174 / 262
第二章 似すぎている敵
天使VS魔王
しおりを挟む
この待ち時間が、たまらなく嫌だ。
はやく決着をつけたいと思えば思うほど、時間の進みが遅いように感じるから。
はやく、絶望に染まった顔が見たい。
はやく、殺してスッキリしたい。
早く、速く、疾く――ッ!!
「……お待たせ」
その声で、少女はバッと振り返る。
優しく全てを包み込むような声。
そんな大嫌いな声をもう聴かずに済むと思うと、胸から溢れる情動が抑えられない。
興奮して、歓喜して、今にも空を飛べそうだ。
「――来たか。じゃあ、始めようぜ」
「……うん、それであなたの気が済むのなら」
「ふんっ、偽善者が。お前の本性さらけ出させてやる」
そして、天使と魔王の戦いが、幕を開けようとしていた――……
――天使。
それは地上に幸福をもたらす、神の使者。
紅く染まった髪は堂々と燃え、太陽のように輝いている。
翠色に光る瞳は、地上の全てを包み込むように優しい。
大きく伸びた四つ羽は、まるで大天使のような威厳があった。
――魔王。
それは地上に災厄をもたらす、圧倒的強者。
紅く染まった髪は不気味に燃え、炎のような危険さがある。
琥珀色に光る瞳は、地上の全てを見張るように鋭い。
風にはためく蝙蝠のようなマントは、まるで魔王の偉大さを表しているようだった。
そして、お互い一蹴り。
それだけの動作で、空間が爆ぜ、地が割れた。
魔法で構成されたものとは思えず、まるで本物がそこにいるようだ。
二人の衝突に耐えきれず、木々が何本か消し飛ぶ。
「――幻想展開、光刃!」
「――幻想展開、黒・光刃!」
詠唱を紡ぐと、二人の両手に槍が出現した。
白く光る結衣の槍に対し、黒く光る少女の槍。
それが、衝突し合う。
爆風を巻き起こし、砂埃が激しく舞う。
二人は魔法でできた槍を剣のように扱い、相手を斬らんとする。
それを、少し遠くから見ているガーネットとお母さん。
ただただ絶句するしかなく、二人のスピードに目が追いつかない。
「……すごいわね。結衣はこんなことやってたのね……」
「……ええ、そうです。結衣様はお強いので心配しなくても大丈夫ですよぉ」
「ありがとう。そこは気にしてないから大丈夫よ」
そうやって話している間にも、ガーネットとお母さんは二人の戦闘を見ている。
鏡合わせのようにそっくりな二人が、互角に戦っている。
それを眺めながら、お母さんは手を強く握った。
はやく決着をつけたいと思えば思うほど、時間の進みが遅いように感じるから。
はやく、絶望に染まった顔が見たい。
はやく、殺してスッキリしたい。
早く、速く、疾く――ッ!!
「……お待たせ」
その声で、少女はバッと振り返る。
優しく全てを包み込むような声。
そんな大嫌いな声をもう聴かずに済むと思うと、胸から溢れる情動が抑えられない。
興奮して、歓喜して、今にも空を飛べそうだ。
「――来たか。じゃあ、始めようぜ」
「……うん、それであなたの気が済むのなら」
「ふんっ、偽善者が。お前の本性さらけ出させてやる」
そして、天使と魔王の戦いが、幕を開けようとしていた――……
――天使。
それは地上に幸福をもたらす、神の使者。
紅く染まった髪は堂々と燃え、太陽のように輝いている。
翠色に光る瞳は、地上の全てを包み込むように優しい。
大きく伸びた四つ羽は、まるで大天使のような威厳があった。
――魔王。
それは地上に災厄をもたらす、圧倒的強者。
紅く染まった髪は不気味に燃え、炎のような危険さがある。
琥珀色に光る瞳は、地上の全てを見張るように鋭い。
風にはためく蝙蝠のようなマントは、まるで魔王の偉大さを表しているようだった。
そして、お互い一蹴り。
それだけの動作で、空間が爆ぜ、地が割れた。
魔法で構成されたものとは思えず、まるで本物がそこにいるようだ。
二人の衝突に耐えきれず、木々が何本か消し飛ぶ。
「――幻想展開、光刃!」
「――幻想展開、黒・光刃!」
詠唱を紡ぐと、二人の両手に槍が出現した。
白く光る結衣の槍に対し、黒く光る少女の槍。
それが、衝突し合う。
爆風を巻き起こし、砂埃が激しく舞う。
二人は魔法でできた槍を剣のように扱い、相手を斬らんとする。
それを、少し遠くから見ているガーネットとお母さん。
ただただ絶句するしかなく、二人のスピードに目が追いつかない。
「……すごいわね。結衣はこんなことやってたのね……」
「……ええ、そうです。結衣様はお強いので心配しなくても大丈夫ですよぉ」
「ありがとう。そこは気にしてないから大丈夫よ」
そうやって話している間にも、ガーネットとお母さんは二人の戦闘を見ている。
鏡合わせのようにそっくりな二人が、互角に戦っている。
それを眺めながら、お母さんは手を強く握った。
0
お気に入りに追加
19
あなたにおすすめの小説
収容所生まれの転生幼女は、囚人達と楽しく暮らしたい
三園 七詩
ファンタジー
旧題:収容所生まれの転生幼女は囚人達に溺愛されてますので幸せです
無実の罪で幽閉されたメアリーから生まれた子供は不幸な生い立ちにも関わらず囚人達に溺愛されて幸せに過ごしていた…そんなある時ふとした拍子に前世の記憶を思い出す!
