5 / 6
それぞれのルート
沙橙(クラスメイト)ルート
しおりを挟む
「それにしても、私を置いてくなんて二人とも酷いよなぁ……」
「……うん、でも……仕方ないと思うな」
「そう?」
今朱美と話をしているのは、クラスメイトである沙橙。
茶髪橙目の美少女だ。
朱美と同じ、肩につくぐらいの長さの髪を持つ彼女の目は、どこか光が入っていない。
朱美以外に親しい間柄の人がいないのもあってか、教室ではいつも本を読んで過ごしている。
その時も、いつでも、ハイライトなし。
朱美は密かに、その目に光を宿してみたいと考えている。
「……だってさ――みんな朱美ちゃんのことが好きみたいだしな。紫音先輩が朱美ちゃんにキスしたのも、美桜ちゃんや蒼衣ちゃんがキス後に変だったのも、それなら辻褄が合うだろう?」
「……そ、それは……」
確かに、それなら辻褄が合う。
だけど、いくらなんでも、それは違うだろう。
「でも、私を好きっていっても、美桜は姉としてだろうし、蒼衣は幼なじみとしてだろうし、紫音先輩は……からかっただけでしょ?」
朱美はあの三人に恋愛感情を抱いていないし、あの三人も朱美に恋愛感情を抱いていないだろう。
スキンシップ旺盛なのは昔から変わらないし。
特に何も意識せずに放った言葉を、沙橙はどう思ったのか。
心做しかいつもより表情を明るくして言う。
「……じゃあ朱美ちゃんは、ボクのことを好きになってくれる可能性があるってことだよな?」
「…………それって、どういう――」
「……でも、誰を選ぶかは慎重にした方がいいぞ? 何せ君は――百合ハーレムの主人公なんだから」
沙橙は手首の傷を見せつけるかのようにして、朱美の頭を撫でた。
その手首には、刃物で切り裂いたような傷がある。
その傷に触れない方がいいのだろうが、なぜだかとても胸が痛くなった。
「あの、それ……」
「ん? ああ、これか」
朱美がおずおずと尋ねると、沙橙は手首を袖の中に隠す。
そして、朱美が言いたかったことを理解したのか、気にした様子もなく答えた。
「……これはな……まあ、自分と世界が嫌になっちゃって、限界が来た時につけてしまったんだ。醜いよね」
「そんなことないよ……」
「……へぇ? 君は優しいんだな……でも、ボクは醜いと思う。だって、これはボクが弱いって証明しているようなものだから」
「沙橙は弱くないよ。……私なんかより、ずっと強いよ」
朱美がそう言うと、沙橙は少し驚いた顔をして、すぐに笑った。
その笑顔に、朱美は安堵する。
「……あはは、君は優しいね。ありがとう」
「うん……」
「……でも、やっぱり弱いんだ。ボクは」
沙橙は苦笑して言った。
なぜ沙橙は自分のことをそんなに下げるのだろう。
朱美は疑問に思ったが、答えてくれそうになかったので聞かないことにした。
「……朱美ちゃんは気になる人とかいるかい?」
「気になる人?」
「そう。まあ、ボクは君しか興味ないからわからないけどさ」
沙橙は手首を袖の中に隠したまま笑う。
その笑顔に陰りが見えた気がして、朱美は堪らず言う。
「……私は沙橙の笑顔が好きだよ。だから、辛い時は無理して笑わなくていいと思う」
「……っ!」
沙橙は驚いたように目を見開いて、そして優しく微笑んだ。
「……君はやっぱり優しいね」
「別に優しいわけでは」
「ううん、優しいよ。だから――ボクのヒーローなんだ」
朱美はただ思ったことを口にしただけで、褒められるようなことはしていない。
そのはずなのに、沙橙に笑顔でそう言われたことが嬉しくて、朱美は思わず笑みが零れるのだった。
もっと踏み込んでしまいたい。
自分のことをヒーローとまで言ってくれた、彼女の心の奥まで。
だけど、それをするのはまだ早い。
だから今はただ、笑っていよう。
