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第一章 吸血少女は傷つけたい
自分はいない方がいい?
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ようやく渚の家に到着した時、ようやく実感がわいてきて妙に緊張していた。
この前は会えなかったし、小学生以来会ってないと思うから余計に心臓の鼓動がはやくなってしまう。
「あ、あの……お邪魔します」
「どうぞ~! って、なんで敬語?」
「い、いや、つい……」
靴を脱いでリビングへ案内されると、そこには綺麗なキッチンがあった。
家に家族がいると言っていたのに、渚の家族の姿がどこにもない。
妹くらいはすぐに出てきて、お姉ちゃんに「おかえり」って駆け寄ったらあたしがいて顔を歪ませそうだなと思っていたのだけど……
というか、その反応を期待していたのに。
「ありゃ、お母さんたち寝ちゃってるのかな。珍しい」
テーブルには飲みかけの紅茶と食べかけのケーキが置かれていた。
どうやら片付けもする余裕がないまま眠ってしまったらしい。
もしかしたら寝室にいるのかな?
そう思いながら渚についていき二階へと上がる。
すると部屋の中には誰もおらず……と思いきや、ベッドの上でぐっすり眠っているお母様がいた。
ついでに妹も一緒のベッドで寝ているらしい。
仲がいいんだなと思いつつ、自分も前にこれと似たような状況になっていたことを思い出して複雑な気持ちになる。
「あー……やっぱぐっすり寝ちゃってるね。ごめん花恋ちゃん、ちょっと片付け手伝ってもらえる?」
「うん、もちろん。渚の頼みは断れないよ」
「あはは、いつもありがとう」
苦笑しながら渚はテーブルの上に散らかっていたものをテキパキとまとめていく。
そしてゴミ袋を持ってくると、さっきまであったものを全てその中に放り込んでいった。
その手際のよさに感心していると、ふと気になったことがある。
「そういえば、渚のお母さんたちってこんなに散らかしたまま寝落ちしちゃうような人たちだったっけ?」
「んー……たまにあるんだよね。今日はたまたま疲れてたのかも」
「クリスマスなのに?」
「まあ……お父さんもお母さんも忙しい人だからね……」
そういえばそうだった。
確か渚のお父様は消防士で、お母様は看護師のはず。
どちらの職業も忙しいイメージがあるし、実際そうなのだろう。
それにしても、こんなふうに家の中で無防備になって寝てしまうほど疲れることなんてあるのだろうか。
まだ仕事に慣れていない新人さんならともかく、渚の両親はもう何年も働いているはずだし……
「あ、そっか……」
そこでハッとした。
そういえば、今日はクリスマスなのだ。
家族で一緒に過ごすために、仕事を頑張ってきたのだとすれば納得できる気がした。
きっとみんなで楽しく過ごしたかったに違いない。
「渚、今日はごめんね。家族でクリスマス過ごしたかったよね?」
「え、なに今更……私が花恋ちゃんと過ごしたいって思ったからそうしただけだよ?」
「で、でも、あたしがいなかったら……」
なんだか今更になって申し訳ないことをしてしまった気分だ。
しかしそんなあたしを見て、彼女は小さく笑う。
「私の家族が寝ちゃったのは花恋ちゃんのせいじゃないよ。というわけで、これから二人で楽しいことしよう?」
「……SMプレイ?」
「いや、ちょっとそれは……」
冗談を言ったら引かれてしまった。
渚の顔が若干引きつっている。
まあいつもやってるようなものだし、冗談だと思わなかったのだろう。
「ちぇっ」
「なんで残念そうな顔するの!?」
「だって……せっかく二人きりになれたんだもん。もっとイチャイチャしたいじゃん」
そう言うと、渚は顔を真っ赤にして俯いた。
その反応が可愛くて思わずニヤケそうになるけど我慢する。
しかし彼女からの返事はなく、そのまま黙々と部屋の片付けを再開した。
「渚ってほんと可愛いよね」
「……またそういうこと言う。私なんかより、花恋ちゃんの方が綺麗だし可愛いと思うんだけどなぁ」
照れ隠しなのか、少し拗ねたようにそう呟く渚にキュンとしてしまう。
本当に自分は渚のことが好きなんだなと、改めて再確認できたのだった。
この前は会えなかったし、小学生以来会ってないと思うから余計に心臓の鼓動がはやくなってしまう。
「あ、あの……お邪魔します」
「どうぞ~! って、なんで敬語?」
「い、いや、つい……」
靴を脱いでリビングへ案内されると、そこには綺麗なキッチンがあった。
家に家族がいると言っていたのに、渚の家族の姿がどこにもない。
妹くらいはすぐに出てきて、お姉ちゃんに「おかえり」って駆け寄ったらあたしがいて顔を歪ませそうだなと思っていたのだけど……
というか、その反応を期待していたのに。
「ありゃ、お母さんたち寝ちゃってるのかな。珍しい」
テーブルには飲みかけの紅茶と食べかけのケーキが置かれていた。
どうやら片付けもする余裕がないまま眠ってしまったらしい。
もしかしたら寝室にいるのかな?
