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第三章 まさかの裏切り
何も変わらないもの
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――もう嫌だ。
どれだけこんなことを繰り返しただろう。
どれだけ悪夢を見ただろう。
こんなのはもう……やめにした方がいい。
(……そう。だから……私は消えた方がいいんです)
だけど、そんなことはできなかった。
そんな勇気は――ガーネットにはなかったのだ。
……結衣に出会ったのは何回目だろう?
……真菜やせーちゃん、緋依や夏音、美波や明葉やカスミに会うのは何回目?
……魔央に出会って、自分が暴走するのは何回目?
――……もう、数えるのも馬鹿らしくなってきた。
どうせ同じ結末、同じ結果になるのなら……もういっそのこと、全部――
――捨ててしまおう。
「――そんなことはさせられないのぉ」
「……っ! こ、この声は……っ!」
何かを覚悟したガーネットだったが、不意に呼び止められる。
というか、強制的に身体を制御された。
それだけ強力な魔法を扱える人は、ガーネットが知るぶんには一人しかいない。
「……なんの用ですかぁ……?」
「わしの大事な道具が勝手に壊れるのはちょ~~っと見てられないんじゃよ」
「…………なるほど。やはりあなた様は変わりませんね」
「じゃろ? んふふー、もっと褒めてくれてもいいんじゃぞ?」
「……別に褒めてませんよぉ」
この人と話していると、それだけで疲れる。
話が通じないし、嘘っぽい笑顔がどうにも苦手でならない。
それに、この人がガーネットを苦しめる元凶でもあるから。
「……あなた様は自分の出番が来るまで控えている礼儀正しい方だと思っていましたが?」
その人を褒めるように言った言葉は、暗に『お前の出番ではないから引っ込んでろ』と言っているに等しい。
だが、それを知ってか知らずか、その人は何も気にしてなさそうに言う。
「だってお主が消えたらわしが困るじゃろ。そんなこともわからんのか?」
――やはりこの人は何も変わっていない。
ガーネットはもう諦めモードで、ため息をついた。
どれだけこんなことを繰り返しただろう。
どれだけ悪夢を見ただろう。
こんなのはもう……やめにした方がいい。
(……そう。だから……私は消えた方がいいんです)
だけど、そんなことはできなかった。
そんな勇気は――ガーネットにはなかったのだ。
……結衣に出会ったのは何回目だろう?
……真菜やせーちゃん、緋依や夏音、美波や明葉やカスミに会うのは何回目?
……魔央に出会って、自分が暴走するのは何回目?
――……もう、数えるのも馬鹿らしくなってきた。
どうせ同じ結末、同じ結果になるのなら……もういっそのこと、全部――
――捨ててしまおう。
「――そんなことはさせられないのぉ」
「……っ! こ、この声は……っ!」
何かを覚悟したガーネットだったが、不意に呼び止められる。
というか、強制的に身体を制御された。
それだけ強力な魔法を扱える人は、ガーネットが知るぶんには一人しかいない。
「……なんの用ですかぁ……?」
「わしの大事な道具が勝手に壊れるのはちょ~~っと見てられないんじゃよ」
「…………なるほど。やはりあなた様は変わりませんね」
「じゃろ? んふふー、もっと褒めてくれてもいいんじゃぞ?」
「……別に褒めてませんよぉ」
この人と話していると、それだけで疲れる。
話が通じないし、嘘っぽい笑顔がどうにも苦手でならない。
それに、この人がガーネットを苦しめる元凶でもあるから。
「……あなた様は自分の出番が来るまで控えている礼儀正しい方だと思っていましたが?」
その人を褒めるように言った言葉は、暗に『お前の出番ではないから引っ込んでろ』と言っているに等しい。
だが、それを知ってか知らずか、その人は何も気にしてなさそうに言う。
「だってお主が消えたらわしが困るじゃろ。そんなこともわからんのか?」
――やはりこの人は何も変わっていない。
ガーネットはもう諦めモードで、ため息をついた。
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