彼女の笑顔を守るためにも。
「あ、そういえば」
「ん?」
沙橙が何かを思い出したかのように言うので朱美は首を傾げたが、すぐにその疑問は解決した。
「ボクとしたことが……君にプレゼントを渡そうと思っていたんだ」
「プレゼント?」
「……少し後ろを向いていてくれないか?」
沙橙にそう言われ、朱美は素直に後ろを向く。
後ろでごそごそと何かを漁る音が聞こえたかと思うと、「もういいよ」と声がかけられたので前を向いた。
「……これ」
そう言って沙橙が差し出したのは、赤いリボンがついた黒い小さな箱だった。
リボンでラッピングされたそれを受け取りながら尋ねる。
「これは?」
「……開けてみてよ」
言われた通りにリボンを解き蓋を開けると、中には時計が入っていた。
「これ……」
「そう、君に似合うと思って」
「……ありがとう! 大切にするね!」
朱美が満面の笑みを浮かべてそう言うと、沙橙は顔を赤くして「どういたしまして」と言う。
その時朱美は気づいた。
沙橙の頬が赤くなっていることに。
「沙橙、どうしたの?」
「……っ! な、なんでもないよ」
慌てて顔を逸らす彼女を見て、朱美は首を傾げる。
さっきまで普通だったのに、急にどうしたというのだろう。
そんな疑問を抱きながらも時計を箱から取り出し、手首につけた。
「どう? 似合うかな?」
「……うん、とてもよく似合っていると思うよ」
「ありがとう!」
沙橙が褒めてくれたのが嬉しくて、朱美はさらに笑みを深める。
そんな朱美を見た沙橙は、少し俯くと呟いた。
「……もしかして、ボクを選んでくれた世界線なのか?」
「何か言った?」
「……いや、なんでもないよ」
朱美には聞こえなかったが沙橙は嬉しそうに笑うと、突然真剣な表情をして言う。
「……ねぇ朱美ちゃん、ボクは君のことが好きだ」
「え……」
「……もちろん恋愛的な意味で」
突然の告白に驚く朱美を気にせず沙橙は続ける。
「……ボクは君のことが好きだけど、君は違うだろう? だから君に好きになってもらえるようにボク頑張るよ。……でも」
そこで言葉を区切ると沙橙は朱美の手を取り言った。
「……他の女の子になんて渡さない。絶対に、だ」
「……え?」
言葉の意味がわからなくて聞き返すが、沙橙は答えずすぐにいつもの笑顔に戻る。
そして朱美の頭を撫でた。
それがとても心地よくて、思わず目を細める。
沙橙はそんな朱美を見て目を細めると、頬に手を添えた。
そしてゆっくりと顔を近づけて来る。
何をされるのかわからないまま朱美はただそれを呆然と見ていたが、唇が触れる瞬間まであと少しというところで慌てて沙橙の口を手で覆った。
「な、何しようとしてるの!?」
「……キスだけど?」
「きっ!? なんで!?」
「……なんでって、君が好きだからだよ」
さも当然のように言う沙橙に、朱美は混乱するばかりであった。
そんな朱美を見て、沙橙はくすりと笑う。
「……まあでも、今はいいよ。君がボクを好きになってくれるまで待つから」
そう言って微笑む沙橙の表情はとても優しくて、朱美は思わず見惚れてしまった。
だがすぐに我に返ると慌てて首を振る。
今のは違う! 見とれたんじゃない! と自分に言い聞かせながら。
そんな朱美を見て沙橙はさらに笑みを深めると、耳元で囁いた。
「……覚悟しててね、朱美ちゃん」
それだけ言うと沙橙は教室から出て行った。
後に残ったのは顔を真っ赤に染めた朱美と、その手首で時を刻む時計だけだった。
沙橙が教室から出た後、朱美はその場に座り込んだ。
心臓はまだドキドキしているし顔も熱いままである。
「……はぁ」
深いため息をつく。
まさか沙橙に告白されるとは思わなかったのだ。
いや、本当に沙橙は朱美のことが好きなのだろうか?
