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第一章 吸血少女は傷つけたい
救世主みたい
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渚の言葉を聞いて、一人で不安になっていた自分がバカらしくなる。
渚はこんなにもあたしのことを想ってくれているというのに。
「……ありがと」
だから、そのお礼を言った。
ちゃんとした言葉では言えなかったかもしれないけど、それでも気持ちは伝わったはずだ。
「うん。だからね、花恋ちゃんはゆっくり自分の夢を探せばいいと思う」
「そうだね……あたし、焦ってたのかも」
そうか、あたしは焦っていたんだ。
将来のことをなにも考えていなかったから、今あるものに集中しすぎて未来を見据えることを忘れていた。
〝渚〟という、今あるものに。
「……ゆっくり探すよ。もし渚と同じ大学に入れなかったとしても、渚がずっとあたしを好きでいてくれたら……頑張れる気がするから」
あたしの答えに、渚は嬉しそうに微笑んでくれる。
よく考えたら、違う学校に行くだけで渚の気持ちも離れていくなんてことは有り得ない。
だってあたしたちは、小学生の頃から好き同士でいるんだから。
もしもこの先、渚とは別の道を歩もうとも、きっとあたしのことを好きでいてくれるはず。
渚が行きたい大学へ進学するまでに、あたしも自分の進むべき道を見つけようと思った。
「ねぇ花恋ちゃん、キスしていいかな?」
「え? なんで? いつも嫌がるのに」
「あー……将来の話したらさ、ちょっと寂しくなっちゃって」
えへへと照れ笑いしながら頬を掻く渚を見て、思わず笑ってしまう。
あたしはベッドに座っている彼女の隣に移動すると、座ったまま腕を伸ばして渚の首に絡めた。
そしてそのまま引き寄せると、唇を重ねる。
触れるだけの優しい口づけをして、すぐに離した。
「あ、そういえばあたしからしちゃったね」
「あー……そうだね。でも花恋ちゃんからのキス、苦しいことされなければ結構好きだよ」
「ふふっ、じゃあもっとしちゃおうか」
今度は自分から顔を近づけて唇を重ねた。
触れ合うだけでなく、啄むように何度も角度を変えて重ね合わせているうちに、舌を絡ませる深いものになる。
お互いに息継ぎをしながら、お互いを求めあった。
「んぅ……」
長い時間そうしていたせいか、さすがのあたしも頭がくらっとしてくる。
このままだとやばいかもと思い始めた頃、ようやく渚の顔が離れた。
「はぁ……なんか……すごいことになっちゃったね」
「ふぅ……渚も案外耐えれるじゃん。こんなにもたないと思ってたよ」
「ふふん、私も日々成長し続けてるってことかな」
二人で顔を見合わせて苦笑いする。
それからどちらともなく手を繋ぐと、二人並んでベッドに倒れ込んだ。
お風呂に入ってないことを思い出したけど、一日くらいいいかと思い直す。
今日は疲れたから、ぐっすり眠れそうな気がする。
「花恋ちゃん、一緒に寝ようか」
「うん、そうする」
渚が枕元にあるリモコンを操作して部屋の電気を消すと、部屋は真っ暗になった。
暗闇の中、隣の温もりを感じながら目を閉じる。
「おやすみ、花恋ちゃん」
「おやすみ、渚」
明日も明後日もそのまた次の日も、こうして手を繋いで眠りたいと思う。
そんな願いを抱きつつ、あたしは心地よい睡魔に誘われていった。
……かと思ったが。
「あたしの夢って、なんだろうな」
渚はゆっくり見つければいいと言っていたけど、当の本人は小さい頃からお母さんと一緒の仕事に就きたいと言っていた。
そして、それは今も変わらないらしい。
あたしにはそんなもの、なにもない。
やりたいこともなりたいものもない――空っぽな存在。
それを再確認したのがとてもつらかった。
夢を追う渚のことが、いつにも増してキラキラして見えた。
「でも渚がいてくれれば、それでいっか」
渚のことを考えると、眠気はまたすぐに襲ってきた。
