35 / 62
第二章 吸血少女は愛されたい
一緒にお弁当を食べたい?
しおりを挟む
あたしは渚とのやり取りですっかり魂が抜けていた。
クラスメイトみんなが心配になるほどだったようで、頬に手を当ててみたら口角があがっているのがわかった。
「うふふふ……」
「花恋ちゃん、なにかいいことあった?」
「えへへー」
ニヤけていると夏樹ちゃんからそう聞かれたけど、答えようがなかった。
頬はゆるみきっているけど、思考まではゆるんでいない。
ちゃんと渚との関係性は伏せるつもりだ。
「わかる? わかっちゃう?」
「あ、なんだかめんどくさそうな香り……」
めんどくさいとは失礼な!
まあでも、結局重要なことは伏せたままにするのは確かにモヤモヤするだろう。
それをめんどくさそうと感じるのは致し方ないことか。
でも、渚があたしたちの関係性を秘密にしたいと言っている以上、確信的な部分を話すわけにはいかない。
あたしが顔をゆるませっぱなしにしているから悪いのだろうが、こういう時にどう言えばいいかがわからない。
「じゃあ、そんなことを言う夏樹ちゃんには教えてあげなーい」
「えー、なにそれ」
困ったように笑うも、それ以上は追求してこない。
あたしはそれがありがたいと思いつつ、本当のこと言えなくて申し訳ないなとも思ったのだった。
「あの、少しいいですか?」
お昼休みの時間になると、また渚の妹が声をかけてきた。
……なんだかデジャブを感じる。
だけど、やっぱりあの頃から雰囲気がやわらかくて優しい。
「ん……なに?」
「今日もお姉ちゃんと一緒にご飯を食べないんですか?」
「あー、うん。渚はクラスの友だちと食べたいかなって……って、なんでいつも一緒に食べてないこと知ってるの!?」
「え、そりゃお姉ちゃんに聞けばすぐわかるし……そんなことより、お昼は一人ってことですよね?」
「え、まあ、そういうことになるかな」
あたしの言葉を聞くなり、彼女は表情を変えた。
ちょっと嬉しそうだ。
一体どういう感情なのかよくわからない。
この前まで敵対していたから、なにか裏があるのではと身構えてしまう。
しかし、そんなあたしの心中を置き去りに、彼女はおもむろに自分の手提げ袋の中を探るとなにかを取り出した。
それは小さなお弁当箱だった。
「もしよかったら、私とお昼食べませんか?」
「……え?」
予想外すぎる提案を受けてポカンとする。
あたしの反応を見て彼女は慌てて「あ、嫌なら無理強いはしないですけど……!」と言った。
まるで断られるとでも思っているような感じだ。
実際断る気満々ではいたんだけど……
きっと勇気を振り絞って来てくれたんだと思うと、断るにも断れなかった。
「いや、別に嫌じゃないよ」
「わぁ……! じゃあ決まりですね。行きましょう!」
「あ、ちょっ、まっ……!」
あたしもお弁当を出すと、強引に手を引かれて廊下に出る。
彼女の歩くスピードについていくのがやっとだった。
振り払おうかと思ったけど、ここで彼女を突き放したらかわいそうな気がしたからやめた。
そのまま食堂に向かうのかと思っていたが、彼女が向かった先は昼間は人通りの少ない図書館だった。
その手前にはベンチが置いてあり、簡易的ではあるが休憩スペースが作られている。
渚の妹はここに座ってお昼を食べたいらしい。
図書館を利用する生徒もいるみたいだが、このベンチは無人の状態だった。
「ここ、静かでいいんですよね」
「あー、そうかも」
確かにここは静かな場所だ。
周りは緑が生い茂り、風情があって気持ちが落ち着く。
生徒数の多い星花女子学園には珍しい、のどかなところ。
しかし、ここに来てなんの話をしようというのか。
「あの……お姉ちゃんとのことでお話があるんです」
クラスメイトみんなが心配になるほどだったようで、頬に手を当ててみたら口角があがっているのがわかった。
「うふふふ……」
「花恋ちゃん、なにかいいことあった?」
「えへへー」
ニヤけていると夏樹ちゃんからそう聞かれたけど、答えようがなかった。
頬はゆるみきっているけど、思考まではゆるんでいない。
ちゃんと渚との関係性は伏せるつもりだ。
「わかる? わかっちゃう?」
「あ、なんだかめんどくさそうな香り……」
めんどくさいとは失礼な!