好きだという割にはあまりにもあっさりしているような……
そもそもなぜ沙橙は朱美のことが好きなのだろう。
朱美は誰かに好かれるような性格をしているとは思っておらず、沙橙の気持ちがわからない。
「……というか、なんで私はこんなにドキドキしているんだ?」
確かに沙橙は綺麗な顔をしているし、性格もいい方だろうとは思う。
そんな相手に告白されたのだから嬉しくないわけがないのだが、それだけではない気がした。
「なんだろう……この気持ち」
朱美が考えていると突然扉が開き、誰かが入ってくる音がしたので顔を上げる。
すると、そこには先程出て行ったばかりの沙橙が立っていた。
「あれ? どうしたの?」
朱美が尋ねると、沙橙は無言で近づいて来る。
そして朱美の隣に座った。
「……どうして戻って来たの?」
朱美は不思議に思い尋ねたが、返事はない。
その代わりに腰に手が回ってきて抱きしめられる形になってしまった。
突然のことに驚き離れようとするも力が強くて逃れられない。
「ちょ、ちょっと……!」
「……ねぇ」
呼びかけても返事がなかったはずの沙橙が突然口を開いた。
「……ボクのこと好き?」
「……え?」
突然のことに頭が追いつかない。
なぜそんなことを聞くのだろう。
そんな疑問を抱く朱美を気にせず、沙橙は続けた。
「……答えてよ」
「す……好きだよ……」
朱美は戸惑いながらもそう答える。
すると沙橙は満足そうに笑った。
その笑顔を見て胸が締め付けられるような感覚がするのと同時に、顔が熱くなるのを感じた。
なんだろうこの感情は……と不思議に思っていると、突然キスされた。
しかも触れるだけの軽いものではなく、舌を入れられ口内を蹂躙するような濃厚なもので、朱美は頭が真っ白になり何も考えられなくなる。
そんな朱美にお構いなく沙橙は何度も角度を変えて口付けを続けた後ようやく離してくれた。
「っはぁ……」
やっと息ができたと思い呼吸を整えようとするも、すぐにまた口を塞がれる。
今度は先程よりも長く深いものだったため息が続かず苦しくなり始めた頃になってやっと解放された。
「ぷはっ!」
やっと解放されて思いっきり息を吸い込むと、沙橙に再び抱きしめられる。
今度は優しく壊れ物を扱うかのようにそっと包み込むような感じだった。
「……朱美ちゃん……」
耳元で名前を呼ばれただけなのにビクッと肩を揺らしてしまう。
それが恥ずかしかったが、それ以上に嬉しかった。
そんな朱美の様子に気づかず、沙橙は続ける。
「……朱美ちゃん……ボクは君が大好きなんだ」
そう言ってまたキスをされたので慌てて止めると、不服そうな顔をされたので目を逸らした。
「……なんで目を逸らすのさ」
「いや……だって……」
流石に恥ずかしくなって顔を逸らすと、頬を掴まれ正面を向かされる。
そして再びキスをされた。
今度は触れるだけの軽いものだったが、それでも心臓に悪い。
「……もう、なんで目を逸らすかな」
「だって……恥ずかしいし……」
朱美がそう言うと沙橙は嬉しそうに笑った。
そんな笑顔を見てドキッとすると同時に胸が高鳴るのを感じる。
これは一体何なのだろうと思っていると、沙橙に抱きしめられた。
「……ねぇ朱美ちゃん、ボクのこと好き?」
「う、うん……」
「……良かった」
そう言ってさらに抱きしめる力を強くする沙橙の背中に手を回し抱きしめ返すと、さらに強く抱き締められた。
そして沙橙は重苦しそうに口を開いた。
「……朱美ちゃん、ボクの昔話聞いてくれるかな?」
「え? あ、うん」
突然の問いかけに戸惑いながらも頷くと、沙橙はゆっくりと語り始めた。
「……ボクね、ずっといじめられてたんだ。……ううん、あれはいじめなんかじゃない。ただボクのことが気に入らなかっただけ。ボクが『気持ち悪い』からって理由で。だからボクは自分が嫌いで仕方がなかった」
「沙橙……」
朱美は悲しげに目を伏せる沙橙を慰めようと名前を呼ぶと、彼女は弱々しく微笑んで首を横に振った。
「……そんな時、もう死んじゃいたいって思った時、君が助けに来てくれたんだ」
「……私?」
「……そうだよ。君は覚えてないかもしれないけど、それでもボクにとってはかけがえのない思い出なんだ」
そう言って微笑む沙橙の表情はどこか寂しそうだった。
そんな沙橙を見て朱美は何も言えず黙り込んでしまう。
すると沙橙は再び口を開いた。
「……ボクはね、ずっと君に憧れていたんだ。強くて優しくてかっこよくて、それでいて可愛くて。だから君を好きになれた時、とても嬉しかったんだ」
