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第一章 高校一年生(一学期)

にゅうよく(美久里)

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 お風呂は人類が生み出した至高の文化だと思う。
 日々の疲れや嫌なことを洗い流してくれるから。
 洗い流してくれるだけでなく、心も満たしてくれる最高の文化。

「――だと、私は思うわけですよ」
「……いや、真っ裸でそんなこと言われても……」

 美久里は妹と一緒にお風呂に入っている。
 小さい頃から何度も一緒に入っているから、全く抵抗感がない。
 ……のだが、妹には少し不満があった。
 それは――

「でさ、『裸の付き合い』って言葉があるように、お風呂というのは――」
「うん、わかった。わかったから一回止まろ!?」

 妹が暴走を止めると、美久里はしょぼんとした顔で身体を洗う。
 すると、妹は安堵のため息をつく。
 お風呂に入ると、姉は別人のように豹変するのだ。
 それに辟易するというか、付き合いきれないというか……

「……ね、ちょっと……た、助け……」
「おねえー!?」

 妹が考え事をしていると、美久里は泡だらけになって身体が見えなくなっていた。
 姉を救出すべく、妹は慌ててお湯をぶっかける。

「ふぃー……た、助かった……」

 一命を取り留めた美久里は、冷や汗をかきながら安堵の表情を浮かべる。
 美久里の命を救った妹も、何やら謎の達成感があった。

「はぁ……気をつけなよ、おねえ」
「う、うん……ごめんね……」

 本気で心配している妹に、美久里は頬を掻きながら謝る。

「やっぱり美奈みながいないとだめだね……」
「……そんなことはいいから、身体洗ったらそこ退いて」
「あ、ご、ごめん……!」

 姉――美久里が照れくさそうな笑みを浮かべるも、妹――美奈は普通にいつも通りの様子だ。
 その様子に、若干寂しさを覚える美久里だったが、美奈は嬉しそうに口角を上げていた。
 要するに――美奈は素直じゃないのだ。
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