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第一章 高校一年生(二学期)
たいせつなもの(萌花)
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「えー、では、今から皆さんの『大切なもの』について発表してもらおうと思います」
宗教の時間、シスターが朗らかにそう言った。
発表とは言っても、それほど長い時間を使うわけではない。
一人一分間ほどで終わる短いスピーチだ。
「えっと、私の大切なものについて発表します」
自分の番が回ってきた萌花は、緊張した面持ちで話し始める。
言いたいことは決まっている。
これだけは言いたい。
とても、大切なことだから――!
「私の大切なものは、『友人』です。私の人生に彩りと楽しさを与えてくれました。なのでその友人たちに感謝しながら日々を生きていきたいです」
上手く伝えられた気がする。
萌花は満足して、それぞれの『友人』たちに目を向ける。
その友人たちは、萌花のスピーチに感動したようだ。
萌花の方を見て微笑んでいたり、目を潤ませていたり、恥ずかしそうに赤面していたり。
その様子を見て、萌花はすごく心地いい気分で自分の席に戻った。
(緊張した……だけど、ちゃんと伝えられてよかった……)
本当に、友人たちには感謝している。
八方美人で完璧になろうとしていた萌花を、優しく仲間に迎え入れてくれたのだから。
誰にも気を許さなくて、誰にも深入りしなかった萌花のことを、あたたかく受け入れてくれたのだから。
もう、あの時の自分じゃない。
あの時の、ものすごい失態をしてしまった自分とは違う。
今の萌花ならわかる気がした。
あの時、何を言えばよかったのか。何が正解だったのか。
でも、もう遅い。今更気づいても、もう手遅れだ。
(だけど、繰り返さないことはできる……!)
これからもしあの時のことが再度起きたとしても、今の萌花なら対応できる。
大切なものを、失わなくて済むのだ。
「ふ、ふふふ……」
唐突に不気味な笑い声を出した萌花を、クラスメイトたちは奇異の目で見ていた。
宗教の時間、シスターが朗らかにそう言った。
発表とは言っても、それほど長い時間を使うわけではない。
一人一分間ほどで終わる短いスピーチだ。
「えっと、私の大切なものについて発表します」
自分の番が回ってきた萌花は、緊張した面持ちで話し始める。
言いたいことは決まっている。
これだけは言いたい。
とても、大切なことだから――!
「私の大切なものは、『友人』です。私の人生に彩りと楽しさを与えてくれました。なのでその友人たちに感謝しながら日々を生きていきたいです」
上手く伝えられた気がする。
萌花は満足して、それぞれの『友人』たちに目を向ける。
その友人たちは、萌花のスピーチに感動したようだ。
萌花の方を見て微笑んでいたり、目を潤ませていたり、恥ずかしそうに赤面していたり。
その様子を見て、萌花はすごく心地いい気分で自分の席に戻った。
(緊張した……だけど、ちゃんと伝えられてよかった……)
本当に、友人たちには感謝している。
八方美人で完璧になろうとしていた萌花を、優しく仲間に迎え入れてくれたのだから。
誰にも気を許さなくて、誰にも深入りしなかった萌花のことを、あたたかく受け入れてくれたのだから。
もう、あの時の自分じゃない。
あの時の、ものすごい失態をしてしまった自分とは違う。
今の萌花ならわかる気がした。
あの時、何を言えばよかったのか。何が正解だったのか。
でも、もう遅い。今更気づいても、もう手遅れだ。
(だけど、繰り返さないことはできる……!)
これからもしあの時のことが再度起きたとしても、今の萌花なら対応できる。
大切なものを、失わなくて済むのだ。
「ふ、ふふふ……」
唐突に不気味な笑い声を出した萌花を、クラスメイトたちは奇異の目で見ていた。
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