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第二章 似すぎている敵
なにか忘れている?
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「――で、あなたは誰なの?」
「……え」
グループの一人が、遠くにいる赤毛の少女に駆け寄って言う。
赤毛の少女は、しきりに目を泳がせていて、答えをどこからか探しているように見えた。
「えーっと……結衣の親戚だよ」
「ふーん? どういう感じの親戚? いとこ?」
「……まあ、そんな感じ……」
赤毛の少女の言葉には、いまいち信憑性がない。
ズバッと言い切るのではなく、しどろもどろに言っているせいもあるだろう。
だからグループの子は、赤毛の少女に対して不信感を募らせる。
赤毛の少女はそういう雰囲気を感じ、自分が追い詰められていることを感じた。
「あ、あの――」
「あー!! 明葉ちゃんは!?」
なんとかその不信感を拭いさってもらいたく、口を開いたが。
周囲の全てを震わせるほどの大音量で叫んだ結衣によって、赤毛の少女の声はかき消されてしまった。
そして、一拍おいて沈黙が流れ――
「あああ!! そうじゃん!?」
「え、ど、どうしよう! 明葉ちゃんがいないの忘れてた!」
結衣と同じような大音量の叫び声が響く。
この場にいなくてはならない者の姿がないのだ。
それも当然だろう。当然、だと思うのだが……
「う、うるせぇ……」
結衣の叫び声のせいで耳鳴りを発症した少女が、キレ気味に呟いた。
耳を塞いでいる少女のことは誰にも見えていないようで、必死に明葉を探している。
「明葉ちゃーん! どこー?」
結衣が大きな声で明葉を探し始めると。
少女を問い詰めていたグループの一人も、一緒に明葉を探し始める。
やっと解放された少女は、ほっと安堵のため息をつく。
「はぁ……もう帰るか――ん?」
「ガクブルガクブル」
踵を返してこの場を去ろうとしていた少女の足元に。
ガタガタと、生まれたての子鹿以上に震えてうずくまっている――明葉の姿が。
「な、なぁ……ここに明葉いるぞ?」
その少女の言葉に。
結衣たちは一斉に少女の方へ目を向けた。
「よかったぁ……!」
「も~、心配させないでよ~」
「……へぁ? あ、皆さん……?」
グループの子たちは、明葉の方に向かって駆け出す。
すると、明葉は憑き物が取れたように我に返る。
そしてみんなが仲良く笑い合っている様子を見ながら、
「……うん、もう帰るか……」
付き合いきれなくなった少女が、遠いどこかを見つめるような瞳をしながら去っていった。
「……え」
グループの一人が、遠くにいる赤毛の少女に駆け寄って言う。
赤毛の少女は、しきりに目を泳がせていて、答えをどこからか探しているように見えた。
「えーっと……結衣の親戚だよ」
「ふーん? どういう感じの親戚? いとこ?」
「……まあ、そんな感じ……」
赤毛の少女の言葉には、いまいち信憑性がない。
ズバッと言い切るのではなく、しどろもどろに言っているせいもあるだろう。
だからグループの子は、赤毛の少女に対して不信感を募らせる。
赤毛の少女はそういう雰囲気を感じ、自分が追い詰められていることを感じた。
「あ、あの――」
「あー!! 明葉ちゃんは!?」
なんとかその不信感を拭いさってもらいたく、口を開いたが。
周囲の全てを震わせるほどの大音量で叫んだ結衣によって、赤毛の少女の声はかき消されてしまった。
そして、一拍おいて沈黙が流れ――
「あああ!! そうじゃん!?」
「え、ど、どうしよう! 明葉ちゃんがいないの忘れてた!」
結衣と同じような大音量の叫び声が響く。
この場にいなくてはならない者の姿がないのだ。
それも当然だろう。当然、だと思うのだが……
「う、うるせぇ……」
結衣の叫び声のせいで耳鳴りを発症した少女が、キレ気味に呟いた。
耳を塞いでいる少女のことは誰にも見えていないようで、必死に明葉を探している。
「明葉ちゃーん! どこー?」
結衣が大きな声で明葉を探し始めると。
少女を問い詰めていたグループの一人も、一緒に明葉を探し始める。
やっと解放された少女は、ほっと安堵のため息をつく。
「はぁ……もう帰るか――ん?」
「ガクブルガクブル」
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「も~、心配させないでよ~」
「……へぁ? あ、皆さん……?」
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すると、明葉は憑き物が取れたように我に返る。
そしてみんなが仲良く笑い合っている様子を見ながら、
「……うん、もう帰るか……」
付き合いきれなくなった少女が、遠いどこかを見つめるような瞳をしながら去っていった。
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