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友人の秘密
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「お、結月! やっほー!」
「……雅美? 今日も元気いいね」
「そりゃ、もちろん! なんたって結月と一緒に登校出来るんだし!」
雅美は、友人である結月と登校していた。
雅美は明るく元気で、誰とでも仲良くなれるような性格をしている。
対照的に、結月は大人しめで、教室の隅でいつも本を読んでいるような性格をしている。
そんな対照的な二人だが、仲が良く、二人で一緒にどこかに出かけることも多い。
「あ、そうだ! 今度またどっか行こーよ!」
「え……でも、最近物騒だし……」
「大丈夫大丈夫! 物騒って言ってもちっちゃい魔物がいるだけだし!」
――そう。宇宙からの襲撃だかなんだかで今、地球には魔物がいるのだ。
だが、雅美はそんなことを気にしていない。
魔物と言っても、動物とそんなに大差はなく、放っておいても一応安全だからだ。
しかし、ある日突然襲いかかってくることもあり、危険なことに変わりはない。
そんな雅美の危なっかしさに、結月は心配そうに言う。
「ちっちゃくても十分危険だよ……やめた方が――」
「えー? でもそんなの今に始まったことじゃないし……大丈夫でしょ!」
「う、うーん……まあ、そうかもしれないけど……」
「じゃあ決まりね! 約束だよ!」
そう言って雅美は、無理やり結月に約束を取り付けた。
☆ ☆ ☆
学校に着いた雅美は、早速魔物に出くわしていた。
「……ちょっとこれ……でっかくない!?」
雅美にそう叫ばせるに足りた魔物の全長は――三メートルぐらいある。かなりでかい。
まさに怪物と呼ぶべき体躯。闇のように真っ黒な体毛に、琥珀に輝く鋭い眼で見下ろされている。
雅美は結月と別れ、別々の校舎へ入ろうとしていた時だった。
「ど、どうしよう……」
これは絶対、自分を見逃してくれるような魔物じゃない。
そう思った雅美は、無闇に刺激しないようにそっと後ずさった。
だが、
「グルル……」
餌に飢えた肉食獣の如く、雅美を見定めている。
食べられるか食べられないか――その怪物は、雅美のことを餌に相応しいかどうかでしか見ていなかった。
そして、
「グオオオ!!」
食べられると判断したのか、ジリジリと後ずさっていた雅美を見て、咆哮した。
その咆哮は、校舎全体を震わせながら雅美に届く。
「いや……やめて……来ないでっ!」
雅美は泣き叫び、その場に崩れ落ちる。
怪物は、そんな雅美見て――一気に駆け抜けた。
迫り来る“死”にどうしようもなく、雅美はぎゅっと目を瞑る。
そんな時――一筋の光が、見えた気がした。
☆ ☆ ☆
「大丈夫!?」
「な、なんとか大丈夫で……え?」
雅美は誰かから声をかけられた。
その声に反応しようとして――固まる。
セイレーンの歌声のように綺麗な声、そして――
夜を編んだような青黒いワンピースに、腰まで伸びた長い黒髪が揺らめく。
その、人物は――
「……ゆ、結月……?」
雅美がそう呟くと、結月に似た人が気まずそうに顔を背ける。
だが、それも一瞬のこと。
結月のような誰かは、キッと魔物を睨む。
そして、綺麗な光が結月を囲むと――
「はぁぁぁぁぁ!!」
その光を、魔物にぶつけた。
すると、魔物はたちまち悲鳴を上げながら消失する。
その光景を唖然と見ていた雅美は、とても綺麗だと思った。
「ねぇ……大丈夫? ――雅美」
「え?? なんで私の名前……」
結月にそっくりな人物は、雅美の名を呼ぶ。
そして、雅美の疑問に答えるように――姿を変えた。
……とはいえ、変わったのは服装だけだが。
「これで……誰だか判るでしょ?」
――その服装は、雅美と同じ制服だった。
もう、これで……誰だか判る。
「……今から、私の秘密を話すから……よく聞いて」
結月はそう言い放つと、思いもよらないことを言い始めた。
「私は、世界を救うために生まれた――魔法少女なの」
雅美には何がなんだかわからず、ただ結月の言葉に耳を傾けている。
「私の家は、代々魔法少女の家系なの。それでね、魔物と対抗する正義の味方……って感じなの」
結月は淡々を秘密を暴いてゆく。
雅美はそれを、戸惑いながらも静かに聞く。
「魔物と魔法少女の関係性については私もわからない。だけど、魔法少女の家系だから……自分がみんなを救わなきゃって思ってる」
口では淡々と事実を吐き出すも、目は少し潤んでいる。
結月はこうなることを……知っていたように続ける。
「だからね、私……雅美とは一緒にいられない。私のそばにいたら、雅美の方が危ないから……」
「……え? どういうこと?」
「わからない? 魔物と戦うってことは、魔物からも狙われるっていうことなのよ?」
「あ……」
――つまりはそういうことなのである。
魔物と戦う魔法少女である結月。
そんな結月は、正義のヒーローのようなもの。
だけどその分、魔物から最も敵視されるもの。
だから結月は……雅美とは一緒にいられないという……
「だから雅美……私とは離れた方がい――」
「嫌だ! 私は……結月と一緒にいたい!」
結月の震える声を遮り、雅美が叫ぶ。
結月も雅美も……目には大量の雫が出来上がっている。
「そんなの嫌だよ! 今までだって一緒にいたじゃん! なんで……なんで今更そんなっ……!」
「そりゃあ……だって……私といるのは危険で……」
「そんなことない! 結月は私を助けてくれた! だから一緒にいたい!」
泣き叫ぶ雅美を宥めようにも、どうしようも出来ない結月。
だけど雅美は、なおも叫ぶ。
「私、後先考えずに突っ走っちゃうんだよ!? だからこれからも結月が止めてよ! だって私たち――」
「――友達でしょ!?」
ハッと結月が目を見開く。
どうして忘れていたんだろう……こんなにも、大切なことを……
「雅美……」
結月は雅美を抱きしめた。
そして、結月は大切なものをこの手で守っていこうと……心に決めた。
「……雅美? 今日も元気いいね」
「そりゃ、もちろん! なんたって結月と一緒に登校出来るんだし!」
雅美は、友人である結月と登校していた。
雅美は明るく元気で、誰とでも仲良くなれるような性格をしている。
対照的に、結月は大人しめで、教室の隅でいつも本を読んでいるような性格をしている。
そんな対照的な二人だが、仲が良く、二人で一緒にどこかに出かけることも多い。
「あ、そうだ! 今度またどっか行こーよ!」
「え……でも、最近物騒だし……」
「大丈夫大丈夫! 物騒って言ってもちっちゃい魔物がいるだけだし!」
――そう。宇宙からの襲撃だかなんだかで今、地球には魔物がいるのだ。
だが、雅美はそんなことを気にしていない。
魔物と言っても、動物とそんなに大差はなく、放っておいても一応安全だからだ。
しかし、ある日突然襲いかかってくることもあり、危険なことに変わりはない。
そんな雅美の危なっかしさに、結月は心配そうに言う。
「ちっちゃくても十分危険だよ……やめた方が――」
「えー? でもそんなの今に始まったことじゃないし……大丈夫でしょ!」
「う、うーん……まあ、そうかもしれないけど……」
「じゃあ決まりね! 約束だよ!」
そう言って雅美は、無理やり結月に約束を取り付けた。
☆ ☆ ☆
学校に着いた雅美は、早速魔物に出くわしていた。
「……ちょっとこれ……でっかくない!?」
雅美にそう叫ばせるに足りた魔物の全長は――三メートルぐらいある。かなりでかい。
まさに怪物と呼ぶべき体躯。闇のように真っ黒な体毛に、琥珀に輝く鋭い眼で見下ろされている。
雅美は結月と別れ、別々の校舎へ入ろうとしていた時だった。
「ど、どうしよう……」
これは絶対、自分を見逃してくれるような魔物じゃない。
そう思った雅美は、無闇に刺激しないようにそっと後ずさった。
だが、
「グルル……」
餌に飢えた肉食獣の如く、雅美を見定めている。
食べられるか食べられないか――その怪物は、雅美のことを餌に相応しいかどうかでしか見ていなかった。
そして、
「グオオオ!!」
食べられると判断したのか、ジリジリと後ずさっていた雅美を見て、咆哮した。
その咆哮は、校舎全体を震わせながら雅美に届く。
「いや……やめて……来ないでっ!」
雅美は泣き叫び、その場に崩れ落ちる。
怪物は、そんな雅美見て――一気に駆け抜けた。
迫り来る“死”にどうしようもなく、雅美はぎゅっと目を瞑る。
そんな時――一筋の光が、見えた気がした。
☆ ☆ ☆
「大丈夫!?」
「な、なんとか大丈夫で……え?」
雅美は誰かから声をかけられた。
その声に反応しようとして――固まる。
セイレーンの歌声のように綺麗な声、そして――
夜を編んだような青黒いワンピースに、腰まで伸びた長い黒髪が揺らめく。
その、人物は――
「……ゆ、結月……?」
雅美がそう呟くと、結月に似た人が気まずそうに顔を背ける。
だが、それも一瞬のこと。
結月のような誰かは、キッと魔物を睨む。
そして、綺麗な光が結月を囲むと――
「はぁぁぁぁぁ!!」
その光を、魔物にぶつけた。
すると、魔物はたちまち悲鳴を上げながら消失する。
その光景を唖然と見ていた雅美は、とても綺麗だと思った。
「ねぇ……大丈夫? ――雅美」
「え?? なんで私の名前……」
結月にそっくりな人物は、雅美の名を呼ぶ。
そして、雅美の疑問に答えるように――姿を変えた。
……とはいえ、変わったのは服装だけだが。
「これで……誰だか判るでしょ?」
――その服装は、雅美と同じ制服だった。
もう、これで……誰だか判る。
「……今から、私の秘密を話すから……よく聞いて」
結月はそう言い放つと、思いもよらないことを言い始めた。
「私は、世界を救うために生まれた――魔法少女なの」
雅美には何がなんだかわからず、ただ結月の言葉に耳を傾けている。
「私の家は、代々魔法少女の家系なの。それでね、魔物と対抗する正義の味方……って感じなの」
結月は淡々を秘密を暴いてゆく。
雅美はそれを、戸惑いながらも静かに聞く。
「魔物と魔法少女の関係性については私もわからない。だけど、魔法少女の家系だから……自分がみんなを救わなきゃって思ってる」
口では淡々と事実を吐き出すも、目は少し潤んでいる。
結月はこうなることを……知っていたように続ける。
「だからね、私……雅美とは一緒にいられない。私のそばにいたら、雅美の方が危ないから……」
「……え? どういうこと?」
「わからない? 魔物と戦うってことは、魔物からも狙われるっていうことなのよ?」
「あ……」
――つまりはそういうことなのである。
魔物と戦う魔法少女である結月。
そんな結月は、正義のヒーローのようなもの。
だけどその分、魔物から最も敵視されるもの。
だから結月は……雅美とは一緒にいられないという……
「だから雅美……私とは離れた方がい――」
「嫌だ! 私は……結月と一緒にいたい!」
結月の震える声を遮り、雅美が叫ぶ。
結月も雅美も……目には大量の雫が出来上がっている。
「そんなの嫌だよ! 今までだって一緒にいたじゃん! なんで……なんで今更そんなっ……!」
「そりゃあ……だって……私といるのは危険で……」
「そんなことない! 結月は私を助けてくれた! だから一緒にいたい!」
泣き叫ぶ雅美を宥めようにも、どうしようも出来ない結月。
だけど雅美は、なおも叫ぶ。
「私、後先考えずに突っ走っちゃうんだよ!? だからこれからも結月が止めてよ! だって私たち――」
「――友達でしょ!?」
ハッと結月が目を見開く。
どうして忘れていたんだろう……こんなにも、大切なことを……
「雅美……」
結月は雅美を抱きしめた。
そして、結月は大切なものをこの手で守っていこうと……心に決めた。
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