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第一章 吸血少女は傷つけたい
一人でいかせない
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「え、一緒の大学って……」
「もう決めた! あたしは渚と一緒にいたい!」
「いや、気持ちは嬉しいけど……結構偏差値高いとこ目指してるよ? 大丈夫?」
渚が志望している大学はかなり難関な方で、正直今のあたしでは太刀打ちできないだろう。
だから渚はこれからの一年を勉強に費やすつもりなんだと思う。
渚でもギリギリ合格できるかどうかというところで、一緒に行くとなると相当大変な思いをしなくてはならないに違いない。
それでも渚と離れたくないから、同じ大学に進学したいと思った。
「それに、もし一緒の大学に入れたとしても花恋ちゃんは私の一年遅れで入ることになるんだよ?」
「そ、それは……」
忘れていたわけではない。
あたしと渚が一学年違うことを。
だけどそんなこと気にならないくらいに、これからもずっと一緒に居たいと思っていたのだ。
渚と同じ学校に通いたい。その思いはウソじゃない。
一年経とうが二年経とうが、そんなことは関係ない。
でも渚の言葉を聞いているうちにだんだん不安になってきて、泣きそうになっていると彼女は言った。
「私は花恋ちゃんにはもっと色んなことに挑戦してほしいと思っているんだ」
「……」
「私は看護師になりたいって夢がある。だから大学に行くの。花恋ちゃんにもそのうち夢が見つかるはずだから……私のせいで花恋ちゃんの進路を狭めたくないんだよ」
「うぅっ……」
優しい声で諭されるように言われると、ますます涙腺が崩壊しそうになる。
しかしここで泣けば余計に子供扱いされて情けない奴だと思われてしまう。
あたしは必死に耐えた。
そして我慢していた分、声を出して泣いてしまった。
「ひぐっ……じゃあ、じゃあっ……あたしも看護師になるもん」
「え!? ちょ、ちょっと待ってよ。どうしてそうなるの?」
渚は目を見開いて驚く。
あたしのあまりのわがままっぷりに困惑しているみたいだ。
「花恋ちゃんが本気で目指すなら応援するけど、私の後を追う必要はないでしょう?」
「ある! 渚を追いかけて、絶対看護師になるんだから!」
だって好きな人のそばにいたいと思うのは当たり前のことじゃんか。
この先、あたしの人生において渚以上の人は現れないだろう。
こんな気持ちになったのは初めてなんだ。
渚以外なんて考えられない。
渚とバラバラになることも考えられない。
どうしたらわかってくれるのか悩んでいると、渚はため息をついた。
「あのね、花恋ちゃんの人生は花恋ちゃんのものなんだよ。私を追いかけることで花恋ちゃんの人生を台無しにしたくないの。お願い……わかって」
いつになく優しく――冷たい言葉。
渚が言っていることはわかるけれど、納得はできない。
渚が離れていこうとするのなら、追いかければいいだけじゃないか。
どうしてダメなのかわからない。
すると、突然あたしの腕を掴んだ渚が真剣な顔つきになった。
「花恋ちゃん、よく聞いて」
「……うん」
今まで見たことのないような鋭い眼差しで見つめられ、心臓がドキドキしてきた。
なにを言われるんだろう……
思わず身を固くして待っていると、彼女はゆっくりと口を開いた。
「私は花恋ちゃんのことを愛しています」
「へっ!?」
唐突すぎる愛の告白に驚いていると、渚はそのまま話を続けた。
「私と花恋ちゃんがもし離れ離れになったとしても、私はずっと花恋ちゃんのこと好きだよ。だから安心して?」
「え……それってどういう……」
まるでこれから別れることが前提のような言い方をする渚に戸惑っていると、彼女は笑顔で言った。
渚の笑顔は、あたしをものすごく安心させる。
まるで、魔法がかかっているみたいに。
「私が卒業しても、大人になっても……お互いがおばあちゃんになるまで好きでいてあげるから」
「ふぇっ!?」
衝撃的な発言に、涙なんか一気に引っ込んだ。
今とてつもなくすごいことを言われた気がするんだけど、幻聴だろうか。
混乱しながら目の前にいる渚を見ると、彼女は頬を赤く染めながら照れくさそうにしている。
