真っ赤な吸血少女は好きな人を傷つけたくてたまらない【完結済み】

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第一章 吸血少女は傷つけたい

デートの続きをしたい

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「ご、ごめん! つい気持ちが高ぶっちゃって……」
「いや……これはこれでいいかも……なんか興奮した」
「え?」

 あたしの一言に渚はきょとんとする。
 そしてあたしはそんな渚をそっと抱きしめる。
 さっき渚にやられたような強引なものじゃなく、優しい感じに。
 すると、渚もあたしを抱きしめ返してきた。

「あははっ……なんかこういうのもいいね」
「うん……なんだか落ち着く」

 そうしてしばらく抱き合っていたあたしたちだけど、渚から身体を離す。
 そしてお互いの顔を見つめ合うと、あたしたちは笑みを浮かべた。

「それにしても花恋ちゃん、よく犬飼ってること覚えてたね。私そんなに話したっけ?」
「まあね。渚に関することならなんでも覚えてるよ。渚がおねしょした時とか」
「いつの話してるの!?」

 顔を真っ赤にする渚。
 なんだか今日の渚は顔を赤くしてばかりだ。
 その顔を見てあたしは満足げに笑う。

 それにしても、あの時はほんと可愛かったなぁ。
 もちろん今の渚も可愛いけど、おねしょした時の渚のギャン泣きが忘れられない。
 思い出しただけでゾクゾクして、口元が緩んでしまう。

「うふふふふ……」
「え、なんで笑ってるの?」
「だって、ねぇ?」
「もう! 昔の話はこれくらいにしよう!?」

 恥ずかしくなったのか、渚は自分の頭をわしわしと掻く。
 そういう風に照れてる姿もまた可愛いと思ってしまった。
 でもこれ以上いじるのは可哀想なので止めておくことにしよう。

 せっかくのクリスマスデートが台無しになってしまう。
 ……この前はおしおきしたくて台無しにしてしまったけど。
 今日は絶対に楽しいデートにしてみせるんだから!

「ねぇ、渚。これからどうする? どこか行きたいところある?」
「そうだなぁ……ちょっとお腹空かない? ずっと外にいると寒いし近くのコンビニで肉まんとかおでん買って食べようよ」
「おお! それいいね! そうしよそうしよ!」

 渚の提案にあたしは笑顔で賛成した。
 コンビニへ行って、肉まんとおでんを買って外にあるベンチで食べることになった。
 暖房がよく効いた店内から外に出ると、冷たい風があたしたちの身体に突き刺さってくる。
 寒いけれど、これくらいの方があたたかいものを美味しく感じられるはず。

「はい、渚の分」
「ありがとう」

 あたしは袋の中から肉まんを取り出すと半分に分けて片方を渚に手渡す。
 受け取った渚はそれを頬張った。

「はぁぁ……美味しい……」
「ん~……あったかいね……」

 ほかほかの肉まんを手に持っているだけで、寒さなんて吹っ飛ぶ気がする。
 冷え切った指先もあたたまったところで、あたしも肉まんを食べ始める。

「んむっ……」

 肉まんを一口食べた瞬間、あまりの熱さに舌を火傷してしまうんじゃないかと思った。
 慌てて口を開けて息を吹きかけて冷ます。
 ふぅーっと吹きかけていくと、少しだけマシになったので再び肉まんを食べる。

「はふっ……生き返る……」
「うん。これ買ってよかったね」

 隣を見ると、渚はあたしが肉まんを頬張っているところを微笑ましそうに見ていた。
 やっぱり……と思って、肉まんを飲み込む。

「もしかして、コンビニ行こうって言ったのはあたしのため? 寒くないようにって」
「あー……自分が寒かったからっていうのもあるけどね。でもまさかバレるなんて」
「そりゃわかるよ。だってこんなにも気遣ってくれる人いないもん」
「……花恋ちゃんには敵わないなぁ」

 はぁ……とため息をつく渚。
 あたしはその言葉の意味がわからなくて首を傾げた。
 そのセリフを言うのはあたしじゃなかろうか。

 こんなにもあたしのこと気遣ってくれる優しくてあたたかい恋人なのに、あたしはそういう愛情表現を傷つけることに使ってしまう。
 苦痛に顔を歪ませたり涙を流したりしている表情が大好きだから、どうしても恩を仇で返すようなことになってしまう。

 ――それなのに、どうして渚はこんなにも優しくしてくれるのだろうか。
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