223 / 239
最終章 みんなのキズナ
さいやくのはじまり(美久里)
しおりを挟む
「今日から三年生なんだ……! みんなに会えるのが楽しみだなぁ……!」
美久里は心を弾ませ、学校に向かっていく。
心臓破りの坂――『神の坂』もずいぶん慣れたものだ。
一年生の頃はヒーヒー言っていたのに。
「でも、あと一年でみんなともお別れなんだよね……」
そう思うと、このまま時が流れないでと願いたくなる。
だけど、願いを叶えてくれる神様なんているはずもなく、足を先に進めるしかない。
それは無情にも思えるが、世の中は諸行無常。
決して変わらないものなんてないだろう。
それは、人の心も例外ではない。
もし、この先進路が別々になって疎遠になってしまったら……
そんなことも、考えてしまうものだ。
「ふぅ……やっと着いた……ん?」
一年の頃より楽に感じるようになったとはいえ、『神の坂』はあなどれない。
スタミナ消耗が激しいことに変わりはない。
「こんにちは。いや、はじめまして……かしら?」
「ふぇ? え、えっと、あなたは……?」
急に知らない子から話しかけられて、美久里は人見知りとコミュ障モードに入った。
知らない子とはいえ、同じ制服を着ているからタピ女の生徒だとは思うが。
その子はおだやかに、優雅に微笑む。
「アタシの名前は愛杏。って、別に名乗らなくてもいっか。仲良しこよししようってわけじゃないんだし」
「……え?」
「あんたのこと、一月から三月にかけて調べさせてもらったわ。くふふっ」
この子の髪は明るいピンク色なのに、邪悪なオーラが滲み出ている。
なにか、嫌な予感がする。
美久里のことを調べたといっていたし、少なくともまともな人ではないだろう。
「あー、ごめんなさい。一人で勝手に盛り上がってしまったわ。用件を述べさせてもらうわね」
少し風が吹く。
ピンク髪の少女は、その髪を低い位置で一つに縛っているため、靡くことはなかった。
その代わり、ピンク色の瞳が妖しく揺れる。
「うふふ、あんたの過去は――」
それを言われた瞬間、忘れてしまいたい記憶がフラッシュバックした。
美久里は心を弾ませ、学校に向かっていく。
心臓破りの坂――『神の坂』もずいぶん慣れたものだ。
一年生の頃はヒーヒー言っていたのに。
「でも、あと一年でみんなともお別れなんだよね……」
そう思うと、このまま時が流れないでと願いたくなる。
だけど、願いを叶えてくれる神様なんているはずもなく、足を先に進めるしかない。
それは無情にも思えるが、世の中は諸行無常。
決して変わらないものなんてないだろう。
それは、人の心も例外ではない。
もし、この先進路が別々になって疎遠になってしまったら……
そんなことも、考えてしまうものだ。
「ふぅ……やっと着いた……ん?」
一年の頃より楽に感じるようになったとはいえ、『神の坂』はあなどれない。
スタミナ消耗が激しいことに変わりはない。
「こんにちは。いや、はじめまして……かしら?」
「ふぇ? え、えっと、あなたは……?」
急に知らない子から話しかけられて、美久里は人見知りとコミュ障モードに入った。
知らない子とはいえ、同じ制服を着ているからタピ女の生徒だとは思うが。
その子はおだやかに、優雅に微笑む。
「アタシの名前は愛杏。って、別に名乗らなくてもいっか。仲良しこよししようってわけじゃないんだし」
「……え?」
「あんたのこと、一月から三月にかけて調べさせてもらったわ。くふふっ」
この子の髪は明るいピンク色なのに、邪悪なオーラが滲み出ている。
なにか、嫌な予感がする。
美久里のことを調べたといっていたし、少なくともまともな人ではないだろう。
「あー、ごめんなさい。一人で勝手に盛り上がってしまったわ。用件を述べさせてもらうわね」
少し風が吹く。
ピンク髪の少女は、その髪を低い位置で一つに縛っているため、靡くことはなかった。
その代わり、ピンク色の瞳が妖しく揺れる。
「うふふ、あんたの過去は――」
それを言われた瞬間、忘れてしまいたい記憶がフラッシュバックした。
0
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説
わけありのイケメン捜査官は英国名家の御曹司、潜入先のロンドンで絶縁していた家族が事件に
川喜多アンヌ
ミステリー
あのイケメンが捜査官? 話せば長~いわけありで。
もしあなたの同僚が、潜入捜査官だったら? こんな人がいるんです。
ホークは十四歳で家出した。名門の家も学校も捨てた。以来ずっと偽名で生きている。だから他人に化ける演技は超一流。証券会社に潜入するのは問題ない……のはずだったんだけど――。