明日起きたらまた新しい一日が始まる。
それはとても幸せで尊いもので……ずっと続いて欲しいと思うほど愛おしいものだった。
渚はこんなにもあたしのことを想ってくれているというのに。
「……ありがと」
だから、そのお礼を言った。
ちゃんとした言葉では言えなかったかもしれないけど、それでも気持ちは伝わったはずだ。
「うん。だからね、花恋ちゃんはゆっくり自分の夢を探せばいいと思う」
「そうだね……あたし、焦ってたのかも」
そうか、あたしは焦っていたんだ。
将来のことをなにも考えていなかったから、今あるものに集中しすぎて未来を見据えることを忘れていた。
〝渚〟という、今あるものに。
「……ゆっくり探すよ。もし渚と同じ大学に入れなかったとしても、渚がずっとあたしを好きでいてくれたら……頑張れる気がするから」
あたしの答えに、渚は嬉しそうに微笑んでくれる。
よく考えたら、違う学校に行くだけで渚の気持ちも離れていくなんてことは有り得ない。
だってあたしたちは、小学生の頃から好き同士でいるんだから。
もしもこの先、渚とは別の道を歩もうとも、きっとあたしのことを好きでいてくれるはず。
渚が行きたい大学へ進学するまでに、あたしも自分の進むべき道を見つけようと思った。
「ねぇ花恋ちゃん、キスしていいかな?」
「え? なんで? いつも嫌がるのに」
「あー……将来の話したらさ、ちょっと寂しくなっちゃって」
えへへと照れ笑いしながら頬を掻く渚を見て、思わず笑ってしまう。
あたしはベッドに座っている彼女の隣に移動すると、座ったまま腕を伸ばして渚の首に絡めた。
そしてそのまま引き寄せると、唇を重ねる。
触れるだけの優しい口づけをして、すぐに離した。
「あ、そういえばあたしからしちゃったね」
「あー……そうだね。でも花恋ちゃんからのキス、苦しいことされなければ結構好きだよ」
「ふふっ、じゃあもっとしちゃおうか」
今度は自分から顔を近づけて唇を重ねた。
触れ合うだけでなく、啄むように何度も角度を変えて重ね合わせているうちに、舌を絡ませる深いものになる。
お互いに息継ぎをしながら、お互いを求めあった。
「んぅ……」
長い時間そうしていたせいか、さすがのあたしも頭がくらっとしてくる。
このままだとやばいかもと思い始めた頃、ようやく渚の顔が離れた。
「はぁ……なんか……すごいことになっちゃったね」
「ふぅ……渚も案外耐えれるじゃん。こんなにもたないと思ってたよ」
「ふふん、私も日々成長し続けてるってことかな」
二人で顔を見合わせて苦笑いする。
それからどちらともなく手を繋ぐと、二人並んでベッドに倒れ込んだ。
お風呂に入ってないことを思い出したけど、一日くらいいいかと思い直す。
今日は疲れたから、ぐっすり眠れそうな気がする。
「花恋ちゃん、一緒に寝ようか」
「うん、そうする」
渚が枕元にあるリモコンを操作して部屋の電気を消すと、部屋は真っ暗になった。
暗闇の中、隣の温もりを感じながら目を閉じる。
「おやすみ、花恋ちゃん」
「おやすみ、渚」
明日も明後日もそのまた次の日も、こうして手を繋いで眠りたいと思う。
そんな願いを抱きつつ、あたしは心地よい睡魔に誘われていった。
……かと思ったが。
「あたしの夢って、なんだろうな」
渚はゆっくり見つければいいと言っていたけど、当の本人は小さい頃からお母さんと一緒の仕事に就きたいと言っていた。
そして、それは今も変わらないらしい。
あたしにはそんなもの、なにもない。
やりたいこともなりたいものもない――空っぽな存在。
それを再確認したのがとてもつらかった。
夢を追う渚のことが、いつにも増してキラキラして見えた。
「でも渚がいてくれれば、それでいっか」
渚のことを考えると、眠気はまたすぐに襲ってきた。
明日起きたらまた新しい一日が始まる。
それはとても幸せで尊いもので……ずっと続いて欲しいと思うほど愛おしいものだった。
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