4 / 50
第一章 ストーキングの恋模様!
何かがおかしい?
しおりを挟む
○月○日
今日はちょっとやばかったかも。
綾ちゃんにバレそうだったけどなんとか隠し通せた……と思う。良かった……よね。多分。
それにしても、さっちゃん先輩の好きなものを知れたのは嬉しかったなぁ……
機会があればさっちゃん先輩の好きなものを作って渡したい。
早速練習してみよう!
――稲津華緒、『さっちゃん先輩観察日記』より。
☆ ☆ ☆
あれから早二週間。
沙友理はすっかり元通りになり、何気ない毎日を過ごしていた。
――かと、思いきや……
「……あ、あのー……」
「んー? どうかしましたか?」
スラッとした縦に長い体型に、肩まで伸びた艶のある綺麗な黒髪を靡かせる少女。
清楚そうな印象を受けるが、中身はそうでもないらしい。
「へへ……そんなに見られると照れちゃいますね……」
頬を赤く染め、照れくさそうに笑う。
一瞬見惚れかけたが、沙友理はハッと我に返った。
「――じゃなくてっ! 何しに来たのですか……“綾ちゃん”」
“四季彩綾”――華緒と同じクラスの少女。
綾は沙友理と同じ、オシャレが好きな人種である。
華緒をお昼ご飯に誘う時に出会い、今では化粧品や服装について語り合えるほどの仲になっていた。
「何って、決まってるじゃないですかぁ! 今日の私のカラコン、いつもと違うでしょう?」
「……んー? あ、ほんとなのです! 黄色っぽい鮮やかな色なのです!」
沙友理がそれに気づくと、綾は得意げな顔つきになる。
「ふっふーん。沙友理先輩もカラコン入れてみませんかー?」
このカラコンを相当気に入っているようで、沙友理に見せつけるかのように顔を近づける。
だが、沙友理は申し訳なさそうに目を逸らす。
「あー……コンタクトって怖くてなかなか挑戦できないのですよ。それほど視力が悪い方でもないのですし、必要性を感じないと言いますか……」
沙友理がそう言うと、綾はキュピーンと目を光らせた。
「はっはーん。さては沙友理先輩、ピアスとかも怖い人ですかー?」
「うぐ……ま、まあ、そんな感じなのですけど……」
「やっぱり! 怖がってたらだめですよ、沙友理先輩。オシャレ番長の名が廃れますよ!?」
「わたし、番長になった覚えはないのですけど……」
唐突に叫び出した綾に、沙友理はどう対応すればいいかわからず狼狽える。
沙友理たちは学校近くの公園にいるのだが、休日なのに人気がない。
静かな時を過ごしたい人にとっては、いいスポットになっている。
「ところで沙友理先輩。お腹空いちゃったんですけど、何か奢ってくれませんかー?」
ゴロゴロと猫なで声で懇願する綾。
ちょうど今はお金に余裕があるため、断る理由がなかった。
「いいのですよ。だけどあまり高いものは奢れないのですよ?」
「わーい! じゃあファミレス行きません? 今ちょうどコラボやってるんですよー!」
「綾ちゃんの行きたいところに行くのです。どんなコラボなのですか?」
「よくぞ聞いてくれました! それがですね――」
道行く間、綾は好きなものについてずっと語っていた。
綾はゲームが好きで、よくゲーセンに行っているらしい。
そして、いつでもゲームのことで頭がいっぱいなのだとか。
「――着いたのです」
「おー! ファミレスって謎の安心感ありますよねー!」
早速二人が足を踏み入れた先には――
「あれ……さっちゃん先輩?」
――華緒がいた。
沙友理も綾も、驚いた様子で華緒を見ている。
「華緒ちゃん……!? 奇遇なのです!」
「華緒ちゃんじゃん! どうしたのー?」
「いや……私はお昼ご飯食べに来ただけですけど……」
訝しげな表情で、二人を交互に見回す華緒。
綾はその様子に何かを察した。
「沙友理先輩とは公園で偶然出会っただけだよー。外出届出したんだけど、あんますることなくてさー」
「そう……」
綾は沙友理たちと違い、寮に住んでいる。
外出届を出さないと外に出られないのだが、暇つぶし程度に外に出てみたらしい。
やることはあまりなかったようだが。
「だから心配しないでねー」
「……何も心配してないんだけど?」
そんなような会話を交わし、三人は席に着く。
