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第二章 似すぎている敵

喧嘩をしたなら

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 魔法少女を閉じ込める結界のような場所。
 殺伐としたオーラが漂うそこに、三人の魔法少女の姿がある。
 そのうちの一人が、苦しそうに顔を歪めた。

「うっ……ぐぁ……っ」
「結衣様!? ――な、なんですか……この空気。まるで“毒”が混ざっているような――」

 そこまで言って、ガーネットはハッと気づく。
 “人の願い”によって黒く濁る神の光。
 それはつまり、願いが強ければ強いほど黒く濁りまくるということであり。
 黒く濁りまくれば、魔法少女にとって最悪の毒となる――!

「結衣様! ここは危険です! はやくここから去った方が――」
「……だめ、だよ……」

 今にも死にそうな顔で、掠れた声を出して言う。
 もう、歩く力すら残っていないのかもしれない。

「な、何言ってるんですか! なんなら私が結衣様を飛ばしますから……っ!」

 ガーネットは今にも泣きそうな声で叫ぶ。
 それは己がマスターのために、ガーネットができる最大限だった。
 だが、それでも結衣は首を横に振る。

「……だめ。二人を……置いてっ……いけない……からっ……!」

 そこで、カスミと魔王はハッとした。
 自分が危険にさらされていても。
 相棒がどんなに自分を心配していても。

 人のため……いや、自分たちのために立ち上がっている――!
 それに気づいたカスミと魔王は、気まずそうに互いの顔を見やる。

「……結衣サン、ソーリー……デス」

 カスミが結衣の頬に手を当てる。
 すると、やけに黒かった空に光が見えてきた。
 この光は、月だ。
 優しく包み込むような光を受けて、少し調子が戻ってきた結衣が呟く。

「……綺麗……」
「改めて、ソーリーデス……結衣サン。ケド、これだけは言わせて欲しいデス。――ミーは、結衣サンに出会えて……ホントに……よ、良かっ……」

 途中からカスミの涙腺が崩壊し、滝のように涙が出てくる。
 カスミは罪悪感を感じているらしい。
 だが、なぜカスミが泣いているのかわからない結衣は、わたわたと慌てた。

「えっ……? う、うん……それはわかってるよ? それでも自分の願いが大事なんでしょ? そういう気持ちわかるから……大丈夫だよ」
「うっ……ひっく……結衣サンは優しすぎマス。もっと怒ってもいいと思いマス」
「え、なんで責められてるの??」
「こういう展開も面白くていいですねぇ! もっと責めてやってくださぁい!」
「ちょっ! ガーネット!?」

 久々のギャグっぽい雰囲気に、結衣たちは笑い合う。
 喧嘩をしたなら、仲直りをすればいい。
 そのあとでたくさん笑えば、それでいい。

 それが、少女たちの結論のように思えた。
 そしてその結論が、少女たちにとっての幸せ……なのである。
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