある。
瞳は大きくて吸い込まれそうな感じがするほど綺麗だ。
髪の色も黒く艶があって、まさにやまとなでしこのようだった。
「あ、あの……あんまり見つめられると……恥ずかしいのですが……」
「あっ! す、すいません!」
無意識のうちにじっと見てしまっていたらしい。
慌てて謝ると、その人は頬を赤く染めて照れた様子を見せた。
かわいい。すごくかわいいんだけど……
でも、今はそんなことよりも大事なことがある。
「ところで、どうしてこんなとこで馬に乗ってたんですか?」
「あー、実はこの近くに牧場があるんですよ。そこから暴走しちゃって……」
困りました、と苦笑いを浮かべる彼女。
あたしもそれに合わせて笑うしかなかった。
まさか、あんなスピードで突っ込んでくるとは思ってなかったからね……
「では、そろそろ失礼します。その……この子、牧場に戻しにいかないとなので」
ぺこりと軽く会釈してから、馬に乗る彼女。
このまま行かせてもよかったのかもしれない。
だけど、なぜか今日のあたしは渚以外の人と話したい気分だった。
「あの……もしよかったら、あたしも牧場に行ってもいいですか?」
自分が悪いことはわかるけど、まさかあたしの苦手な納豆を出されるとは思わなかった。
そんなショックからか、いつもなら見慣れたはずの景色が変わって見える。
……ん? そういえば……ここ、どこ?
今更ながらに自分がどこにいるのか疑問を抱く。
「ほんとにどこだ……全然わからない……」
辺りを見回すも、木々が多くて見晴らしが悪い。
木の葉で太陽の光は遮られていて薄暗いため、余計に見づらいのだ。
「えーっと……家はどっちだ?」
現在地がわからないため、とりあえず前に進んでみる。
ここは住宅街ではなく、山の中に来てしまったのではと思うほど緑一色。
でも、一応道はあるみたいだし、人が通るところまで行けば何とかなるはず……
「あわわわ……! 待って待ってー!」
「え?」
なにやら右の方からなにかが近づいてくる音と声がする。
そちらへ視線を向けると、一人の少女が全速力で走ってきていた。
見た目的にあたしより少し年上だろうか。
肩までいかないくらいの長さの黒髪で、くせ毛なのかふわふわしている。
服装はピンクのパーカーにジーパン姿というラフなものだった。
――いやいや、こんなにのんきに分析している暇はない!
なぜなら、その子のすぐ下には大きな馬がいるから。
しかも、その馬が少女とともにこっちに向かって突進してきていたのだから。
「うっそぉ!?」
「あぁ、もう! 止まれって言ってるのに!」
その人は馬に言い聞かせるように、手綱を力強く引っ張っている。
だけど、馬はその言葉を聞いていないかのように、まったく止まる気配がない。
そして、まっすぐこちらへと迫ってくる。
「ひぃっ!」
思わず叫んだものの、どうすることもできず、目をつぶることしかできなかった。
そのまま、ぶつかると思った瞬間……急ブレーキがかかったように動きが止まる。
「……あれ?」
恐る恐る目を開けると、さっきの少女があたしの前にいた。
その横には先ほどの馬もいる。
「ごめんなさい! この子ったら暴走しちゃって!」
「い、いえ……大丈夫ですけど……」
目の前で起きたことに驚きつつも返事をする。
すると、彼女はほっとした表情を浮かべた。
「よかった……あの、お怪我とかありませんか?」
「はい。なんともないので気にしないでください」
「本当にすみません……」
申し訳なさそうに頭を下げる彼女。
なんだかこっちが悪いことをした気分になる。
それよりも気になったのは彼女の容姿だった。
ところどころについている砂汚れのせいで遠目ではわからなかったけど、よく見ると顔立ちがよく整っていて人形のような美しさがある。
瞳は大きくて吸い込まれそうな感じがするほど綺麗だ。
髪の色も黒く艶があって、まさにやまとなでしこのようだった。
「あ、あの……あんまり見つめられると……恥ずかしいのですが……」
「あっ! す、すいません!」
無意識のうちにじっと見てしまっていたらしい。
慌てて謝ると、その人は頬を赤く染めて照れた様子を見せた。
かわいい。すごくかわいいんだけど……
でも、今はそんなことよりも大事なことがある。
「ところで、どうしてこんなとこで馬に乗ってたんですか?」
「あー、実はこの近くに牧場があるんですよ。そこから暴走しちゃって……」
困りました、と苦笑いを浮かべる彼女。
あたしもそれに合わせて笑うしかなかった。
まさか、あんなスピードで突っ込んでくるとは思ってなかったからね……
「では、そろそろ失礼します。その……この子、牧場に戻しにいかないとなので」
ぺこりと軽く会釈してから、馬に乗る彼女。
このまま行かせてもよかったのかもしれない。
だけど、なぜか今日のあたしは渚以外の人と話したい気分だった。
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