そして、それぞれの注文した食べ物が届くと、すぐに食べ出した。
「ところで、さっちゃん先輩はオムライスが好きなんですか?」
「え? あー、そうなのですよ。卵のふわふわ感がたまらないのです」
「そうなんですね」
沙友理と華緒のやり取りを、微笑ましそうに見ていた綾。
口角を上げて、「ふーん、そういうことか」と何やらぼそっと呟いた。
その呟きを耳ざとく拾った華緒は、迷惑そうな顔をしている。
そんな華緒を知ってか知らでか、綾は箸を置く。
そしてセルフサービスの水を飲むと、おもむろに席を立った。
「ごめん。私急用出来ちゃったー。後は二人でごゆっくり」
「え? まだ食べ始めたばかり――って、いつの間に食べ終わったのですか!?」
「じゃ、そういうことだから、おじゃま虫の私は帰るねー」
元気よく手を振って、本当に帰っていく綾。
ちゃんと自分の分の会計を済ませて、風のように去っていった。
今日はちょっとやばかったかも。
綾ちゃんにバレそうだったけどなんとか隠し通せた……と思う。良かった……よね。多分。
それにしても、さっちゃん先輩の好きなものを知れたのは嬉しかったなぁ……
機会があればさっちゃん先輩の好きなものを作って渡したい。
早速練習してみよう!
――稲津華緒、『さっちゃん先輩観察日記』より。
☆ ☆ ☆
あれから早二週間。
沙友理はすっかり元通りになり、何気ない毎日を過ごしていた。
――かと、思いきや……
「……あ、あのー……」
「んー? どうかしましたか?」
スラッとした縦に長い体型に、肩まで伸びた艶のある綺麗な黒髪を靡かせる少女。
清楚そうな印象を受けるが、中身はそうでもないらしい。
「へへ……そんなに見られると照れちゃいますね……」
頬を赤く染め、照れくさそうに笑う。
一瞬見惚れかけたが、沙友理はハッと我に返った。
「――じゃなくてっ! 何しに来たのですか……“綾ちゃん”」
“四季彩綾”――華緒と同じクラスの少女。
綾は沙友理と同じ、オシャレが好きな人種である。
華緒をお昼ご飯に誘う時に出会い、今では化粧品や服装について語り合えるほどの仲になっていた。
「何って、決まってるじゃないですかぁ! 今日の私のカラコン、いつもと違うでしょう?」
「……んー? あ、ほんとなのです! 黄色っぽい鮮やかな色なのです!」
沙友理がそれに気づくと、綾は得意げな顔つきになる。
「ふっふーん。沙友理先輩もカラコン入れてみませんかー?」
このカラコンを相当気に入っているようで、沙友理に見せつけるかのように顔を近づける。
だが、沙友理は申し訳なさそうに目を逸らす。
「あー……コンタクトって怖くてなかなか挑戦できないのですよ。それほど視力が悪い方でもないのですし、必要性を感じないと言いますか……」
沙友理がそう言うと、綾はキュピーンと目を光らせた。
「はっはーん。さては沙友理先輩、ピアスとかも怖い人ですかー?」
「うぐ……ま、まあ、そんな感じなのですけど……」
「やっぱり! 怖がってたらだめですよ、沙友理先輩。オシャレ番長の名が廃れますよ!?」
「わたし、番長になった覚えはないのですけど……」
唐突に叫び出した綾に、沙友理はどう対応すればいいかわからず狼狽える。
沙友理たちは学校近くの公園にいるのだが、休日なのに人気がない。
静かな時を過ごしたい人にとっては、いいスポットになっている。
「ところで沙友理先輩。お腹空いちゃったんですけど、何か奢ってくれませんかー?」
ゴロゴロと猫なで声で懇願する綾。
ちょうど今はお金に余裕があるため、断る理由がなかった。
「いいのですよ。だけどあまり高いものは奢れないのですよ?」
「わーい! じゃあファミレス行きません? 今ちょうどコラボやってるんですよー!」
「綾ちゃんの行きたいところに行くのです。どんなコラボなのですか?」
「よくぞ聞いてくれました! それがですね――」
道行く間、綾は好きなものについてずっと語っていた。
綾はゲームが好きで、よくゲーセンに行っているらしい。
そして、いつでもゲームのことで頭がいっぱいなのだとか。
「――着いたのです」
「おー! ファミレスって謎の安心感ありますよねー!」
早速二人が足を踏み入れた先には――
「あれ……さっちゃん先輩?」
――華緒がいた。
沙友理も綾も、驚いた様子で華緒を見ている。
「華緒ちゃん……!? 奇遇なのです!」
「華緒ちゃんじゃん! どうしたのー?」
「いや……私はお昼ご飯食べに来ただけですけど……」
訝しげな表情で、二人を交互に見回す華緒。
綾はその様子に何かを察した。
「沙友理先輩とは公園で偶然出会っただけだよー。外出届出したんだけど、あんますることなくてさー」
「そう……」
綾は沙友理たちと違い、寮に住んでいる。
外出届を出さないと外に出られないのだが、暇つぶし程度に外に出てみたらしい。
やることはあまりなかったようだが。
「だから心配しないでねー」
「……何も心配してないんだけど?」
そんなような会話を交わし、三人は席に着く。
そして、それぞれの注文した食べ物が届くと、すぐに食べ出した。
「ところで、さっちゃん先輩はオムライスが好きなんですか?」
「え? あー、そうなのですよ。卵のふわふわ感がたまらないのです」
「そうなんですね」
沙友理と華緒のやり取りを、微笑ましそうに見ていた綾。
口角を上げて、「ふーん、そういうことか」と何やらぼそっと呟いた。
その呟きを耳ざとく拾った華緒は、迷惑そうな顔をしている。
そんな華緒を知ってか知らでか、綾は箸を置く。
そしてセルフサービスの水を飲むと、おもむろに席を立った。
「ごめん。私急用出来ちゃったー。後は二人でごゆっくり」
「え? まだ食べ始めたばかり――って、いつの間に食べ終わったのですか!?」
「じゃ、そういうことだから、おじゃま虫の私は帰るねー」
元気よく手を振って、本当に帰っていく綾。
ちゃんと自分の分の会計を済ませて、風のように去っていった。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。
私はただ一度の暴言が許せない
ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
厳かな結婚式だった。
花婿が花嫁のベールを上げるまでは。
ベールを上げ、その日初めて花嫁の顔を見た花婿マティアスは暴言を吐いた。
「私の花嫁は花のようなスカーレットだ!お前ではない!」と。
そして花嫁の父に向かって怒鳴った。
「騙したな!スカーレットではなく別人をよこすとは!
この婚姻はなしだ!訴えてやるから覚悟しろ!」と。
そこから始まる物語。
作者独自の世界観です。
短編予定。
のちのち、ちょこちょこ続編を書くかもしれません。
話が進むにつれ、ヒロイン・スカーレットの印象が変わっていくと思いますが。
楽しんでいただけると嬉しいです。
※9/10 13話公開後、ミスに気づいて何度か文を訂正、追加しました。申し訳ありません。
※9/20 最終回予定でしたが、訂正終わりませんでした!すみません!明日最終です!
※9/21 本編完結いたしました。ヒロインの夢がどうなったか、のところまでです。
ヒロインが誰を選んだのか?は読者の皆様に想像していただく終わり方となっております。
今後、番外編として別視点から見た物語など数話ののち、
ヒロインが誰と、どうしているかまでを書いたエピローグを公開する予定です。
よろしくお願いします。
※9/27 番外編を公開させていただきました。
※10/3 お話の一部(暴言部分1話、4話、6話)を訂正させていただきました。
※10/23 お話の一部(14話、番外編11ー1話)を訂正させていただきました。
※10/25 完結しました。
ここまでお読みくださった皆様。導いてくださった皆様にお礼申し上げます。
たくさんの方から感想をいただきました。
ありがとうございます。
様々なご意見、真摯に受け止めさせていただきたいと思います。
ただ、皆様に楽しんでいただける場であって欲しいと思いますので、
今後はいただいた感想をを非承認とさせていただく場合がございます。
申し訳ありませんが、どうかご了承くださいませ。
もちろん、私は全て読ませていただきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる