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最終章 全ての元凶

人のために何かを成すこと

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 ガーネットは誰かに使われてこそ、その真価を発揮する。
 自分では何もできない故に、誰かと一緒にいて初めて価値ができるもの。
 まさに使い魔。……いや、それはもう――“道具”と呼ぶべきか。

(……そう。私は一人じゃなにもできない。今回も、またルリ様にとって都合のいい道具と成り果ててしまった……)

 何回も繰り返して、『今度こそ終わらせる』と意気込んで……ことごとく失敗してきた。
 何度挑んでも、運命には抗えない。

「……な、なんじゃ……?」

 ルリの戸惑う声で目を覚ます。
 するとそこには、翡翠色の瞳を強く光らせた結衣がいた。
 こんなに気迫溢れる結衣を、ガーネットは見たことがない。

「結衣……」

 あの魔央でさえ、狼狽えている。
 その中で、ガーネットは冷静に結衣を分析した。
 あれは、真の段階へ進む一歩手前だ。

(……もしかしたら、今回こそ……終わらせられるかもしれない……)

 ガーネットはそんな期待を抱かずにはいられない。
 たとえ儚い夢だとしても、叶わなくても、いつもと違うということが……ガーネットにとっては嬉しかったのだ。

「……もう、いいよ。私の願いは自分で叶えるから!」

 そう叫び、結衣はルリを睨む。
 それにさえ、なにか圧倒的な威圧感を感じた。
 ルリは息をのみ、結衣を注視する。

「だけどね、もうだいたいのことは叶ってる。だから今は――ガーネットを助ける! それだけだよ!」

 ガーネットがルリの元にいることに不満を持っているのなら、自分がその状況を変える――そう言ってくれたのだ。
 結衣の根本は、自身の願いが大半を占めている。
 だが、それでも、人のために何かを成そうとする姿は――まさに魔法少女に相応しい。
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