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第一章 高校一年生(一学期)

しゅうようかい2(萌花)

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 大きな荷物をバスに放り込んで、決められた座席に着く。
 高校で初めての大きな行事に、萌花は心が躍った。
 隣には朔良がいて、後ろには葉奈や紫乃や美久里がいる。
 こんなに楽しい気持ちになったのはいつぶりだろう。

「なんか、萌花嬉しそうだな」
「……ふぇっ!? あー、いや、その……宗養会楽しみだなと思いまして……」
「まあ、たしかにそうだよな。しかも全員同じグループになったしな」

 そう。朔良の言う通り、事前にグループ分けがあった。
 ……あった、のだが。幸運にも五人グループで全員同じグループになることが出来たのだ。
 これはもはや、“運命”と呼ぶべきなのかもしれない。

「おーい、お二人さん。これ食べる~?」
「おー、紫乃ちゃん! サンキュー」
「ありがとうございます!」

 紫乃が後ろから手を出し、朔良と萌花にお菓子を差し出す。
 この茶色くて甘い匂いが漂うこれは、チョコレートだ!

「お、美味しい……」
「あはは。萌花ってなんでも美味しそうに食べるよな」

 萌花は渡されたチョコレートを口に入れ、舌で転がす。
 すると、口いっぱいにチョコレートの甘みが広がり、萌花の顔が自然と緩む。

 それを目撃した朔良は、羨ましそうに笑った。
 萌花のようになんでも美味しいと感じられたら、とても幸せそうだと思ったのだ。

「もぐはむもむむ……」
「すまん。何言ってるかわかんねぇ」

 萌花が食べながら何かを話しているが、朔良には伝わらなかった。
 食べるか喋るかどっちかにしろ、というツッコミが聞こえてきそうだ。
 チョコレートが完全に消え去ったところで、萌花はさっき伝えたかったことを口にした。

「本当に美味しいです!」
「わ、わかったから落ち着け。顔が近い」

 萌花は興奮気味に、ずいっと朔良に顔を近づける。
 すると、朔良は萌花から逃げるようにして身体を遠ざけ、両手で「どうどう」と落ち着かせる。
 そんな朔良の様子を見て、萌花は我に返った。

「ご、ごめんなさい……つい……」

 萌花は顔を赤く染め、素早く顔を元の位置に戻す。
 微妙な空気になってしまった二人だったが、不思議と嫌な気はしないのだった。
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