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幕間 少女たちの過去(後編)

カスミの過去

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 両親を殺人鬼に殺され、カスミは親戚の家に引き取られた。
 親戚の人は優しかったし、カスミのことを大事にしていることも本人に伝わっていた。

 だが、カスミはもう一度両親に会いたいと思っている。
 自分を産んで、育ててくれた両親に。

(だけど……ムリだろうなァ……)

 実は、両親が殺された時。
 カスミに声をかけた本に、願いごとを言っていたのだ。

 ――もう一度両親に会いたい。両親を生き返らせてほしい。

 だが、本はその願いを聞き入れてくれなかった。

『人を生き返らせることは……残念ながら無理じゃな』

 とかほざいて、二度とその声が聞こえることはなかった。
 あの時は逃げたんだ……としか思わなかったけど……

(今は、癪だけどワカル……人を生き返らせるコトが難しいって……)

 まあ、わかったところで会いたい気持ちに変わりはないが。
 それか、両親を殺した犯罪者を……この手で――

(……イヤ。それはやめておこう……)

 今も昔も、自分は何も変わらない。
 ヘタレで、弱虫な自分。
 それを変えることは……ついぞできなかった。

「ハァ……どうしたもんか……」

 両親が死んでからずっと、自己嫌悪に陥っている。

 ――なんで自分はこんなにも欠点が多いのか。
 ――なんで自分はこうなってしまったのか。

 自分の嫌なところばかりが見えてきて、いい加減うんざりする。
 ……こうも自分を嫌になると、鬱になりそうだ。
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