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第二章 高校二年生(一学期)
おどかし(美久里)
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「ふぅー、やっと放課後だ……」
美久里は安堵の息をつく。
今日も無事に授業が終わり、あとは部室に行ってみんなと遊ぶだけだ。
部活は遊びではないはずだけれど。
漫研はみんなでわいわい騒いでいるだけという印象が強いため、“遊ぶ”という感覚になってしまう。
美久里は鼻歌を歌いながらスキップをして、上機嫌な様子で廊下を渡る。
部室に向かう廊下で、不意に美久里は背後から肩をぽんぽんと叩かれた。
「だっ、だれ?」
おそるおそる振り返る。
するとそこには――
「きゃああああああっ!?」
とても恐ろしい狼男の姿が。
美久里は同じ階の廊下中に響き渡るほどの大絶叫をあげた。
そして、なぜか手に持っていたメモ帳でパシパシ叩き続ける。
「いててててて、お、おい美久里。あたしだよ、朔良だ!」
「え!? 朔良!?」
声を聞くと、美久里は攻撃をぴたりと止めた。
それを好機と受け取った自称朔良の狼男は、その頭をすっぽりと取る。
「そうだよ。ま、こんなんじゃわからなくても仕方ねーか」
その顔はまさしくいつもの朔良だった。
顔は汗びっしょりになっているが。
一体なにがどうなってこんなことになっているのだろう。
「え、え? なんで朔良は狼男のコスプレ? をしているの?」
「あー、驚かせようと思ってな。ちなみにこれは葉奈ちゃんの提案だぞ」
「へ、へぇ、葉奈ちゃんがね……」
説明を聞いてもいまいちよくわからないが、とりあえず葉奈が美久里を驚かせようとしているらしい。
……なぜだろうか。
「これから部室行くとこだろ。あたしも着いてくぜ」
「そりゃあね。朔良も漫研の一員なんだから」
「ところでお前って結構なビビリだったりするか?」
「え? まあ、そうだね……さっきの悲鳴聞いてたよね?」
自分で自分をビビリだというのはなんだか恥ずかしくて、美久里は遠回しにそうだと肯定した。
「じゃあ、また悲鳴をあげることになるかもな」
「……え?」
「部室に着いたぞ」
朔良の意味深なつぶやきに、美久里は小首を傾げる。
だが、美久里の心の準備を待たず、朔良は部室の扉を開ける。
「ばぁあ!」
「うわぁぁぁ!?」
すると眼前に、真っ白な物体が飛び出した。
真っ白なヒラヒラの布に黒い点が二つ、そしてギザギザとした黒い線がその下に見える。
オバケを模した格好のようだった。
「ふぇ、なになに?」
「おどかしたかっただけっす」
美久里が困惑していると、葉奈が布の下から顔を出した。
なんでこんなことをしたのかわからないが、心臓に悪いからやめてほしい。
なんて美久里が思っても、葉奈はやめてくれないだろうが。
「じゃ、今日も元気に活動するっすよー!」
「活動って言ってもいつもだべってるだけだけどな」
葉奈と朔良は何事もなかったかのように、平然といつも通り振る舞う。
美久里は一人だけ別の時空にいるような感覚がして、その日は一日中困惑することになった。
美久里は安堵の息をつく。
今日も無事に授業が終わり、あとは部室に行ってみんなと遊ぶだけだ。
部活は遊びではないはずだけれど。
漫研はみんなでわいわい騒いでいるだけという印象が強いため、“遊ぶ”という感覚になってしまう。
美久里は鼻歌を歌いながらスキップをして、上機嫌な様子で廊下を渡る。
部室に向かう廊下で、不意に美久里は背後から肩をぽんぽんと叩かれた。
「だっ、だれ?」
おそるおそる振り返る。
するとそこには――
「きゃああああああっ!?」
とても恐ろしい狼男の姿が。
美久里は同じ階の廊下中に響き渡るほどの大絶叫をあげた。
そして、なぜか手に持っていたメモ帳でパシパシ叩き続ける。
「いててててて、お、おい美久里。あたしだよ、朔良だ!」
「え!? 朔良!?」
声を聞くと、美久里は攻撃をぴたりと止めた。
それを好機と受け取った自称朔良の狼男は、その頭をすっぽりと取る。
「そうだよ。ま、こんなんじゃわからなくても仕方ねーか」
その顔はまさしくいつもの朔良だった。
顔は汗びっしょりになっているが。
一体なにがどうなってこんなことになっているのだろう。
「え、え? なんで朔良は狼男のコスプレ? をしているの?」
「あー、驚かせようと思ってな。ちなみにこれは葉奈ちゃんの提案だぞ」
「へ、へぇ、葉奈ちゃんがね……」
説明を聞いてもいまいちよくわからないが、とりあえず葉奈が美久里を驚かせようとしているらしい。
……なぜだろうか。
「これから部室行くとこだろ。あたしも着いてくぜ」
「そりゃあね。朔良も漫研の一員なんだから」
「ところでお前って結構なビビリだったりするか?」
「え? まあ、そうだね……さっきの悲鳴聞いてたよね?」
自分で自分をビビリだというのはなんだか恥ずかしくて、美久里は遠回しにそうだと肯定した。
「じゃあ、また悲鳴をあげることになるかもな」
「……え?」
「部室に着いたぞ」
朔良の意味深なつぶやきに、美久里は小首を傾げる。
だが、美久里の心の準備を待たず、朔良は部室の扉を開ける。
「ばぁあ!」
「うわぁぁぁ!?」
すると眼前に、真っ白な物体が飛び出した。
真っ白なヒラヒラの布に黒い点が二つ、そしてギザギザとした黒い線がその下に見える。
オバケを模した格好のようだった。
「ふぇ、なになに?」
「おどかしたかっただけっす」
美久里が困惑していると、葉奈が布の下から顔を出した。
なんでこんなことをしたのかわからないが、心臓に悪いからやめてほしい。
なんて美久里が思っても、葉奈はやめてくれないだろうが。
「じゃ、今日も元気に活動するっすよー!」
「活動って言ってもいつもだべってるだけだけどな」
葉奈と朔良は何事もなかったかのように、平然といつも通り振る舞う。
美久里は一人だけ別の時空にいるような感覚がして、その日は一日中困惑することになった。
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