真っ赤な吸血少女は好きな人を傷つけたくてたまらない【完結済み】

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第一章 吸血少女は傷つけたい

恋人っぽい

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「わー! イルミネーションすっごい綺麗!」
「ここいいでしょ。あんまり有名じゃないけど、その分人いなくて落ち着くし」
「うん! しかも有名どころと大差ないクオリティだし……ここ気に入ったよ!」

 あたしと渚は海沿いの街を訪れていた。
 クリスマスにどこ行こうと悩んでいたら、渚がいい感じの穴場スポットを見つけてくれていたのだった。

 少し高台になっているところに、イルミネーションの光が輝いている。
 まるで星空の中にいるような感覚になる。
 都会から離れているせいか、とても静かだ。
 周りには誰もいないし、車の音もしない。

 聞こえる音と言えば、波の音だけ。
 この空間 この空間にいるだけで幸せになれる気がした。

「ねぇ、渚……」
「ん?」
「手……繋いでもいいかな?」
「え? ふふ、驚いた。花恋ちゃんも乙女になる時があるんだね」

 そう言って、彼女は左手を差し出してきた。
 あたしはその手をそっと握る。
 冷たくかじかんでいた自分の手が、渚の手と触れただけでだんだんと熱を帯びていくのがわかった。
 彼女の体温を感じる度に心が落ち着かない気分になる。

 ずっとこうしていられたらいいなと思った。
 渚の顔をちらりと見れば、彼女もまたこちらを見つめている。
 目が合うと、渚は照れたように微笑む。

「どうしたの、花恋ちゃん。さっきから私の顔ばっかり見て……そんなに見惚れるほど私は美人じゃないよ?」
「え、美人だと思ってるけど」
「うぇ!? ……あ、ありがと……でもそれはそれで恥ずかしいかも……」

 まさか肯定されると思わなかったらしい。
 彼女が頬を染めて俯くものだから、なんだかいつにも増して可愛らしく見えた。
 かっこいい渚の可愛い部分を知っているのはあたしだけなのだ。
 そう思うと優越感に浸れる。

「もう、花恋ちゃんってば、本当に私のこと好きだよね」
「好きじゃなきゃ付き合わないでしょ」

 当たり前のことを言わせないでほしい。
 あたしの言葉を聞いた彼女は、困ったように笑っていた。
 なんか変なこと言ったかな。

「そうだ。ちょっと早いけど、プレゼント交換しようか」
「えっ! 用意してくれてるの?」
「もちろんだよ。はいこれ」

 渚はコートの内ポケットからラッピングされた箱を取り出した。
 それを受け取り、早速中身を確認することにする。
 リボンを解き包装紙を開くと、中からはあたしが好きなブランドのメイク道具が出てきた。

「わぁ……!」
「気に入ってくれたみたいでよかった」
「嬉しい……ありがとう! 毎年プレゼント用意してくれて感激だよ」
「ふふ、どういたしまして。花恋ちゃんだって毎年用意してくれてるじゃん」

 あたしのためにわざわざ選んで買ってくれたんだと思うと胸が高鳴る。
 こんな素敵なものを貰えるなんて、あたしは幸せ者だ。
 ……と、もらってばかりじゃなくて、あたしからもプレゼントを渡さないとね。

「はい、渚。メリークリスマス!」
「わー、なんか袋大きいね。早速開けていい?」
「うん」

 渚はガサガサと音を立てながら、あたしからのプレゼントを開ける。
 そして目を丸くさせた。

「え、ぬいぐるみ? しかもこんな大きな……」
「ほら、渚の家って犬飼ってるでしょ? だからちょうど犬のぬいぐるみ見つけて『これだ!』って思ったんだよね」
「…………」
「あ、あれ? もしかして気に入らない……?」

 渚は無言のまま固まっていた。
 てっきりすぐに喜んでくれると思っていたんだけど……
 不安になって尋ねてみると、彼女はふるふると首を横に振った。

「違うよ。逆。すごく嬉しくてびっくりしちゃった」
「ほんとに? よかった……」

 ほっと息をつくと、彼女はぎゅっとあたしを抱き寄せてきた。
 いきなりの行動に驚く暇もなく、あたしは彼女の腕の中に閉じ込められる。

「ちょ、なぎ……んぅ!?」

 抗議の声をあげようとした瞬間、唇を重ねられてしまった。
 柔らかな感触が伝わる。
 その瞬間、驚きで止まっていた思考がなぜか冷静になって「渚って潜在的な能力すごいよな……」ということを、唇を無理やり奪われながら考えていたのだった。
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