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第二章 高校二年生(一学期)

へんきゃく(瑠衣)

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 テスト明け、今日からはテストが続々返却される。
 一時間目は数Ⅱだ。

「おまたせー。それじゃ、この間のテストお返ししていきますねー。平均点は40.2点でした。では番号順にとりに来てください」

 数学の先生は、とてもキビキビと効率よく物事を進めていく。
 しかし、もう少し心の準備がほしかった。
 自信があるとはいえ、もし下手な点数を取ってしまったらショックで自殺してしまうかもしれない。
 さすがの瑠衣もそこまではしないが、何事も心の準備というものは必要だ。

「はい、紫乃さん。もう少し頑張りましょうね」

 紫乃は答案用紙を受け取った際、右上に書かれた点数をそーっと確認していた。
 先生にそう言われたら、もう嫌でもその先がわかりきってしまう。
 しかし、見ずにはいられない。

「うわ、今までにとった最低点を大幅に更新しちゃったぁ~……まじか~……」
「しっかり勉強しないと、これからもどんどん更新しちゃいますからねー」

 数学の先生は冷たかった。
 紫乃は苦い表情を浮かべながら席へ戻る。
 よほど悪かったらしい。
 試験直前に、瑠衣がスパルタで教えていたというのに。

(紫乃ちゃん、そんなに悪かったのかにゃ……きっと瑠衣も……)

 瑠衣も受け取ったあと、おそるおそる確認してみる。

「あ、結構いいかも……」
「へぇー、いいなぁ~。僕は全然だめだったよ~」
「しのにゃん……瑠衣、せっかく勉強教えたのに……」

 こうして、クラス全員に答案が行き渡った。
 テスト返却も授業も終わり、先生も教室から出ていった。
 紫乃にはあとでしっかりお仕置きしておかないといけない。

「はー、終わった終わった~。ずっと殺気みたいなもの感じてたからどうしようかと思ったよ~」
「……できれば今も感じてほしいにゃ……」

 紫乃は実に明るく、満面の笑みを浮かべながらなんでもなさそうに言う。
 殺気を感じてくれたのはいいことだが、もう少し危機感を持ってもらいたいものだ。

「まあいいにゃ。しのにゃんは瑠衣がきっちりしごいてやるからにゃ」

 瑠衣は笑顔を浮かべた。
 ――が、その笑顔の奥には色々な感情が詰め込まれている。
 紫乃はそれを察せられないほど鈍感ではないだろう。
 紫乃の笑顔が引きつったものになっているし。

「うわああ!! 嫌だぁ、僕お家に帰る~!!」
「あっ、待て逃げるにゃぁぁぁ!!」

 瑠衣のただならぬ気配を感じてか、紫乃が逃げ惑う。
 一時間目が終わっただけだというのに、紫乃はもう帰ろうとしている。
 下駄箱へ一直線だ。

「待つにゃぁ、しのにゃぁぁぁん!」

 瑠衣と紫乃は、二時間目が始まるギリギリまで追いかけっこをしていたとか……
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