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最終章 全ての元凶

取らなければならない責任

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「と、とてつもないものって……?」
「さあな。けど、予想はついてる。ガーネットを連れ去ってったやつじゃねぇか?」
「……た、たしかに……もうここまで来たらその人がやっているとしか……でも……」

 ――でも、一体なんの為に?
 みんなの願いを弱めることなんかして、一体何がしたいのだろう。
 自分と敵対する者の戦力を削ぐため?
 それほどの脅威になると踏んだから?

 だけど、どれも違う気がする。
 あのガーネットがいとも容易く連れ去られるなんて、よほどの凄腕の持ち主だろう。
 そんな人が、なぜみんなの能力の弱体化なんてするのかわからない。

 たしかに、願いを魔法に変える力を持つ魔法少女には、強力な願いが必要になる。
 自らの辛い経験を糧にすればするほど、魔法少女は本領を発揮する。

(……ん? ちょっと待って? だとしたら私……とんでもないことをしちゃったんじゃ……)

 万能の魔法のステッキを持つ結衣に負けた時点で、みんなの能力が弱体化しているとしたら……?
 一度負けてしまえば、その時点で諦めの気持ちが芽生えてしまうことになる。
 結衣はそれに気づき、自分のしてきたことを悔やんだ。

(私の願いのせいで……みんなに迷惑をかけたんだ……)

 結衣は己を恨んだ。
 なぜもっとみんなのことも考えてあげられなかったのか。
 なぜ自分はこうも――昔から自分のことしか考えられないのか……

「――い、おーい、結衣?」

 ハッと、魔央の言葉で目を覚ます。
 魔央は不安そうな顔で、結衣のことを見ていた。

「大丈夫か?」

 ――そうだ。自分には魔央がいる。
 みんなが戦えなくても、魔央と一緒に戦えばいい。
 みんなを苦しめてしまった責任を取らなければならない。

「……みんな、大丈夫だよ。みんなを苦しめたのは私だから……私がっ! なんとかしてみせる!」

 結衣はおもむろに立ち上がり、声を張り上げた。
 みんなが目を見開く中、魔央だけが満足そうに口角を上げていた。
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