そんな様子を見て、あたしの不安が涙とともに消え去っていくのを感じた。
「もう決めた! あたしは渚と一緒にいたい!」
「いや、気持ちは嬉しいけど……結構偏差値高いとこ目指してるよ? 大丈夫?」
渚が志望している大学はかなり難関な方で、正直今のあたしでは太刀打ちできないだろう。
だから渚はこれからの一年を勉強に費やすつもりなんだと思う。
渚でもギリギリ合格できるかどうかというところで、一緒に行くとなると相当大変な思いをしなくてはならないに違いない。
それでも渚と離れたくないから、同じ大学に進学したいと思った。
「それに、もし一緒の大学に入れたとしても花恋ちゃんは私の一年遅れで入ることになるんだよ?」
「そ、それは……」
忘れていたわけではない。
あたしと渚が一学年違うことを。
だけどそんなこと気にならないくらいに、これからもずっと一緒に居たいと思っていたのだ。
渚と同じ学校に通いたい。その思いはウソじゃない。
一年経とうが二年経とうが、そんなことは関係ない。
でも渚の言葉を聞いているうちにだんだん不安になってきて、泣きそうになっていると彼女は言った。
「私は花恋ちゃんにはもっと色んなことに挑戦してほしいと思っているんだ」
「……」
「私は看護師になりたいって夢がある。だから大学に行くの。花恋ちゃんにもそのうち夢が見つかるはずだから……私のせいで花恋ちゃんの進路を狭めたくないんだよ」
「うぅっ……」
優しい声で諭されるように言われると、ますます涙腺が崩壊しそうになる。
しかしここで泣けば余計に子供扱いされて情けない奴だと思われてしまう。
あたしは必死に耐えた。
そして我慢していた分、声を出して泣いてしまった。
「ひぐっ……じゃあ、じゃあっ……あたしも看護師になるもん」
「え!? ちょ、ちょっと待ってよ。どうしてそうなるの?」
渚は目を見開いて驚く。
あたしのあまりのわがままっぷりに困惑しているみたいだ。
「花恋ちゃんが本気で目指すなら応援するけど、私の後を追う必要はないでしょう?」
「ある! 渚を追いかけて、絶対看護師になるんだから!」
だって好きな人のそばにいたいと思うのは当たり前のことじゃんか。
この先、あたしの人生において渚以上の人は現れないだろう。
こんな気持ちになったのは初めてなんだ。
渚以外なんて考えられない。
渚とバラバラになることも考えられない。
どうしたらわかってくれるのか悩んでいると、渚はため息をついた。
「あのね、花恋ちゃんの人生は花恋ちゃんのものなんだよ。私を追いかけることで花恋ちゃんの人生を台無しにしたくないの。お願い……わかって」
いつになく優しく――冷たい言葉。
渚が言っていることはわかるけれど、納得はできない。
渚が離れていこうとするのなら、追いかければいいだけじゃないか。
どうしてダメなのかわからない。
すると、突然あたしの腕を掴んだ渚が真剣な顔つきになった。
「花恋ちゃん、よく聞いて」
「……うん」
今まで見たことのないような鋭い眼差しで見つめられ、心臓がドキドキしてきた。
なにを言われるんだろう……
思わず身を固くして待っていると、彼女はゆっくりと口を開いた。
「私は花恋ちゃんのことを愛しています」
「へっ!?」
唐突すぎる愛の告白に驚いていると、渚はそのまま話を続けた。
「私と花恋ちゃんがもし離れ離れになったとしても、私はずっと花恋ちゃんのこと好きだよ。だから安心して?」
「え……それってどういう……」
まるでこれから別れることが前提のような言い方をする渚に戸惑っていると、彼女は笑顔で言った。
渚の笑顔は、あたしをものすごく安心させる。
まるで、魔法がかかっているみたいに。
「私が卒業しても、大人になっても……お互いがおばあちゃんになるまで好きでいてあげるから」
「ふぇっ!?」
衝撃的な発言に、涙なんか一気に引っ込んだ。
今とてつもなくすごいことを言われた気がするんだけど、幻聴だろうか。
混乱しながら目の前にいる渚を見ると、彼女は頬を赤く染めながら照れくさそうにしている。
そんな様子を見て、あたしの不安が涙とともに消え去っていくのを感じた。
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