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第一章 高校一年生(三学期)
にがて(葉奈)
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「ねぇ、はなにゃん。君、彼女居ないのかにゃ?」
「……は?」
時刻は午後七時。
なぜか瑠衣に食事に誘われ、部活帰りに学校近くのファミレスに寄ることとなった。
そこでいきなり口を開いたかと思ったら、訳のわからないことを言い出した。
どう返したものかと悩んでいると、その様子で察されたのだろう。
瑠衣は妙にイラッとする目付きで、気持ち悪くニヤニヤと笑いながら話を続ける。
「——ふーん、そっかぁ……居ないんだにゃあ。んじゃ、しのにゃんやみくにゃんはフリーってことかにゃ?」
「朔良から話は聞いてるけど……ほんとに見境なしなんすね」
「にゃはは。そりゃあ、可愛い子は食べたくなるものにゃ」
本当に、可愛い女の子なら誰でもいいらしい。
考えていることが丸分かりな目付きで笑うところを見るたび、やはりろくな人間ではないということをひしひし感じる。
瑠衣は結構モテる人のようだ。
世間一般からしたら可愛いと見える容姿に、ほっちゃりとした安心感のある体つき。
それらに加え、基本的にはフレンドリーな態度なのがその理由なのだろう。
今でも、女の子からの通知が瑠衣のスマホから鳴り響いている。
……しかし、それだけなら特に嫌う理由にはならない。
問題なのは、『彼女』が頻繁に替わっていくこと。
昨日は葉奈より年下の女の子だと思ったら、今日には大学生になっていたり。
朔良に聞いた話では、同日に複数の彼女と約束を取り付けたせいで修羅場になっていたこともあったらしい。
そして、瑠衣はそれを一切悪びれてもいないのだとか。
ただ純粋に、自分の周りの人達を大事にしていない……そこが嫌いなのだ。
更に今は——
「今はみくにゃんみたいな子がタイプだにゃあ……純粋そうな感じだったし。大人しそうで穢れをしらない感じがもうたまんないにゃ~!」
「……」
——瑠衣は美久里に目をつけている、ということが葉奈の苦手意識を増長させていた。
確かに、瑠衣と違って純粋そのものという印象がある。
だからこそ、保護者的な目線で彼女を見ることが多いのだ。
そんな我が子のような美久里を、ビッチの代名詞とも言える瑠衣に渡してしまえばどうなるか……考えただけでゾッとする。
「朔良はどうなんすか? 昔からの知り合いで仲良いんすよね?」
咄嗟に引き合いに出してしまったことを心の中で謝りながらも、これは純粋に訊きたかったことだ。
「さくにゃん? えー……いや~……瑠衣に興味ないだろうしにゃあ~……」
朔良の名前を出した途端に、態度があからさまに変化する。
急にそわそわし出し、目があちこちに向き、髪をいじり出す。
これはもしや……と、勘のいい葉奈はすぐさま気づく。
まあ、超のつくほどの鈍感でなければ誰でも気づきそうだが。
「そっすか……よくわかったっす」
瑠衣の微笑ましい態度を見て、少し苦手意識が和らいだ気がした葉奈だった。
「……は?」
時刻は午後七時。
なぜか瑠衣に食事に誘われ、部活帰りに学校近くのファミレスに寄ることとなった。
そこでいきなり口を開いたかと思ったら、訳のわからないことを言い出した。
どう返したものかと悩んでいると、その様子で察されたのだろう。
瑠衣は妙にイラッとする目付きで、気持ち悪くニヤニヤと笑いながら話を続ける。
「——ふーん、そっかぁ……居ないんだにゃあ。んじゃ、しのにゃんやみくにゃんはフリーってことかにゃ?」
「朔良から話は聞いてるけど……ほんとに見境なしなんすね」
「にゃはは。そりゃあ、可愛い子は食べたくなるものにゃ」
本当に、可愛い女の子なら誰でもいいらしい。
考えていることが丸分かりな目付きで笑うところを見るたび、やはりろくな人間ではないということをひしひし感じる。
瑠衣は結構モテる人のようだ。
世間一般からしたら可愛いと見える容姿に、ほっちゃりとした安心感のある体つき。
それらに加え、基本的にはフレンドリーな態度なのがその理由なのだろう。
今でも、女の子からの通知が瑠衣のスマホから鳴り響いている。
……しかし、それだけなら特に嫌う理由にはならない。
問題なのは、『彼女』が頻繁に替わっていくこと。
昨日は葉奈より年下の女の子だと思ったら、今日には大学生になっていたり。
朔良に聞いた話では、同日に複数の彼女と約束を取り付けたせいで修羅場になっていたこともあったらしい。
そして、瑠衣はそれを一切悪びれてもいないのだとか。
ただ純粋に、自分の周りの人達を大事にしていない……そこが嫌いなのだ。
更に今は——
「今はみくにゃんみたいな子がタイプだにゃあ……純粋そうな感じだったし。大人しそうで穢れをしらない感じがもうたまんないにゃ~!」
「……」
——瑠衣は美久里に目をつけている、ということが葉奈の苦手意識を増長させていた。
確かに、瑠衣と違って純粋そのものという印象がある。
だからこそ、保護者的な目線で彼女を見ることが多いのだ。
そんな我が子のような美久里を、ビッチの代名詞とも言える瑠衣に渡してしまえばどうなるか……考えただけでゾッとする。
「朔良はどうなんすか? 昔からの知り合いで仲良いんすよね?」
咄嗟に引き合いに出してしまったことを心の中で謝りながらも、これは純粋に訊きたかったことだ。
「さくにゃん? えー……いや~……瑠衣に興味ないだろうしにゃあ~……」
朔良の名前を出した途端に、態度があからさまに変化する。
急にそわそわし出し、目があちこちに向き、髪をいじり出す。
これはもしや……と、勘のいい葉奈はすぐさま気づく。
まあ、超のつくほどの鈍感でなければ誰でも気づきそうだが。
「そっすか……よくわかったっす」
瑠衣の微笑ましい態度を見て、少し苦手意識が和らいだ気がした葉奈だった。
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