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第二章 似すぎている敵
少女の秘密
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妹が選んだのは赤ちゃんだった。
だが、赤ちゃんは双子。
二人を産むのは姉の体力的に厳しかったため、最初に顔を出した方だけを救うことに決めたのだ。
ただ、それが……今できる最善の方法だと思っていた。
姉の“願い”を叶えるため、子どもを助けるという選択肢しかない。
それなのに、子ども二人を両方生かすことが出来ないなんて。
(そんなの……そんなのってないでしょ……っ!)
妹は泣きたくなる衝動を必死に抑え、毅然とした態度で赤ちゃんを迎えた。
「おぎゃあ! おぎゃあ!」
――それは、元気な女の子だった。
初めて実物を目にした妹は、自然と……涙がこぼれ落ちる。
その涙は、姉を失った悲しみでも、赤ちゃんを両方救えなかった申し訳なさでもない。
ただ、感動していた。
「……可愛い……」
姉に似ているかはまだ判断がつかないが、とても可愛いことに間違いはない。
――この子を、自分の手で育てよう。
そう決意した妹は、赤ちゃんを引き取ることにした。
もう一人の赤ちゃんのことが頭から抜け落ちるほど、産まれてきた赤ちゃんの虜になってしまったのだ。
せめて救った方だけでも、幸せにしなければないない。
そう心に決め、妹は姉の夫と二人三脚で頑張ることにした。
☆ ☆ ☆
結衣たちの本当のお母さんが霊安室に運ばれた直後のことだった。
お母さんの身体から、霊体になった魔王少女が姿を現したのだ。
少女は一通り辺りを見回すと、ふと自分のそばに一冊の本が置いてあることに気がつく。
その本の題名は――『魔法使いの願い事』。
当時の少女はその言葉を読むことが出来なかったが。
その本に手を伸ばし、触れた瞬間。
姉と妹のやり取り。姉の命の危機。先に産まれた方だけが助かったこと。
様々な情報が少女の脳に流れ込んできた。
「……な、なんだよ……これ……」
それに伴い、知能が高くなってもう言葉を理解し始めたのだ。
そして、自分の感情や気持ち、お母さんの妹と自分の姉への憎悪をも理解することができる。
「……なんで……なんで俺がこんなことに……あいつらが憎い……自分を助けなかったあいつも、自分を差し置いて産まれたあいつも……っ!」
――そして少女は、自分が霊体だということを利用して二人の動向を監視することに決めた。
だが、赤ちゃんは双子。
二人を産むのは姉の体力的に厳しかったため、最初に顔を出した方だけを救うことに決めたのだ。
ただ、それが……今できる最善の方法だと思っていた。
姉の“願い”を叶えるため、子どもを助けるという選択肢しかない。
それなのに、子ども二人を両方生かすことが出来ないなんて。
(そんなの……そんなのってないでしょ……っ!)
妹は泣きたくなる衝動を必死に抑え、毅然とした態度で赤ちゃんを迎えた。
「おぎゃあ! おぎゃあ!」
――それは、元気な女の子だった。
初めて実物を目にした妹は、自然と……涙がこぼれ落ちる。
その涙は、姉を失った悲しみでも、赤ちゃんを両方救えなかった申し訳なさでもない。
ただ、感動していた。
「……可愛い……」
姉に似ているかはまだ判断がつかないが、とても可愛いことに間違いはない。
――この子を、自分の手で育てよう。
そう決意した妹は、赤ちゃんを引き取ることにした。
もう一人の赤ちゃんのことが頭から抜け落ちるほど、産まれてきた赤ちゃんの虜になってしまったのだ。
せめて救った方だけでも、幸せにしなければないない。
そう心に決め、妹は姉の夫と二人三脚で頑張ることにした。
☆ ☆ ☆
結衣たちの本当のお母さんが霊安室に運ばれた直後のことだった。
お母さんの身体から、霊体になった魔王少女が姿を現したのだ。
少女は一通り辺りを見回すと、ふと自分のそばに一冊の本が置いてあることに気がつく。
その本の題名は――『魔法使いの願い事』。
当時の少女はその言葉を読むことが出来なかったが。
その本に手を伸ばし、触れた瞬間。
姉と妹のやり取り。姉の命の危機。先に産まれた方だけが助かったこと。
様々な情報が少女の脳に流れ込んできた。
「……な、なんだよ……これ……」
それに伴い、知能が高くなってもう言葉を理解し始めたのだ。
そして、自分の感情や気持ち、お母さんの妹と自分の姉への憎悪をも理解することができる。
「……なんで……なんで俺がこんなことに……あいつらが憎い……自分を助けなかったあいつも、自分を差し置いて産まれたあいつも……っ!」
――そして少女は、自分が霊体だということを利用して二人の動向を監視することに決めた。
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