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 第三章 まさかの裏切り

能力の秘密

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「……え、どういう……こと?」
「だから言った通りよ。――ガーネットは遠くにいるわ」
「ちょっと……よくわかんないんだけど……」

 せーちゃんの部屋に連れ込まれてから、どれぐらいの時間が経っただろう。
 時間経過なんてものがどうでもいいほど、結衣はせーちゃんたちの話に夢中になっていた。
 その話というのが、ガーネットの居場所だから。

「僕には見える。魔力源となるガーネット……彼女が放つ魔力がね」
「私もそうです。感じるんですよ。……あの子の魔力がどんどん遠ざかっています」

 美波と緋依は、それぞれ苦しそうに語っている。
 その言葉に嘘はないのかもしれない。
 だが、結衣はまだ思考が追いついていなかった。

「……あ、あの……もう少し分かりやすく説明してくれないかな……?」
「……? ――あー、そうね。そう言えば結衣にはまだ話していなかったかしら?」

 意味がわからない言葉を連発してくる友人たちに、結衣の脳は限界を迎えていた。
 だけど、その次の言葉に、結衣の脳は凍りつくことになる。

「――あたしたちはね、それぞれの能力によって行動を制限されて……戦うことしか考えられなくなっていたの」

 ――……せーちゃんは、何を言っているのだろう。
 結衣はそんなことを感じたこともないし、友だちがそれに悩まされていたことも初めて知った。
 ……結衣だけ、何も知らなかった。

「あたしが結衣に出会った時と、結衣に助けられたあと――何か違いを感じなかった?」
「……あ、そういえば……」

 たしかに、せーちゃんと初めて出会った時。
 好戦的で血の気の多い少女のように感じられた。
 だが今は――気品溢れる、友だち想いの優しい少女。
 ……それが、行動を制限されていた。ということなのだろうか。

「あたしたちはガーネットを手に入れることだけしか考えられなくなった。辛く苦しい記憶を呼び覚まして、自分の願いをより強くするかのように」
「……そう。だから僕たちは結衣ちゃんに救われたあと、能力からも解放された。……まあ、その分力が弱くなった気もするけどね」
「それに、私の家は本当にどんどんいい方に変わっています。まるで、『ガーネットを手に入れられないお前は用無しだ』と力が言っているみたいに……」

 ……そう、だったのか。
 もしかしたら、ここにいない仲間もそういうことに悩んでいたのかもしれない。
 だとしたら……自分が救わなければならない。
 結衣はそう決意し、ガーネット探しを本格的に始めようと思った。
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