沙橙は嬉しそうに微笑み朱美の手を握りながら続けた。
「ボクは君を愛しているよ。だからね……ずっと一緒に居たいんだ」
「……っ!」
その言葉に朱美は顔を真っ赤に染める。
そして沙橙は朱美の手を取り、自分の頬に添えさせた。
その頬はとても熱かったが、それ以上に朱美の心臓の方が高鳴っていた。
まるで壊れてしまったかのようにバクバクと脈打っている。
そんな朱美を見て沙橙はクスリと笑った。
その笑みにすらドキリとするのだからもうどうしようもないだろう。
「……ねぇ朱美ちゃん。ボクのこと嫌いかい?」
「そ、そんなこと……!」
慌てて首を横に振ると、沙橙は安心したように笑った。
そんな笑顔を見て胸が高鳴るのと同時に顔が熱くなるのを感じる。
もうわけがわからなかった。
どうしてこんなにも沙橙に惹かれてしまうのだろう。
朱美は自分の気持ちがよくわからず混乱していた。
そんな朱美を気にせず、沙橙は続ける。
「良かった……じゃあさ、ボクと付き合ってよ」
「……え?」
突然の発言に驚く朱美だったが、すぐに我に帰ると再び首を横に振った。
「無理だよ! 私なんかじゃ……」
「……そんなことないよ」
そう言って沙橙は再び強く抱きしめた。そして耳元で囁くように言う。
その声は少し震えていて緊張しているようだった。
「……ボクは本当に君に救われた。君がいなければ今のボクは居ないんだ」
「沙橙……」
「……だから、ボクを選んでくれないか? 君が誰かのものになるなんて耐えられないんだ」
沙橙の切羽詰まったような声音に朱美は何も言えなくなる。
そんな朱美を見て沙橙は悲しげに微笑むと、ゆっくりと身体を離した。
「ごめん……いきなりこんなこと言われても困るよね……」
そう言って立ち上がる沙橙を見て、思わず引き止めようと手を伸ばすが届かなかった。
そんな様子を見た朱美は胸が締め付けられるような感覚に襲われると同時に泣きそうになったが、必死に堪えた。
「あれ……?」
そんな時、とある記憶が蘇り朱美は首を傾げた。
『そこでなにしてるの!?』
『……もうボクを楽にしてくれよ』
『あなたのこと何も知らないけど、見ちゃったら見て見ぬふりなんてできないよ!』
『……うるさいな』
『私の手を取って? 私はあなたの笑顔が見たい!』
『……どうして……』
『だって、そんな顔したまま死んでしまうなんてやだよ!』
『っ……!』
断片でしかない。
朱美は全部を思い出したわけではない。
けれど、その時の相手が目の前の沙橙だということだけはわかった。
「……もしかしてさ」
「うん?」
「あの時の人って……」
朱美の言葉に沙橙は目を見開いた後、ゆっくりと口を開いた。
「……そうだよ。あの時助けてくれたのは君だ」
その言葉に朱美はハッとした表情を浮かべると俯いたまま黙り込んでしまった。
そんな朱美を見て沙橙は悲しそうに微笑むと背を向けた。
「……ごめんね……迷惑だよねこんなボクなんて」
そう言って立ち去ろうとする沙橙の腕を思わず掴んだ。
すると沙橙は驚いた顔をして振り返る。
「朱美ちゃん……?」
「……私、ちょっと後悔してた。余計なお世話なんじゃないかって、今ならわかる。でもあの時はわからなかったの。沙橙を助けたいって思ったから行動したんだけど、それが本当に正しかったのかわからなくて」
「……」
朱美の言葉を聞いていた沙橙は黙って聞いていたが、やがて優しく微笑むと言った。
「……君は優しい子だね」
「そんなことは……!」
「……あるよ。だってボクのために泣いてくれたじゃないか」
そう言われて初めて自分が泣いていることに気づいた朱美は、慌てて涙を拭うと恥ずかしそうに俯いた。
そんな朱美を見て沙橙はククッと笑うと、再び抱きしめる。
今度は優しく包み込むように、それでいて離さないと言わんばかりに強く抱きしめた。
「……もう離さない。どこにも行かないで……」
沙橙の言葉は祈りのようで、朱美自身も沙橙と離れてしまうんじゃないかと思い、思わずぎゅっと抱きついた。
「大丈夫……私はここにいるから」
「……うん、でも……仕方ないと思うな」
「そう?」
今朱美と話をしているのは、クラスメイトである沙橙。
茶髪橙目の美少女だ。
朱美と同じ、肩につくぐらいの長さの髪を持つ彼女の目は、どこか光が入っていない。
朱美以外に親しい間柄の人がいないのもあってか、教室ではいつも本を読んで過ごしている。
その時も、いつでも、ハイライトなし。
朱美は密かに、その目に光を宿してみたいと考えている。
