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第一章 高校一年生(二学期)

がくえんさい3(美久里)

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 午前中はシフトが入っていないので、好きにまわることが許された。
 とはいえ、午後にはクラスに戻って仕事をしなくてはならないのだが……それはさておき。
 美久里は同じく午前中が空いてる萌花と行動を共にしている。

「どこまわります?」
「うーん……結構色々あって迷うなぁ……」

 萌花がそう聞いてきたけど、美久里はそれに答えることが出来なかった。
 優柔不断なせいもあってか、なかなか決められない。

「確かにそうですよね…………ん?」

 急に萌花が立ち止まる。
 美久里はそれに倣って立ち止まり、萌花の視線の先を追う。

 そこには、お化け屋敷を彷彿とさせるお店があった。
 受付らしき生徒は普通の格好をしているが、その背景が普通じゃない。
 というのも、壁がほとんど真っ暗で、お化けのイラストが描かれた飾りが貼られている。

「……入ってみる?」

 特に行きたいところのなかった美久里は、萌花にそう提案する。
 だが、萌花は複雑そうな顔でお化けのイラストを見つめるだけだ。
 もしかして……

「萌花ちゃん、お化け屋敷とか苦手?」
「……ちっ! 違いますっ!」

 何気なく訊いただけだが、萌花の声が妙に裏返った。
 図星なのだろうか。

「わ、私は別にそんな……」
「じゃあ入ってみない? 面白そうだし!」
「えっ!! ……え、ええ。いいですわよ?」
「……誰?」

 なぜか萌花のキャラがおかしなことになっている。
 キャラというか、主に口調が。
 しかも目が変に泳いでいて、焦点が定まっていないようだった。

 だけど、それほど気にするほどのことではないと思っていた。
 ……あの時までは。
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