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第二章 高校二年生(二学期)
らいばる(紫乃)
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紫乃は緊張をほぐそうと扉の前で深呼吸をし、すっと目を閉じる。
「……よし」
手鏡で前髪や顔全体を確認してから、意を決してインターホンを鳴らした。
『はーい?』
こういうのは少し待たされるものだと思うが、予想を裏切られ、すぐにスピーカーから可愛らしい声が聞こえてくる。
さっき落ち着かせたにも関わらず、また鼓動が早まってきてしまう。
「こんにちは~。紫乃です~」
『あー、紫乃さんですか。ちょっと待っててください』
ブツンと途切れると、だんだん足音が近付いてくるのがわかった。
それに比例するように、自分の心音もだんだんと耳へ迫ってきた。
「あ……」
扉が開かれるそこには、”秘密”を共有している者――美奈が立っている。
その“秘密”のことについて話に来たわけだから、緊張するのも当たり前だ。
「珍しいですね、紫乃さんがうちに来るなんて」
下ろしたセミロングの髪に、美久里とそっくりな顔立ち。
強いて言えば、美奈の方がつり目な感じになっているくらいで、中学生にしては背が少し高くて紫乃と同じくらいというところ。
美久里も背が高い方ではあるし、少し羨ましいと感じる。
「久しぶりだね~、美奈ちゃん」
「お久しぶりです。えっと、用件は……って、ここでじゃない方がいいですよね。どうぞ、あがってください」
「それじゃ、お邪魔します~」
「はーい」
なにげに、紫乃がこの家に入るのは初めてだ。
そういうのもあってか、余計に心臓の音がうるさくなってくる。
しかし、紫乃は毅然と振舞うことを心がける。
「それで、用件とは?」
「えっと……実はね……」
そうして話し終えた時、美奈は目を丸くしていた。
紫乃はできるだけ柔らかく、ふわふわした口調で話すことを気をつけた。
「じゃあ、僕はもう帰るね~」
これからは、“秘密”を共有している仲間というわけにはいかないだろう。
むしろ、バチバチ火花を散らすライバル……みたいなものになるに違いない。
今日紫乃は、宣戦布告をしにきたのだ。
「あの子のこと、決着つけないとね」
紫乃はそうつぶやくと、なるべく丁寧に玄関の扉を閉めた。
「……よし」
手鏡で前髪や顔全体を確認してから、意を決してインターホンを鳴らした。
『はーい?』
こういうのは少し待たされるものだと思うが、予想を裏切られ、すぐにスピーカーから可愛らしい声が聞こえてくる。
さっき落ち着かせたにも関わらず、また鼓動が早まってきてしまう。
「こんにちは~。紫乃です~」
『あー、紫乃さんですか。ちょっと待っててください』
ブツンと途切れると、だんだん足音が近付いてくるのがわかった。
それに比例するように、自分の心音もだんだんと耳へ迫ってきた。
「あ……」
扉が開かれるそこには、”秘密”を共有している者――美奈が立っている。
その“秘密”のことについて話に来たわけだから、緊張するのも当たり前だ。
「珍しいですね、紫乃さんがうちに来るなんて」
下ろしたセミロングの髪に、美久里とそっくりな顔立ち。
強いて言えば、美奈の方がつり目な感じになっているくらいで、中学生にしては背が少し高くて紫乃と同じくらいというところ。
美久里も背が高い方ではあるし、少し羨ましいと感じる。
「久しぶりだね~、美奈ちゃん」
「お久しぶりです。えっと、用件は……って、ここでじゃない方がいいですよね。どうぞ、あがってください」
「それじゃ、お邪魔します~」
「はーい」
なにげに、紫乃がこの家に入るのは初めてだ。
そういうのもあってか、余計に心臓の音がうるさくなってくる。
しかし、紫乃は毅然と振舞うことを心がける。
「それで、用件とは?」
「えっと……実はね……」
そうして話し終えた時、美奈は目を丸くしていた。
紫乃はできるだけ柔らかく、ふわふわした口調で話すことを気をつけた。
「じゃあ、僕はもう帰るね~」
これからは、“秘密”を共有している仲間というわけにはいかないだろう。
むしろ、バチバチ火花を散らすライバル……みたいなものになるに違いない。
今日紫乃は、宣戦布告をしにきたのだ。
「あの子のこと、決着つけないとね」
紫乃はそうつぶやくと、なるべく丁寧に玄関の扉を閉めた。
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