まあでも、結局重要なことは伏せたままにするのは確かにモヤモヤするだろう。
それをめんどくさそうと感じるのは致し方ないことか。
でも、渚があたしたちの関係性を秘密にしたいと言っている以上、確信的な部分を話すわけにはいかない。
あたしが顔をゆるませっぱなしにしているから悪いのだろうが、こういう時にどう言えばいいかがわからない。
「じゃあ、そんなことを言う夏樹ちゃんには教えてあげなーい」
「えー、なにそれ」
困ったように笑うも、それ以上は追求してこない。
あたしはそれがありがたいと思いつつ、本当のこと言えなくて申し訳ないなとも思ったのだった。
「あの、少しいいですか?」
お昼休みの時間になると、また渚の妹が声をかけてきた。
……なんだかデジャブを感じる。
だけど、やっぱりあの頃から雰囲気がやわらかくて優しい。
「ん……なに?」
「今日もお姉ちゃんと一緒にご飯を食べないんですか?」
「あー、うん。渚はクラスの友だちと食べたいかなって……って、なんでいつも一緒に食べてないこと知ってるの!?」
「え、そりゃお姉ちゃんに聞けばすぐわかるし……そんなことより、お昼は一人ってことですよね?」
「え、まあ、そういうことになるかな」
あたしの言葉を聞くなり、彼女は表情を変えた。
ちょっと嬉しそうだ。
一体どういう感情なのかよくわからない。
この前まで敵対していたから、なにか裏があるのではと身構えてしまう。
しかし、そんなあたしの心中を置き去りに、彼女はおもむろに自分の手提げ袋の中を探るとなにかを取り出した。
それは小さなお弁当箱だった。
「もしよかったら、私とお昼食べませんか?」
「……え?」
予想外すぎる提案を受けてポカンとする。
あたしの反応を見て彼女は慌てて「あ、嫌なら無理強いはしないですけど……!」と言った。
まるで断られるとでも思っているような感じだ。
実際断る気満々ではいたんだけど……
きっと勇気を振り絞って来てくれたんだと思うと、断るにも断れなかった。
「いや、別に嫌じゃないよ」
「わぁ……! じゃあ決まりですね。行きましょう!」
「あ、ちょっ、まっ……!」
あたしもお弁当を出すと、強引に手を引かれて廊下に出る。
彼女の歩くスピードについていくのがやっとだった。
振り払おうかと思ったけど、ここで彼女を突き放したらかわいそうな気がしたからやめた。
そのまま食堂に向かうのかと思っていたが、彼女が向かった先は昼間は人通りの少ない図書館だった。
その手前にはベンチが置いてあり、簡易的ではあるが休憩スペースが作られている。
渚の妹はここに座ってお昼を食べたいらしい。
図書館を利用する生徒もいるみたいだが、このベンチは無人の状態だった。
「ここ、静かでいいんですよね」
「あー、そうかも」
確かにここは静かな場所だ。
周りは緑が生い茂り、風情があって気持ちが落ち着く。
生徒数の多い星花女子学園には珍しい、のどかなところ。
しかし、ここに来てなんの話をしようというのか。
「あの……お姉ちゃんとのことでお話があるんです」
0
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
実る果実に百合を添えて
楠富 つかさ
恋愛
私、佐野いちごが入学した女子校には生徒が思い思いのメンバーを集めてお茶会をする文化があって、私が誘われた”果実会”はフルーツに縁のある名前の人が集まっている。
そんな果実会にはあるジンクスがあって……それは”いちご”の名前を持つ生徒と付き合えば幸せになれる!? 待って、私、女の子と付き合うの!?
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ストーキングは愛の証!【完結済み】
M・A・J・O
恋愛
○月○日
今日はさっちゃん先輩とたくさんお話出来た。すごく嬉しい。
さっちゃん先輩の家はなんだかいい匂いがした。暖かくて優しい匂い。
今度また家にお邪魔したいなぁ。
あ、でも、今日は私の知らない女の子と楽しそうに話してた。
今度さっちゃん先輩を問い詰めなきゃ。
――稲津華緒、『さっちゃん先輩観察日記』より。
☆ ☆ ☆
星花女子学園――可愛くて大胆な女子たちが集う女子校。
篠宮沙友理は、そこで二年の時を過ごしてきた。
そして三年生。最終学年の時に、一年生の稲津華緒と再び出会う。
華緒とは衝撃的な出会いをしたため、沙友理はしばらく経っても忘れられなかった。
そんな華緒が沙友理をストーキングしていることに、沙友理は気づいていない。
そして、自分の観察日記を付けられていることにも。
……まあ、それでも比較的穏やかな日常を送っていた。
沙友理はすぐに色々な人と仲良くなれる。
そのため、人間関係であまり悩んできたことがない。
――ただ一つのことを除いて。
・表紙絵はTwitterのフォロワー様より。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ばじゅてんっ!〜馬術部の天使と不思議な聖女〜【完結済み】
M・A・J・O
キャラ文芸
馬が好きな女子高生、高宮沙織(たかみやさおり)は伝統のある星花女子学園に通っている。
そこは特段、馬術で有名な学校……とかではないのだが、馬術部の先生が優しくて気に入っている。
どこかの誰かとは大違いなほどに――
馬術の才能がある沙織は一年生にもかかわらず、少人数の馬術部員の中で成績がずば抜けていた。
そんな中、沙織はある人が気になっていた。
その人は沙織の一つ先輩である、渡島嫩(おしまふたば)。
彼女は心優しく、誰にでも尽くしてしまうちょっと変わった先輩だ。
「なんであんなに優しいのに、それが怖いんだろう……」
沙織はのちに、彼女が誰にでも優しい理由を知っていくこととなる……
・表紙絵はくめゆる様(@kumeyuru)より。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ARIA(アリア)
残念パパいのっち
ミステリー
山内亮(やまうちとおる)は内見に出かけたアパートでAR越しに不思議な少女、西園寺雫(さいおんじしずく)と出会う。彼女は自分がAIでこのアパートに閉じ込められていると言うが……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる