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何かが起こるかも!
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それから数ヶ月。
ブランは一通り仕事が出来るようになっていき、何気ない平穏な日々を過ごしていた。
――それがある時一変する。
いつものように玄関の掃除を終え、戻ろうとした時。
ふと振り向くと、そこには黒髪黒目の狼耳を持った人が立っていた。
(狼族かな……? 珍しい……)
狼族は、数がとても少ないから凄く珍しい。
それにしても……一体何をしに来たのだろうか。
「ボス……いや、田神という者を見なかったか?」
「田神……ですか……」
そんなことを考えていると、ブランは声をかけられた。
田神……そんな名前の人が来ていただろうか。
事務の仕事はあまりした事が無いため、ブランにはわからない。
「――ちょっと調べてみます!」
そう言うとブランは、事務の人に確認を取りに行った。
だが、何かおかしい。
何が……とも言えないが、何となくブランの野生の勘がそう警告している。
急いで振り返ると、狼族の人の髪は変わらなかったが、目の色が赤色になっていた。
「もしかして、戦闘個体……!?」
戦闘個体――戦闘に特化した、あらゆる自然現象の一つを操る事が出来る人。
数が非常に少なく、滅多に見られるものではない。
ブランはそう聞いていたが、この人がその戦闘個体なのだろうか。
ブランは驚くばかりだった。
耳を澄ませ、目を閉じて音を聞く。
――やはりこの人は戦闘個体だ。
呼吸音も荒いし、血流も速いし、心拍数も高い……
人探しだから、多少はそうなるだろう。
だが、ブランには違いがハッキリと分かる。
なんせブランは耳がとても良い。
良いというレベルではない、もはや人知を超えている。
音を調べ終わった後、ブランはハッと我に返る。
――こんな事をしている場合ではなかった。
ブランはすぐさま事務に確認を取りに行き、話を聞くと、狼族の人がいた場所へと戻る。
「昨日来てたみたいです……」
「本当か!!」
「はい、お相手を……した方? が来て証言してくれました」
そうなのだ。
ブランが事務の人に話を聞いていたら、ちょうど田神の相手をした人が通りかかって、わけを話してくれた。
なんでも珍しいお客さんだったようで……
『なんかねー、髪の毛が凄く短くてねぇ、ほとんど無かったよぉ? あー、それにぃ、翼が生えてたのぉ』
『つ、翼……!?』
『そぉ。それにねー、耳が無かったのぉ。不思議だよねぇ』
……というやり取りをした後に、狼族の人に報告をしたのだが、なんと不思議な人なのだろう。
耳が無く……翼が生えている……
考えても答えが出るわけではないのは分かっているのだが……どうしても気になってしまう。
そこで、狼族の人に聞こうと思っていたのだが……
「そうか。来ていたのか……すれ違ってしまったのかな……」
そう言うと、ものすごいスピードで帰ってしまった。
もうその人がいた形跡すら残っていない。
(この中、探さなくても良いのかな)
お相手をするのがどうしても夜になってしまうので、その後疲れ果ててお泊まりをする人が大半なのだ。
(まあ、あの人がそれで良いなら良いけど)
冷たく聞こえるかも知れないが、ブランにはどうしようも出来ないから仕方が無い。
あの人が自力で田神とやらを探してくれるなら、それはそれでブランも楽だから。
人探し――その程度だったはずの出来事が、まさかあんな事になるなんて……
この時のブランは、知る由もなかった。
ブランは一通り仕事が出来るようになっていき、何気ない平穏な日々を過ごしていた。
――それがある時一変する。
いつものように玄関の掃除を終え、戻ろうとした時。
ふと振り向くと、そこには黒髪黒目の狼耳を持った人が立っていた。
(狼族かな……? 珍しい……)
狼族は、数がとても少ないから凄く珍しい。
それにしても……一体何をしに来たのだろうか。
「ボス……いや、田神という者を見なかったか?」
「田神……ですか……」
そんなことを考えていると、ブランは声をかけられた。
田神……そんな名前の人が来ていただろうか。
事務の仕事はあまりした事が無いため、ブランにはわからない。
「――ちょっと調べてみます!」
そう言うとブランは、事務の人に確認を取りに行った。
だが、何かおかしい。
何が……とも言えないが、何となくブランの野生の勘がそう警告している。
急いで振り返ると、狼族の人の髪は変わらなかったが、目の色が赤色になっていた。
「もしかして、戦闘個体……!?」
戦闘個体――戦闘に特化した、あらゆる自然現象の一つを操る事が出来る人。
数が非常に少なく、滅多に見られるものではない。
ブランはそう聞いていたが、この人がその戦闘個体なのだろうか。
ブランは驚くばかりだった。
耳を澄ませ、目を閉じて音を聞く。
――やはりこの人は戦闘個体だ。
呼吸音も荒いし、血流も速いし、心拍数も高い……
人探しだから、多少はそうなるだろう。
だが、ブランには違いがハッキリと分かる。
なんせブランは耳がとても良い。
良いというレベルではない、もはや人知を超えている。
音を調べ終わった後、ブランはハッと我に返る。
――こんな事をしている場合ではなかった。
ブランはすぐさま事務に確認を取りに行き、話を聞くと、狼族の人がいた場所へと戻る。
「昨日来てたみたいです……」
「本当か!!」
「はい、お相手を……した方? が来て証言してくれました」
そうなのだ。
ブランが事務の人に話を聞いていたら、ちょうど田神の相手をした人が通りかかって、わけを話してくれた。
なんでも珍しいお客さんだったようで……
『なんかねー、髪の毛が凄く短くてねぇ、ほとんど無かったよぉ? あー、それにぃ、翼が生えてたのぉ』
『つ、翼……!?』
『そぉ。それにねー、耳が無かったのぉ。不思議だよねぇ』
……というやり取りをした後に、狼族の人に報告をしたのだが、なんと不思議な人なのだろう。
耳が無く……翼が生えている……
考えても答えが出るわけではないのは分かっているのだが……どうしても気になってしまう。
そこで、狼族の人に聞こうと思っていたのだが……
「そうか。来ていたのか……すれ違ってしまったのかな……」
そう言うと、ものすごいスピードで帰ってしまった。
もうその人がいた形跡すら残っていない。
(この中、探さなくても良いのかな)
お相手をするのがどうしても夜になってしまうので、その後疲れ果ててお泊まりをする人が大半なのだ。
(まあ、あの人がそれで良いなら良いけど)
冷たく聞こえるかも知れないが、ブランにはどうしようも出来ないから仕方が無い。
あの人が自力で田神とやらを探してくれるなら、それはそれでブランも楽だから。
人探し――その程度だったはずの出来事が、まさかあんな事になるなんて……
この時のブランは、知る由もなかった。
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