そう思いながら渚についていき二階へと上がる。
すると部屋の中には誰もおらず……と思いきや、ベッドの上でぐっすり眠っているお母様がいた。
ついでに妹も一緒のベッドで寝ているらしい。
仲がいいんだなと思いつつ、自分も前にこれと似たような状況になっていたことを思い出して複雑な気持ちになる。
「あー……やっぱぐっすり寝ちゃってるね。ごめん花恋ちゃん、ちょっと片付け手伝ってもらえる?」
「うん、もちろん。渚の頼みは断れないよ」
「あはは、いつもありがとう」
苦笑しながら渚はテーブルの上に散らかっていたものをテキパキとまとめていく。
そしてゴミ袋を持ってくると、さっきまであったものを全てその中に放り込んでいった。
その手際のよさに感心していると、ふと気になったことがある。
「そういえば、渚のお母さんたちってこんなに散らかしたまま寝落ちしちゃうような人たちだったっけ?」
「んー……たまにあるんだよね。今日はたまたま疲れてたのかも」
「クリスマスなのに?」
「まあ……お父さんもお母さんも忙しい人だからね……」
そういえばそうだった。
確か渚のお父様は消防士で、お母様は看護師のはず。
どちらの職業も忙しいイメージがあるし、実際そうなのだろう。
それにしても、こんなふうに家の中で無防備になって寝てしまうほど疲れることなんてあるのだろうか。
まだ仕事に慣れていない新人さんならともかく、渚の両親はもう何年も働いているはずだし……
「あ、そっか……」
そこでハッとした。
そういえば、今日はクリスマスなのだ。
家族で一緒に過ごすために、仕事を頑張ってきたのだとすれば納得できる気がした。
きっとみんなで楽しく過ごしたかったに違いない。
「渚、今日はごめんね。家族でクリスマス過ごしたかったよね?」
「え、なに今更……私が花恋ちゃんと過ごしたいって思ったからそうしただけだよ?」
「で、でも、あたしがいなかったら……」
なんだか今更になって申し訳ないことをしてしまった気分だ。
しかしそんなあたしを見て、彼女は小さく笑う。
「私の家族が寝ちゃったのは花恋ちゃんのせいじゃないよ。というわけで、これから二人で楽しいことしよう?」
「……SMプレイ?」
「いや、ちょっとそれは……」
冗談を言ったら引かれてしまった。
渚の顔が若干引きつっている。
まあいつもやってるようなものだし、冗談だと思わなかったのだろう。
「ちぇっ」
「なんで残念そうな顔するの!?」
「だって……せっかく二人きりになれたんだもん。もっとイチャイチャしたいじゃん」
そう言うと、渚は顔を真っ赤にして俯いた。
その反応が可愛くて思わずニヤケそうになるけど我慢する。
しかし彼女からの返事はなく、そのまま黙々と部屋の片付けを再開した。
「渚ってほんと可愛いよね」
「……またそういうこと言う。私なんかより、花恋ちゃんの方が綺麗だし可愛いと思うんだけどなぁ」
照れ隠しなのか、少し拗ねたようにそう呟く渚にキュンとしてしまう。
本当に自分は渚のことが好きなんだなと、改めて再確認できたのだった。
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