「……だってさ――みんな朱美ちゃんのことが好きみたいだしな。紫音先輩が朱美ちゃんにキスしたのも、美桜ちゃんや蒼衣ちゃんがキス後に変だったのも、それなら辻褄が合うだろう?」
「……そ、それは……」
確かに、それなら辻褄が合う。
だけど、いくらなんでも、それは違うだろう。
「でも、私を好きっていっても、美桜は姉としてだろうし、蒼衣は幼なじみとしてだろうし、紫音先輩は……からかっただけでしょ?」
朱美はあの三人に恋愛感情を抱いていないし、あの三人も朱美に恋愛感情を抱いていないだろう。
スキンシップ旺盛なのは昔から変わらないし。
特に何も意識せずに放った言葉を、沙橙はどう思ったのか。
心做しかいつもより表情を明るくして言う。
「……じゃあ朱美ちゃんは、ボクのことを好きになってくれる可能性があるってことだよな?」
「…………それって、どういう――」
「……でも、誰を選ぶかは慎重にした方がいいぞ? 何せ君は――百合ハーレムの主人公なんだから」
沙橙は手首の傷を見せつけるかのようにして、朱美の頭を撫でた。
その手首には、刃物で切り裂いたような傷がある。
その傷に触れない方がいいのだろうが、なぜだかとても胸が痛くなった。
「あの、それ……」
「ん? ああ、これか」
朱美がおずおずと尋ねると、沙橙は手首を袖の中に隠す。
そして、朱美が言いたかったことを理解したのか、気にした様子もなく答えた。
「……これはな……まあ、自分と世界が嫌になっちゃって、限界が来た時につけてしまったんだ。醜いよね」
「そんなことないよ……」
「……へぇ? 君は優しいんだな……でも、ボクは醜いと思う。だって、これはボクが弱いって証明しているようなものだから」
「沙橙は弱くないよ。……私なんかより、ずっと強いよ」
朱美がそう言うと、沙橙は少し驚いた顔をして、すぐに笑った。
その笑顔に、朱美は安堵する。
「……あはは、君は優しいね。ありがとう」
「うん……」
「……でも、やっぱり弱いんだ。ボクは」
沙橙は苦笑して言った。
なぜ沙橙は自分のことをそんなに下げるのだろう。
朱美は疑問に思ったが、答えてくれそうになかったので聞かないことにした。
「……朱美ちゃんは気になる人とかいるかい?」
「気になる人?」
「そう。まあ、ボクは君しか興味ないからわからないけどさ」
沙橙は手首を袖の中に隠したまま笑う。
その笑顔に陰りが見えた気がして、朱美は堪らず言う。
「……私は沙橙の笑顔が好きだよ。だから、辛い時は無理して笑わなくていいと思う」
「……っ!」
沙橙は驚いたように目を見開いて、そして優しく微笑んだ。
「……君はやっぱり優しいね」
「別に優しいわけでは」
「ううん、優しいよ。だから――ボクのヒーローなんだ」
朱美はただ思ったことを口にしただけで、褒められるようなことはしていない。
そのはずなのに、沙橙に笑顔でそう言われたことが嬉しくて、朱美は思わず笑みが零れるのだった。
もっと踏み込んでしまいたい。
自分のことをヒーローとまで言ってくれた、彼女の心の奥まで。
だけど、それをするのはまだ早い。
だから今はただ、笑っていよう。
彼女の笑顔を守るためにも。
「あ、そういえば」
「ん?」
沙橙が何かを思い出したかのように言うので朱美は首を傾げたが、すぐにその疑問は解決した。
「ボクとしたことが……君にプレゼントを渡そうと思っていたんだ」
「プレゼント?」
「……少し後ろを向いていてくれないか?」
沙橙にそう言われ、朱美は素直に後ろを向く。
後ろでごそごそと何かを漁る音が聞こえたかと思うと、「もういいよ」と声がかけられたので前を向いた。
「……これ」
そう言って沙橙が差し出したのは、赤いリボンがついた黒い小さな箱だった。
リボンでラッピングされたそれを受け取りながら尋ねる。
「これは?」
「……開けてみてよ」
言われた通りにリボンを解き蓋を開けると、中には時計が入っていた。
「これ……」
「そう、君に似合うと思って」
「……ありがとう! 大切にするね!」
朱美が満面の笑みを浮かべてそう言うと、沙橙は顔を赤くして「どういたしまして」と言う。
その時朱美は気づいた。
沙橙の頬が赤くなっていることに。
「沙橙、どうしたの?」
「……っ! な、なんでもないよ」
慌てて顔を逸らす彼女を見て、朱美は首を傾げる。
さっきまで普通だったのに、急にどうしたというのだろう。
そんな疑問を抱きながらも時計を箱から取り出し、手首につけた。
「どう? 似合うかな?」
「……うん、とてもよく似合っていると思うよ」