無実の罪で不幸な最後を迎えた母の為!優しくしてくれた囚人達の為に自分頑張ります!
かわいいは正義(チート)でした!
孤子
ファンタジー
ある日、親友と浜辺で遊んでからの帰り道。ついていない一日が終わりを告げようとしていたその時に、親友が海へ転落。
手を掴んで助けようとした私も一緒に溺れ、意識を失った私たち。気が付くと、そこは全く見知らぬ浜辺だった。あたりを見渡せど親友は見つからず、不意に自分の姿を見ると、それはまごうことなきスライムだった!
親友とともにスライムとなった私が異世界で生きる物語。ここに開幕!(なんつって)
セカンドライフは寮母さん 魔王を討伐した冒険者は魔法学園女子寮の管理人になりました
今卓&
ファンタジー
その日、魔法学園女子寮に新しい寮母さんが就任しました、彼女は二人の養女を連れており、学園講師と共に女子寮を訪れます、その日からかしましい新たな女子寮の日常が紡がれ始めました。
二人分働いてたのに、「聖女はもう時代遅れ。これからはヒーラーの時代」と言われてクビにされました。でも、ヒーラーは防御魔法を使えませんよ?
小平ニコ
ファンタジー
「ディーナ。お前には今日で、俺たちのパーティーを抜けてもらう。異論は受け付けない」
勇者ラジアスはそう言い、私をパーティーから追放した。……異論がないわけではなかったが、もうずっと前に僧侶と戦士がパーティーを離脱し、必死になって彼らの抜けた穴を埋めていた私としては、自分から頭を下げてまでパーティーに残りたいとは思わなかった。
ほとんど喧嘩別れのような形で勇者パーティーを脱退した私は、故郷には帰らず、戦闘もこなせる武闘派聖女としての力を活かし、賞金首狩りをして生活費を稼いでいた。
そんなある日のこと。
何気なく見た新聞の一面に、驚くべき記事が載っていた。
『勇者パーティー、またも敗走! 魔王軍四天王の前に、なすすべなし!』
どうやら、私がいなくなった後の勇者パーティーは、うまく機能していないらしい。最新の回復職である『ヒーラー』を仲間に加えるって言ってたから、心配ないと思ってたのに。
……あれ、もしかして『ヒーラー』って、完全に回復に特化した職業で、聖女みたいに、防御の結界を張ることはできないのかしら?
私がその可能性に思い至った頃。
勇者ラジアスもまた、自分の判断が間違っていたことに気がついた。
そして勇者ラジアスは、再び私の前に姿を現したのだった……
一番モテないヒロインに転生しましたが、なぜかモテてます
Teko
ファンタジー
ある日私は、男の子4人、女の子4人の幼なじみ達が出てくる乙女ゲームを買った。
魔法の世界が舞台のファンタジーゲームで、プレーヤーは4人の女の子の中から1人好きなヒロインを選ぶ事ができる。
・可愛くて女の子らしい、守ってあげたくなるようなヒロイン「マイヤ」
・スポーツ、勉強と何でもできるオールマイティーなヒロイン「セレス」
・クールでキレイな顔立ち、笑顔でまわりを虜にしてしまうヒロイン「ルナ」
・顔立ちは悪くないけど、他の3人が飛び抜けている所為か平凡に見られがちなヒロイン「アリア」
4人目のヒロイン「アリア」を選択する事はないな……と思っていたら、いつの間にか乙女ゲームの世界に転生していた!
しかも、よりにもよって一番モテないヒロインの「アリア」に!!
モテないキャラらしく恋愛なんて諦めて、魔法を使い楽しく生きよう! と割り切っていたら……?
本編の話が長くなってきました。
1話から読むのが大変……という方は、「子どもの頃(入学前)」編 、「中等部」編をすっと飛ばして「第1部まとめ」、「登場人物紹介」、「第2部まとめ」、「第3部まとめ」からどうぞ!
※「登場人物紹介」はイメージ画像ありがございます。
※自分の中のイメージを大切にしたい方は、通常の「登場人物紹介」の主要キャラ、サブキャラのみご覧ください。
※長期連載作品になります。
またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。
朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。
婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。
だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。
リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。
「なろう」「カクヨム」に投稿しています。
異世界でタロと一緒に冒険者生活を始めました
ももがぶ
ファンタジー
俺「佐々木光太」二十六歳はある日気付けばタロに導かれ異世界へ来てしまった。
会社から帰宅してタロと一緒に散歩していたハズが気が付けば異世界で魔法をぶっ放していた。
タロは喋るし、俺は十二歳になりましたと言われるし、これからどうなるんだろう。
虹の騎士団物語
舞子坂のぼる
ファンタジー
昔々、神様は世界をひとつにできる架け橋、虹を作りました。
けれど、世界はひとつになるどころか、いつまで経っても争いがなくなりません。
悲しんだ神様は、一筋の涙を流しました。
涙が虹に落ちると、虹は砕け、空から消えました。
それから、虹が空に現れることはありませんでした。
でもある日、砕けた虹のカケラが、ある国の9人の少女の元にとどきます。
虹の騎士団と呼ばれた彼女たちが世界をひとつにしてくれる、最後の希望になった。そのときのお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる