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最終章 全ての元凶

マスターとの出会い

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 それからことある事に、ルリとガーネットは行動を共にしていた。
 休み時間も、お昼の時間も、登下校する時も。
 いつも二人は一緒にいた。

 そして、ガーネットはルリのことをたくさん知る。
 由緒正しい魔女の家系で、“魔女狩り”に遭った時にはルリの家系だけ難を逃れたという。
 それほどまでに大きな力を持ち、今まで継承し続けてきたというのだ。

「けど……だからこそ。わしには使命があるのじゃ」
「……使命、ですかぁ?」
「ああ。この世界が滅びに向かっているとの暗示が出たのじゃ。それを食い止めるべく、我ら一族が一丸となって頑張っているんじゃよ」

 ――世界が、滅ぶ?
 本当にそんなことが起こり得るのだろうか。
 だが、それがもし本当だとしたら……

「……あ、あの!」

 ガーネットは、無意識にルリに呼びかけていた。
 自分でも、自分のしようとしていることがわからない。
 ただ、その人を――世界を、助けようと思ったのかもしれない。
 だからガーネットは、ルリに提案する。

「私を、使ってください!」

 ☆ ☆ ☆

 ――だがそれは、あまりにも過酷だった。
 願いを叶える力を持つガーネットだが、自分の願いを叶えることは出来ないから。
 ガーネットに願う人がいて初めて、ガーネットに存在価値が生まれる。

「ルリ……様、苦しいです……!」
「我慢じゃ、ガーネット」

 ルリは労いの言葉も、励ましの言葉もかけてくれない。

 ただ、目の前のことに必死だった。
 ガーネットの術式を書き換え、人型ではなく本の形にしようとしている。

 それがどんな効果をもたらすのがわからなかったが、それが必要なのだろうと、ルリを信じていた。
 なのに――

「これで……世界の全てはわしのものになる……」

 ルリがそう呟いたのが、はっきりとガーネットの耳に届いた。
 その日からガーネットは、ルリの元を離れようと決心する。

 自分では魔法を扱えないガーネットだったが、自分の身を守る魔法だけは魔術師の人にもらっていた。
 そうしてルリの元を飛び出し、本の姿のまま必死で逃げる。
 あてもなく、ただ遠くへ行きたいと願った。

 そして日本へたどり着いた時、ガーネットは結衣を見つける。
 ただ普通の、何の変哲もない少女に……なぜか心惹かれた。

(この人ならきっと……私を正しく使ってくれる!)

 そう思ったガーネットは、結衣に使われることにした。
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