「ありがとう!」
沙橙が褒めてくれたのが嬉しくて、朱美はさらに笑みを深める。
そんな朱美を見た沙橙は、少し俯くと呟いた。
「……もしかして、ボクを選んでくれた世界線なのか?」
「何か言った?」
「……いや、なんでもないよ」
朱美には聞こえなかったが沙橙は嬉しそうに笑うと、突然真剣な表情をして言う。
「……ねぇ朱美ちゃん、ボクは君のことが好きだ」
「え……」
「……もちろん恋愛的な意味で」
突然の告白に驚く朱美を気にせず沙橙は続ける。
「……ボクは君のことが好きだけど、君は違うだろう? だから君に好きになってもらえるようにボク頑張るよ。……でも」
そこで言葉を区切ると沙橙は朱美の手を取り言った。
「……他の女の子になんて渡さない。絶対に、だ」
「……え?」
言葉の意味がわからなくて聞き返すが、沙橙は答えずすぐにいつもの笑顔に戻る。
そして朱美の頭を撫でた。
それがとても心地よくて、思わず目を細める。
沙橙はそんな朱美を見て目を細めると、頬に手を添えた。
そしてゆっくりと顔を近づけて来る。
何をされるのかわからないまま朱美はただそれを呆然と見ていたが、唇が触れる瞬間まであと少しというところで慌てて沙橙の口を手で覆った。
「な、何しようとしてるの!?」
「……キスだけど?」
「きっ!? なんで!?」
「……なんでって、君が好きだからだよ」
さも当然のように言う沙橙に、朱美は混乱するばかりであった。
そんな朱美を見て、沙橙はくすりと笑う。
「……まあでも、今はいいよ。君がボクを好きになってくれるまで待つから」
そう言って微笑む沙橙の表情はとても優しくて、朱美は思わず見惚れてしまった。
だがすぐに我に返ると慌てて首を振る。
今のは違う! 見とれたんじゃない! と自分に言い聞かせながら。
そんな朱美を見て沙橙はさらに笑みを深めると、耳元で囁いた。
「……覚悟しててね、朱美ちゃん」
それだけ言うと沙橙は教室から出て行った。
後に残ったのは顔を真っ赤に染めた朱美と、その手首で時を刻む時計だけだった。
沙橙が教室から出た後、朱美はその場に座り込んだ。
心臓はまだドキドキしているし顔も熱いままである。
「……はぁ」
深いため息をつく。
まさか沙橙に告白されるとは思わなかったのだ。
いや、本当に沙橙は朱美のことが好きなのだろうか?
好きだという割にはあまりにもあっさりしているような……
そもそもなぜ沙橙は朱美のことが好きなのだろう。
朱美は誰かに好かれるような性格をしているとは思っておらず、沙橙の気持ちがわからない。
「……というか、なんで私はこんなにドキドキしているんだ?」
確かに沙橙は綺麗な顔をしているし、性格もいい方だろうとは思う。
そんな相手に告白されたのだから嬉しくないわけがないのだが、それだけではない気がした。
「なんだろう……この気持ち」
朱美が考えていると突然扉が開き、誰かが入ってくる音がしたので顔を上げる。
すると、そこには先程出て行ったばかりの沙橙が立っていた。
「あれ? どうしたの?」
朱美が尋ねると、沙橙は無言で近づいて来る。
そして朱美の隣に座った。
「……どうして戻って来たの?」
朱美は不思議に思い尋ねたが、返事はない。
その代わりに腰に手が回ってきて抱きしめられる形になってしまった。
突然のことに驚き離れようとするも力が強くて逃れられない。
「ちょ、ちょっと……!」
「……ねぇ」
呼びかけても返事がなかったはずの沙橙が突然口を開いた。
「……ボクのこと好き?」
「……え?」
突然のことに頭が追いつかない。
なぜそんなことを聞くのだろう。
そんな疑問を抱く朱美を気にせず、沙橙は続けた。
「……答えてよ」
「す……好きだよ……」
朱美は戸惑いながらもそう答える。
すると沙橙は満足そうに笑った。
その笑顔を見て胸が締め付けられるような感覚がするのと同時に、顔が熱くなるのを感じた。
なんだろうこの感情は……と不思議に思っていると、突然キスされた。
しかも触れるだけの軽いものではなく、舌を入れられ口内を蹂躙するような濃厚なもので、朱美は頭が真っ白になり何も考えられなくなる。
そんな朱美にお構いなく沙橙は何度も角度を変えて口付けを続けた後ようやく離してくれた。
「っはぁ……」
やっと息ができたと思い呼吸を整えようとするも、すぐにまた口を塞がれる。
今度は先程よりも長く深いものだったため息が続かず苦しくなり始めた頃になってやっと解放された。
「ぷはっ!」
やっと解放されて思いっきり息を吸い込むと、沙橙に再び抱きしめられる。
今度は優しく壊れ物を扱うかのようにそっと包み込むような感じだった。
「……朱美ちゃん……」
耳元で名前を呼ばれただけなのにビクッと肩を揺らしてしまう。
それが恥ずかしかったが、それ以上に嬉しかった。
そんな朱美の様子に気づかず、沙橙は続ける。
「……朱美ちゃん……ボクは君が大好きなんだ」
そう言ってまたキスをされたので慌てて止めると、不服そうな顔をされたので目を逸らした。
「……なんで目を逸らすのさ」
「いや……だって……」
流石に恥ずかしくなって顔を逸らすと、頬を掴まれ正面を向かされる。
そして再びキスをされた。
今度は触れるだけの軽いものだったが、それでも心臓に悪い。
「……もう、なんで目を逸らすかな」
「だって……恥ずかしいし……」
朱美がそう言うと沙橙は嬉しそうに笑った。
そんな笑顔を見てドキッとすると同時に胸が高鳴るのを感じる。
これは一体何なのだろうと思っていると、沙橙に抱きしめられた。
「……ねぇ朱美ちゃん、ボクのこと好き?」
「う、うん……」
「……良かった」
そう言ってさらに抱きしめる力を強くする沙橙の背中に手を回し抱きしめ返すと、さらに強く抱き締められた。
そして沙橙は重苦しそうに口を開いた。
「……朱美ちゃん、ボクの昔話聞いてくれるかな?」
「え? あ、うん」
突然の問いかけに戸惑いながらも頷くと、沙橙はゆっくりと語り始めた。
「……ボクね、ずっといじめられてたんだ。……ううん、あれはいじめなんかじゃない。ただボクのことが気に入らなかっただけ。ボクが『気持ち悪い』からって理由で。だからボクは自分が嫌いで仕方がなかった」
「沙橙……」
朱美は悲しげに目を伏せる沙橙を慰めようと名前を呼ぶと、彼女は弱々しく微笑んで首を横に振った。
「……そんな時、もう死んじゃいたいって思った時、君が助けに来てくれたんだ」
「……私?」
「……そうだよ。君は覚えてないかもしれないけど、それでもボクにとってはかけがえのない思い出なんだ」
そう言って微笑む沙橙の表情はどこか寂しそうだった。
そんな沙橙を見て朱美は何も言えず黙り込んでしまう。
すると沙橙は再び口を開いた。
「……ボクはね、ずっと君に憧れていたんだ。強くて優しくてかっこよくて、それでいて可愛くて。だから君を好きになれた時、とても嬉しかったんだ」
沙橙は嬉しそうに微笑み朱美の手を握りながら続けた。
「ボクは君を愛しているよ。だからね……ずっと一緒に居たいんだ」
「……っ!」
その言葉に朱美は顔を真っ赤に染める。
そして沙橙は朱美の手を取り、自分の頬に添えさせた。
その頬はとても熱かったが、それ以上に朱美の心臓の方が高鳴っていた。
まるで壊れてしまったかのようにバクバクと脈打っている。
そんな朱美を見て沙橙はクスリと笑った。
その笑みにすらドキリとするのだからもうどうしようもないだろう。
「……ねぇ朱美ちゃん。ボクのこと嫌いかい?」
「そ、そんなこと……!」
慌てて首を横に振ると、沙橙は安心したように笑った。
そんな笑顔を見て胸が高鳴るのと同時に顔が熱くなるのを感じる。
もうわけがわからなかった。
どうしてこんなにも沙橙に惹かれてしまうのだろう。
朱美は自分の気持ちがよくわからず混乱していた。
そんな朱美を気にせず、沙橙は続ける。
「良かった……じゃあさ、ボクと付き合ってよ」
「……え?」
突然の発言に驚く朱美だったが、すぐに我に帰ると再び首を横に振った。
「無理だよ! 私なんかじゃ……」
「……そんなことないよ」
そう言って沙橙は再び強く抱きしめた。そして耳元で囁くように言う。
その声は少し震えていて緊張しているようだった。
「……ボクは本当に君に救われた。君がいなければ今のボクは居ないんだ」
「沙橙……」
「……だから、ボクを選んでくれないか? 君が誰かのものになるなんて耐えられないんだ」
沙橙の切羽詰まったような声音に朱美は何も言えなくなる。
そんな朱美を見て沙橙は悲しげに微笑むと、ゆっくりと身体を離した。
「ごめん……いきなりこんなこと言われても困るよね……」
そう言って立ち上がる沙橙を見て、思わず引き止めようと手を伸ばすが届かなかった。
そんな様子を見た朱美は胸が締め付けられるような感覚に襲われると同時に泣きそうになったが、必死に堪えた。
「あれ……?」
そんな時、とある記憶が蘇り朱美は首を傾げた。
『そこでなにしてるの!?』
『……もうボクを楽にしてくれよ』
『あなたのこと何も知らないけど、見ちゃったら見て見ぬふりなんてできないよ!』
『……うるさいな』
『私の手を取って? 私はあなたの笑顔が見たい!』
『……どうして……』
『だって、そんな顔したまま死んでしまうなんてやだよ!』
『っ……!』
断片でしかない。
朱美は全部を思い出したわけではない。
けれど、その時の相手が目の前の沙橙だということだけはわかった。
「……もしかしてさ」
「うん?」
「あの時の人って……」
朱美の言葉に沙橙は目を見開いた後、ゆっくりと口を開いた。
「……そうだよ。あの時助けてくれたのは君だ」
その言葉に朱美はハッとした表情を浮かべると俯いたまま黙り込んでしまった。
そんな朱美を見て沙橙は悲しそうに微笑むと背を向けた。
「……ごめんね……迷惑だよねこんなボクなんて」
そう言って立ち去ろうとする沙橙の腕を思わず掴んだ。
すると沙橙は驚いた顔をして振り返る。
「朱美ちゃん……?」
「……私、ちょっと後悔してた。余計なお世話なんじゃないかって、今ならわかる。でもあの時はわからなかったの。沙橙を助けたいって思ったから行動したんだけど、それが本当に正しかったのかわからなくて」
「……」
朱美の言葉を聞いていた沙橙は黙って聞いていたが、やがて優しく微笑むと言った。
「……君は優しい子だね」
「そんなことは……!」
「……あるよ。だってボクのために泣いてくれたじゃないか」
そう言われて初めて自分が泣いていることに気づいた朱美は、慌てて涙を拭うと恥ずかしそうに俯いた。
そんな朱美を見て沙橙はククッと笑うと、再び抱きしめる。
今度は優しく包み込むように、それでいて離さないと言わんばかりに強く抱きしめた。
「……もう離さない。どこにも行かないで……」
沙橙の言葉は祈りのようで、朱美自身も沙橙と離れてしまうんじゃないかと思い、思わずぎゅっと抱きついた。
「大丈夫……私はここにいるから」
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
魔法少女になれたなら【完結済み】
M・A・J・O
ファンタジー
【第5回カクヨムWeb小説コンテスト、中間選考突破!】
【第2回ファミ通文庫大賞、中間選考突破!】
【第9回ネット小説大賞、一次選考突破!】
とある普通の女子小学生――“椎名結衣”はある日一冊の本と出会う。
そこから少女の生活は一変する。
なんとその本は魔法のステッキで?
魔法のステッキにより、強引に魔法少女にされてしまった結衣。
異能力の戦いに戸惑いながらも、何とか着実に勝利を重ねて行く。
これは人間の願いの物語。
愉快痛快なステッキに振り回される憐れな少女の“願い”やいかに――
謎に包まれた魔法少女劇が今――始まる。
・表紙絵はTwitterのフォロワー様より。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


兄貴がイケメンすぎる件
みららぐ
恋愛
義理の兄貴とワケあって二人暮らしをしている主人公の世奈。
しかしその兄貴がイケメンすぎるせいで、何人彼氏が出来ても兄貴に会わせた直後にその都度彼氏にフラれてしまうという事態を繰り返していた。
しかしそんな時、クラス替えの際に世奈は一人の男子生徒、翔太に一目惚れをされてしまう。
「僕と付き合って!」
そしてこれを皮切りに、ずっと冷たかった幼なじみの健からも告白を受ける。
「俺とアイツ、どっちが好きなの?」
兄貴に会わせばまた離れるかもしれない、だけど人より堂々とした性格を持つ翔太か。
それとも、兄貴のことを唯一知っているけど、なかなか素直になれない健か。
世奈が恋人として選ぶのは……どっち?
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。

ヤクザの娘の本心を俺だけは知っている
青井風太
恋愛
赤城遥の通う高校には有名人がいた。
容姿端麗で成績優秀、ドラマでしか聞かなそうな才を持ち合わせた青崎楓は学校中から注目を集めていた。
しかし彼女を有名人たらしめる理由は他にある。
彼女は関東最大規模のヤクザ組織【青龍会】会長の愛娘であった。
『一人で暴走族を壊滅させた』『睨みつけるだけで不良が逃げ出した』などの噂が学校中に広まっていた。
ある日の放課後、忘れ物を取りに教室に戻ると遥は目撃してしまう。
ぬいぐるみに話しかけているヤクザの娘の姿を・・・
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる