魔法少女になれたなら【完結済み】

最終章 全ての元凶

それぞれの先へ

　ガーネットが消滅してから、初めての朝が来た。
　いつもより物足りない朝に、結衣は喪失感に包まれる。
　だが、隣には……笑いながらこちらを見る――朝に弱い魔央が。

「おはよ、結衣」
「お、おはよ……早いんだね……」

　いつもは結衣より遅く起きるのに……
　結衣が驚いていると、魔央がどこか悲しそうに笑う。

「まあな。……あいつが俺の消滅を防いでくれた時、丈夫な身体に作り替えてくれたんだ」

　“あいつ”……ガーネットのことだろう。
　あの時、魔央の代わりにガーネットが消えてしまった。

　魔央が言うには、ガーネットは元々世界を救うために生み出された“道具”なのだとか。
　それが果たされた時、ガーネットは“用済み”になり、消える運命にあったのだとか。
　魔央の代わりにならなくても、ガーネットは――

「そうなんだね……」
「おう。あの時、あいつ……自分の記憶を俺に託してったんだよ」

　それは、ガーネットが遺してくれたもの。

『じゃ、わしは色々“後始末”をしなくてはならんからな』

　と、ルリが言った時。
　ルリはどこか悲しげな表情に見えた。
　ルリも、ガーネットのことが大事だったのだ。
　素直じゃなかっただけなのだ。

「……なぁ、その背中の傷……大丈夫か？」

　魔央の不安そうな声に、結衣の意識が現実に戻る。
　結衣の背中には、あの姿になった時の翼が生えていた場所に黒々とした火傷のような跡が。

「うん。痛くないし、全然平気だよ」

　「それに――」と、結衣は続ける。

「ガーネットが遺してくれたものだもん」
「……ま、そうだよな」

　結衣は着替え終わり、傷が隠れる。
　魔央も気軽に終わり、二人は部屋を出た。

　朝ごはんを食べ終わり、学校に向かう支度をする。
　教科書を詰め込み、ランドセルを背負う。

「……行ってらっしゃい。結衣、魔央」

　お母さんが二人に向かって、微笑みながら言う。
　それを受けて、結衣と魔央は同時に――明るく言う。

「「行ってきます！」」

　――それぞれの先へ、進むために。