なりきり過ぎる捜査官の、どっちが本業かわからない潜入捜査。怒涛のような業務と客に振り回されて、任務を遂行できるのか? そんな中、家族を巻き込む事件に遭遇し……。
リアルなオフィスのあるあるに笑ってください。
主人公は4話目から登場します。表紙は自作です。
主な登場人物
ホーク……米国歳入庁(IRS)特別捜査官である主人公の暗号名。今回潜入中の名前はアラン・キャンベル。恋人の前ではデイヴィッド・コリンズ。
トニー・リナルディ……米国歳入庁の主任特別捜査官。ホークの上司。
メイリード・コリンズ……ワシントンでホークが同棲する恋人。
カルロ・バルディーニ……米国歳入庁捜査局ロンドン支部のリーダー。ホークのロンドンでの上司。
アダム・グリーンバーグ……LB証券でのホークの同僚。欧州株式営業部。
イーサン、ライアン、ルパート、ジョルジオ……同。
パメラ……同。営業アシスタント。
レイチェル・ハリー……同。審査部次長。
エディ・ミケルソン……同。株式部COO。
ハル・タキガワ……同。人事部スタッフ。東京支店のリストラでロンドンに転勤中。
ジェイミー・トールマン……LB証券でのホークの上司。株式営業本部長。
トマシュ・レコフ……ロマネスク海運の社長。ホークの客。
アンドレ・ブルラク……ロマネスク海運の財務担当者。
マリー・ラクロワ……トマシュ・レコフの愛人。ホークの客。
マーク・スチュアート……資産運用会社『セブンオークス』の社長。ホークの叔父。
グレン・スチュアート……マークの息子。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
他の男と仲良くしておいて今更幼馴染の俺に告白してきても遅いんだと言いたかったが手遅れなのは俺だった
古野ジョン
青春
俺は幼馴染である朱里のことが好きだった。
けど最近、なんだか朱里は俺の親友(運動部の超イケメン!)と仲良くしている。
二人はお似合いだし、きっとあのまま付き合うんだろう。
そう思うとやるせなく、なんだか気分も憂鬱になるというものだ。
しかしある日、夢の中に神様が現れた。
そいつが言うには「朱里は一か月後に心臓発作で死んでしまう」らしい。
せめて朱里のために、そう思った俺は神様に身代わりを申し出ることにした。
これで何の悔いもなく――などと考えていた矢先、俺は朱里に呼び出されることになる。
えっ? 「ずっと昔から好きでした」だって……?
小説家になろう・ハーメルン・カクヨムにも掲載しています。
サザン・ホスピタル 短編集
くるみあるく
青春
2005年からしばらくWeb上で発表していた作品群。
本編は1980~2000年の沖縄を舞台に貧乏金髪少年が医者を目指す物語。アルファポリスに連載中です。
この短編は本編(長編)のスピンオフ作品で、沖縄語が時折出てきます。
主要登場人物は6名。
上間勉(うえま・つとむ 整形外科医)
東風平多恵子(こちんだ・たえこ 看護師)
島袋桂(しまぶくろ・けい 勉と多恵子の同級生 出版社勤務)
矢上明信(やがみ・あきのぶ 勉と多恵子の同級生 警察官)
粟国里香(あぐに・りか 多恵子の親友で看護師)
照喜名裕太(てるきな・ゆうた 整形外科医)
主人公カップルの子供である壮宏(たけひろ)と理那(りな)、多恵子の父母、サザン・ホスピタルの同僚たちが出たりします。
内弟子物語 ー捨てきれない夢、武術の究極「活殺自在」を求める5名の青春群像ー
KASSATSU
青春
夢を捨てた人生に意味はないと考え、空手に魅力を感じた青年たちが純粋に若い時を駆け巡る青春群像。個性豊かな登場人物が織りなす毎日を綴る。試合を意識した空手ではなく、武術の究極と言われる活殺自在の境地を目指す過程をそれぞれの視点から描く。若いゆえの悩みを抱えつつも、自身が信じたことについて突き進む様子をユニークなエピソードごと紹介。
謎の過去を持つ師、藤堂真人のところに集まった高山誠、御岳信平、龍田真悟、松池進、堀田賢が武術と癒しという両極を学ぶ中で気付き、成長していく。
カワイイ子猫のつくり方
龍野ゆうき
青春
子猫を助けようとして樹から落下。それだけでも災難なのに、あれ?気が付いたら私…猫になってる!?そんな自分(猫)に手を差し伸べてくれたのは天敵のアイツだった。
無愛想毒舌眼鏡男と獣化主人公の間に生まれる恋?ちょっぴりファンタジーなラブコメ。
俺と(従姉)姉ちゃんの良くある『今日から俺は?』の話だ。
かず斉入道
青春
この物語の時代背景は昭和……。
主人公の新作は春の入学式も終わり、高校生活にも少しなれた頃の、春の終わり。
二階の自身の部屋で、進学に向けて自習勉強中の頭の余り賢くない主人公山本新作の耳へと両親のヒソヒソ声が聞こえてくるのだが。
その内容と言うのが?
父親の経営する会社の業務拡大に伴って、他県へと会社を移転するから、皆で引っ越そうと言う話しで。
新作を他県の高校へと転校させようと言った話しなのだが。
その話しを聞いた当の本人である新作は顔色を変えてしまう。だって彼は、自身の担任のピチピチした女性教師の久美ちゃん先生に憧れと恋心、想いを寄せているからだ。
だって主人公は大学卒業後に、先生を自身の嫁にしたいと心から思い、願っているから進学に向けて猛勉強。
先生からも個人レッスンを受けているから。
彼は安易に転校をしたくはない。
でも新作が通う高校は県内一の不良学校、悪の巣窟だから。
新作の父親は、この機会に真面目な新作を転校させたいからと妻に相談する。
でも新作の母親は、父親の想いとは裏腹の意見を述べてくるのだ。
新作が通う高校には近所の幼馴染がいる。
その彼が悪の巣窟。県内ワーストワンの学園で、上級生達も恐れるような、広島市内でも凶悪、関わりたくない№1のサイコパスな人間なのだが。
そんな幼馴染と新作は大変に仲が良いのと。
素行が真面目な新作のことを担任の久美ちゃん先生が目をかけてくれて。大学進学をサポートしてくれている。
だから母親が新作の転向を反対し、彼を父親の兄の家に居候をさせてもらえるように嘆願をしてくれと告げる。
でも新作の父親の兄の家には一人娘の美奈子がいるから不味いと告げるのだが。美奈子は、幼い時に新作の嫁にくれると言っていたから。
二人の間に何かしらの問題が生じても、もう既に姪は家の嫁だから問題はないと。主人公が今迄知らなかった事を母親は父親へと告げ、押し切り。
新作は伯父の照明の家から学校へと通うことになるのだが。
でも主人公が幼い頃に憧れていた従姉の姉ちゃんは、実は伯父さんが夫婦が手に余るほどのヤンキーへと変貌しており、家でいつも大暴れの上に。室内でタ〇コ、シ〇ナーは吸うは、家に平然と彼氏を連れ込んで友人達と乱交パーティーするような素行の悪い少女……。
だから主人公の新作は従姉の姉ちゃん絡みの事件に色々と巻き込まれていく中で、自分もヤンキーなる事を決意する。
主人公が子供から少年……。そして大人へと移り変わっていく物語で御座います。
ゲームのモブに転生したと思ったら、チートスキルガン積みのバグキャラに!? 最強の勇者? 最凶の魔王? こっちは最驚の裸族だ、道を開けろ
阿弥陀乃トンマージ
ファンタジー
どこにでもいる平凡なサラリーマン「俺」は、長年勤めていたブラック企業をある日突然辞めた。
心は晴れやかだ。なんといってもその日は、昔から遊んでいる本格的ファンタジーRPGシリーズの新作、『レジェンドオブインフィニティ』の発売日であるからだ。
「俺」はゲームをプレイしようとするが、急に頭がふらついてゲーミングチェアから転げ落ちてしまう。目覚めた「俺」は驚く。自室の床ではなく、ゲームの世界の砂浜に倒れ込んでいたからである、全裸で。
「俺」のゲームの世界での快進撃が始まる……のだろうか⁉
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる